【法人税の実務講座⑬】法人事業概況説明書の書き方をわかりやすく解説

実務講座⑫で、勘定科目内訳明細書という添付書類を見ました。決算書の「売掛金150万円」を、取引先ごとに分解する書類でした。今回の法人事業概況説明書(概況書)は、その逆です。会社の事業内容・従業員・売上・経理体制などを、1枚(表面と裏面)にまとめて、会社全体の姿を俯瞰させる書類です。

内訳書が「1つの科目を相手先まで細かく分解するミクロの書類」だとすれば、概況書は「会社全体を1枚で見渡すマクロの書類」。決算書・内訳書・概況書の3つがそろって、はじめて申告書一式が完成します。今回は、概況書に何を書くのかを、サンプル株式会社の例で見ていきます。

目次

1. 法人事業概況説明書とは ― 会社全体を1枚で見せる

内訳書はミクロ(1科目を相手先に分解)、概況書はマクロ(会社全体を1枚で俯瞰)。事業内容・従業員・主要科目・月別売上などを1枚にまとめ、税務署が会社の姿を一目でつかめるようにする。

内訳書(ミクロ)と概況書(マクロ)は対になる添付書類 勘定科目内訳明細書 ミクロ=1科目を分解 売掛金 150万円 ├ アルファ商事 80万円 ├ ベータ広告 55万円 └ その他 15万円 「誰と・いくら」 法人事業概況説明書 マクロ=会社全体を俯瞰 ・事業内容 ・従業員数 ・主要科目(売上ほか) ・月別の売上高 会社の「自己紹介カード」 内訳書+概況書+決算書+別表 で、申告書一式が完成

▲ 内訳書と概況書の役割の違いを示した図。勘定科目内訳明細書は1つの科目(売掛金など)を取引先ごとに分解するミクロの書類であり、法人事業概況説明書は事業内容・従業員数・主要科目・月別売上高などを1枚にまとめて会社全体を俯瞰するマクロの書類であること、両者がそろって申告書一式が完成することを表す。

法人事業概況説明書は、法人税の確定申告のとき、申告書本体・決算書・内訳書とあわせて税務署に提出する添付書類です。会社の事業内容や状況を、1枚の様式の表面と裏面にまとめて示します。

この書類は、法人税法施行規則35条(事業等の概況に関する書類)に基づくもので、平成18年度の改正で、規模の大小を問わず、すべての法人に提出が義務づけられました。社長ひとりの小さな会社でも、提出が必要です(国税局の調査課が所管する、資本金1億円以上などの法人は、別様式の「会社事業概況書」を提出します)。

2. なぜ全法人が出すのか ― 税務署が会社を一目で把握するため

概況書の目的は、税務署が会社の姿を一目でつかめるようにすることです。申告書(別表)や決算書の数字だけでは、その会社が何をしている会社なのか、どんな規模なのかは分かりません。

そこで概況書では、事業内容・従業員数・売上の月別推移・経理の体制などを、ひとまとめにして示します。税務署の担当者は、これを見て会社の規模や業種をつかみ、電話での問い合わせや税務調査の準備に使います。調査の前に概況書に目を通しておけば、その場で一から質問せずに済む――いわば、会社の「自己紹介カード」のような役割です。

だからこそ、概況書は数字の正確さだけでなく、会社の実態が伝わるように書くことが大切です。事業内容の欄を空欄同然にしたり、月別売上を適当に書いたりすると、かえって税務署の関心を引いてしまうこともあります。

もうひとつ、提出義務はあるものの、出さなかったこと自体に対する加算税などの直接の罰則はありません。とはいえ、提出しないと税務署が会社の実態をつかみにくくなり、確認のための問い合わせが増えることもあります。さらに、補助金や金融機関の融資の審査で、概況書の控えの提出を求められる場面が少なくありません。提出が義務づけられている書類なので、毎期きちんと添付しておきます。

3. 表面に書くこと ― 事業内容・従業員・主要科目・代表者報酬

概況書は1枚の表面と裏面。表面には事業内容・支店子会社・期末従業員・主要科目・代表者報酬を、裏面には事業形態・経理状況・税理士関与・月別の売上高などを書く。

概況書は1枚の表面と裏面に分かれる 表面 ・事業内容 ・支店・子会社等の状況 ・期末従業員等の状況 ・主要科目(売上・人件費ほか) ・代表者に対する報酬等 裏面 ・事業形態(詳しい中身) ・帳簿・経理の状況 ・税理士の関与状況 ・月別の売上高等の状況 ・電帳法・年末調整電子化の状況 裏面の「月別の売上高等の状況」が中心(次の表)

▲ 概況書が1枚の表面・裏面で構成されることを示した図。表面には事業内容・支店子会社等の状況・期末従業員等の状況・主要科目(売上高や人件費など)・代表者に対する報酬等を書き、裏面には事業形態・帳簿や経理の状況・税理士の関与状況・月別の売上高等の状況・年末調整や電子帳簿保存法の対応状況を書くこと、裏面の月別の売上高等の状況が中心であることを表す。

概況書の表面には、会社の基本情報と、決算書の主要な数字が並びます。中小企業で関係するおもな欄を見ていきます。

まず、事業内容です。会社が主に行っている事業を書きます。複数あるときは、売上の割合が最も大きい主たる事業を優先します(詳しい中身は裏面の「事業形態」に書くので、表面は簡潔で構いません)。次に、支店・子会社等の状況。本社以外に支店・営業所・子会社があれば書きます。なければ空欄です。

期末従業員等の状況には、常勤役員の人数、従業員数、そのうち代表者の家族数、アルバイト数などを書きます。そして主要科目。ここには、売上高・売上原価・人件費・地代家賃・減価償却費・期末の資産負債といった、決算書(B/S・P/L)の主要な数字を転記します。最後に、代表者に対する報酬等の金額。これは会社が同族会社の場合に記載する欄で、社長などへの役員報酬のほか、代表者への貸付金・仮払金・賃借料・支払利息、代表者からの借入金・仮受金も千円単位で書きます(実務講座⑫の役員貸付金・役員借入金とつながる欄です)。実務講座⑪で見たように、中小企業のほとんどは同族会社なので、この欄は埋めることになります。

4. 裏面に書くこと ― 事業形態・経理状況・月別売上高

裏面には、事業の中身と、経理の体制、そして月別の数字が並びます。

事業形態の欄には、具体的な事業の内容、兼業の有無、主な設備などを書きます。表面の事業内容を、もう少し詳しく説明する欄です。経理関係では、帳簿類の備付状況(どんな帳簿を付けているか)、現金や預金通帳の管理責任者と代表者との関係、税理士の関与状況などを、チェック方式で記入します。会計ソフトを使っているか、社内監査をしているか、といった点も対象です。

最近の様式改訂で、PCの利用状況(OSや利用業務)に加えて、電子帳簿保存法への対応状況を書く欄や、年末調整関係書類の電子化の状況を書く欄が設けられました(令和6年3月以後に終了する事業年度分から)。電子化が進んだことを反映した変更です。そして裏面の中心が、次の章で説明する「月別の売上高等の状況」です。

5. 月別の売上高等の状況 ― 合計を決算書と一致させる

概況書でいちばん手間がかかり、いちばん間違えやすいのが、裏面の「月別の売上高等の状況」です。

月別の売上高等の状況:売上・仕入・人件費・源泉徴収税額などを12か月分書く。売上の「計」が表面の主要科目・損益計算書の売上高と一致するように作る。会計ソフトなら月別データを自動連携できる。

月売上仕入人件費
4月250万120万90万
5月260万125万90万
(6月〜2月)………
3月240万118万90万
計3,000万1,440万1,080万

▲ 月別の売上高等の状況の記入イメージ(説明用の想定。6月〜2月は省略)。事業年度の各月について、売上(収入)金額・仕入金額・人件費・源泉徴収税額などを12か月分記入し、売上の「計」欄が表面「10 主要科目」の売上高および損益計算書の売上高と一致するように作ること、会計ソフトを使えば月別データを自動で連携できることを表す。

ここには、事業年度の各月について、売上(収入)金額・仕入金額・人件費・源泉徴収税額などを、12か月分書いていきます。月ごとの数字を並べることで、会社の繁忙期や売上の波が一目で分かる、という欄です。

注意したいのは、月別売上の「計(合計)」を、決算書や表面の主要科目と一致させることです。具体的には、裏面の月別売上の「計」欄と、表面「10 主要科目」の売上高、そして損益計算書の売上高が、同じ金額になるように作ります。ここがずれていると、税務署に「数字が合わない」と見られますし、補助金や給付金の申請で月別売上を使うときにも不一致が問題になります。会計ソフトを使えば、月別の売上データを自動で連携できるので、手で12か月分を集計するより、はるかに効率的で正確です。

なお、消費税を税抜で経理しているか税込で経理しているか、あるいはどの科目を売上に含めるかによって、月別売上の計と決算書の売上高が、そのままでは一致しないことがあります。基準をそろえ(たとえば全部を税抜でそろえる)、含める範囲を統一すれば、一致させられます。最初に「どの数字を売上として拾うか」を決めておくと、毎期ぶれずに作れます。

6. 同族会社の代表者報酬欄・出資関係図・最近の改訂

中小企業が特に気をつけたい論点を、いくつか補足します。

まず、代表者に対する報酬等の欄です。前述のとおり、これは同族会社の場合に記載します。実務講座⑪のとおり、中小企業のほとんどは同族会社なので、社長への役員報酬のほか、社長との貸し借り(貸付金・借入金など)の金額も書くことになります。役員給与のルール(定期同額給与など)や、内訳書の役員給与等とも数字が整合するように注意が必要です。

次に、出資関係図です。完全支配関係がある他の法人(100%の親子会社など)がある場合は、概況書に加えて、資本関係を図にした出資関係図も添付します。社長個人が100%株主の独立した1社だけ、という典型的な中小企業では、この出資関係図は不要です。最後に、様式は時々改訂されます。直近では、電子帳簿保存法の適用状況や、年末調整関係書類の電子化の状況を書く欄が加わりました。毎年、国税庁の最新様式を使います。

7. 記入例:サンプル株式会社

サンプル株式会社の概況書:事業内容=Webサイト制作・運用、期末従業員=常勤役員2名ほか、主要科目=売上高3,000万円など、代表者報酬欄に社長の役員報酬を記載(同族会社)、月別売上の計3,000万円が表面主要科目・損益計算書と一致。

記入例:サンプル株式会社の概況書(要点) 事業内容 Webサイトの 制作・運用 期末従業員 常勤役員2名 (社長A・ 配偶者B) 主要科目 売上高 3,000万円 人件費・地代家賃 ほか 代表者報酬 社長Aの役員報酬 (同族会社のため) 裏面 月別売上の「計」3,000万円 = 表面 主要科目の売上高 = 損益計算書 で一致 → 完成

▲ サンプル株式会社の法人事業概況説明書の記入例を示した図。事業内容はWebサイト制作・運用、期末従業員は常勤役員2名ほか、主要科目の売上高は3,000万円、同族会社のため代表者に対する報酬等の欄に社長への役員報酬を記載し、裏面の月別売上の「計」3,000万円が表面の主要科目の売上高および損益計算書の売上高と一致することを表す。

サンプル株式会社(Web制作業)の概況書を、ポイントだけ書いてみます。金額は説明のための想定です。

表面では、事業内容に「Webサイトの制作・運用」と書きます。期末従業員等の状況には、常勤役員2名(社長Aと配偶者B)、従業員数名、といった具合に記入します。主要科目には、決算書から、売上高3,000万円、人件費・地代家賃・減価償却費などの金額を転記します。サンプル株式会社は同族会社(社長グループで100%)なので、代表者に対する報酬等の欄に、社長Aへの役員報酬を記載します。

裏面では、事業形態に「受注制作によるWebサイトの企画・制作・保守」などと具体的に書き、帳簿類や会計ソフトの利用状況、税理士の関与状況をチェックします。そして月別の売上高等の状況に、12か月分の売上・人件費などを記入します。最後に、月別売上の「計」が3,000万円となり、表面の主要科目の売上高3,000万円、損益計算書の売上高と一致していることを確認します。この「月別の計=表面=決算書」がそろえば、概況書は完成です。

まとめ:法人事業概況説明書を書くための要点

  • 概況書は、事業内容・従業員・売上などを1枚(表面と裏面)にまとめて会社全体を伝える添付書類。施行規則35条に基づき、全法人に提出義務(平成18年度改正)。内訳書(ミクロ)に対して、概況書はマクロの書類。
  • 表面=事業内容・支店子会社・期末従業員・主要科目(決算書から転記)・代表者に対する報酬等。裏面=事業形態・経理状況・月別の売上高等。
  • 中心は月別の売上高等の状況。売上の「計」を、表面の主要科目・損益計算書と一致させる。会計ソフトの月別連携を使えば手間が減る。
  • 代表者に対する報酬等の欄は同族会社の場合に記載(中小はほぼ該当。報酬のほか代表者との貸し借りも書く)。完全支配関係があれば出資関係図も添付。資本金1億円以上などの調査課所管法人は「会社事業概況書」。
  • 提出は確定申告書と同時(事業年度終了の翌日から2か月以内)。様式は改訂されるので毎年最新版を使う(直近で電帳法・年末調整電子化の欄を改訂)。

会計ソフトを使えば、決算データから主要科目や月別売上が自動で連携され、概況書の大部分は埋まります。それでも、「概況書は会社の自己紹介カード」「月別売上の計=表面=決算書で一致させる」「代表者報酬は同族会社の欄」という骨格を理解しておけば、税務署が何を見ているかが分かり、実態の伝わる書類を自分で作れます。

実務講座①〜⑬で、申告書本体(各別表)と、2つの主要な添付書類(勘定科目内訳明細書・法人事業概況説明書)まで、法人税の申告書一式がそろいました。ここまでで、決算書をもとに法人税の申告を組み立てる流れが一通り完成です。次は、法人税とセットで申告する地方税――会社が必ず納める法人住民税・事業税の申告書へ進みます。

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※ 本記事は2026年10月時点の情報にもとづく一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談に応じるものではありません。記入例の金額・事業内容は説明のための想定であり、取扱いは法人の状況や様式により異なります。概況書の様式・記載項目は改正されることがあります。実際の申告にあたっては、最新の様式・記載要領を国税庁等で確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

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