【法人税の実務講座⑨】別表八(一)(受取配当等の益金不算入)の書き方をわかりやすく解説

会社が、株式を持っている他社から配当を受け取ったとき、その配当の一定割合は、税金の計算上「なかったこと」にできます。これを受取配当等の益金不算入といい、計算するのが別表八(一)です。実務講座⑧の交際費が「社外流出の加算」の代表なら、この受取配当は「社外流出の減算」の代表。交際費とはちょうど逆の動きをします。

実務講座①の別表四の記入例で、「受取配当を社外流出として減算」した場面を覚えているでしょうか。あの減算が、どこから来ていたのか。答えは、この別表八(一)です。サンプル株式会社の記入例つきで、その正体を見ていきましょう。

目次

1. 別表八(一)とは ― 受け取った配当を益金から外す

別表八(一)は、正式名称を「受取配当等の益金不算入に関する明細書」といいます。法人が受け取った配当のうち、益金に算入しない金額(益金不算入額)を計算する別表です。益金に算入しないということは、その分だけ所得が減り、法人税が減るということ。会社にとって有利な調整です。

益金不算入とは、会計上は収益(利益)に入っている配当を、税務上は益金から外す(=所得を減らす)調整のこと。実務講座①で学んだ「利益と所得の違い」を生む、減算側の代表的な項目です。

計算した益金不算入額は、別表四で減算します。そして、この減算は「社外流出」。実務講座①⑤で学んだとおり、社外流出は会社の中に残らないので、別表五(一)には積み上がりません。交際費(社外流出の加算)と並べると、別表四の社外流出には「出ていく加算(交際費)」と「入れない減算(受取配当)」の両方がある、という全体像が見えてきます。

2. なぜ益金不算入か ― 二重課税を防ぐため

そもそも、なぜ受け取った配当を益金から外すのでしょうか。理由は、二重課税を防ぐためです。

受取配当の益金不算入の趣旨:配当を支払う法人(A社)は法人税を払った後の利益から配当を出している。それを受け取る法人(B社)で再び課税すると同じ利益に2回課税(二重課税)になるため、受け取った側で一定割合を益金不算入にして調整する。

▲ 受取配当の益金不算入の趣旨(二重課税の排除)を示した図。配当を支払う法人は、法人税を払った後の利益から配当を出している。それを受け取った法人で配当に再び法人税をかけると、同じ利益に2回課税することになるため、受け取った側では一定割合を益金不算入として課税しない仕組みであることを表す。

配当は、それを支払う会社が法人税を払った後の利益から出しています。その配当を受け取った会社で、もう一度配当に法人税をかけると、同じ利益に対して2回課税することになってしまいます。これを避けるため、受け取った側では、配当の一定割合を益金不算入にして、二重課税を調整するのです。

具体的な数字で見てみましょう。A社が利益を出し、法人税を払った残りの利益から、株主であるB社に配当100を支払ったとします。このとき、A社ではすでに法人税が課されています。もしB社で、受け取った配当100にそのまま法人税をかければ、同じ100というもうけに、A社とB社で2回課税されることになります。これは公平ではありません。そこで、B社では受け取った配当の一定割合を益金不算入にして、二重課税を和らげる――これが制度の根っこにある考え方です。

3. 株式の4区分と益金不算入割合

では、配当のどれだけを益金不算入にできるのか。それは、その株式をどれだけ持っているか(保有割合)で、4つの区分に分かれます。持株比率が高い(支配目的が強い)ほど、益金不算入の割合も大きくなります。

株式の4区分と益金不算入割合:完全子法人株式等(保有100%)は全額、関連法人株式等(3分の1超)は全額(負債利子控除あり)、その他の株式等(5%超〜3分の1以下)は50%、非支配目的株式等(5%以下)は20%。中小で多いのは非支配目的の20%。

▲ 株式の4区分と益金不算入割合を示した図。完全子法人株式等(保有割合100%)は配当の全額、関連法人株式等(3分の1超)は全額(負債利子控除あり)、その他の株式等(5%超〜3分の1以下)は50%、非支配目的株式等(5%以下)は20%が益金不算入になることを表す。

  • 完全子法人株式等(保有100%) … 配当の全額が益金不算入。親子会社の関係が典型です。
  • 関連法人株式等(3分の1超) … 配当の全額が益金不算入。ただし、後述の負債利子控除があります。
  • その他の株式等(5%超〜3分の1以下) … 配当の50%が益金不算入。
  • 非支配目的株式等(5%以下) … 配当の20%が益金不算入。上場株式を少しだけ持っている、といったケースです。

中小企業でいちばん多いのは、④の非支配目的株式等(5%以下)。取引先の株や上場株を少し保有している、という場面です。この場合、受け取った配当の20%が益金不算入になります。なお、保有割合の判定には保有期間の要件もあり、配当の基準日の直前に買ってすぐ売るような「短期保有株式等」は、益金不算入の対象外です。

4区分は、配当の「基準日」など一定の時点での保有割合で判定します。完全子法人株式等と関連法人株式等は、配当の計算期間を通じて継続して保有していることが条件。一方、その他の株式等と非支配目的株式等は、配当の基準日時点の保有割合で判定します。グループ会社で保有を合算するケースなど、判定が難しい場面もあるので、迷ったら配当の支払通知書で保有割合と取得時期を確認しましょう。

4. 負債利子控除 ― 関連法人株式等だけの調整

4区分のうち、関連法人株式等(3分の1超)だけは、ひと手間あります。益金不算入額から、負債利子の額を控除するのです。

これは、借入金で株式を買って配当を受け取った場合に、その借入利息(損金)と配当(益金不算入)の両取りを防ぐための調整です。令和2年度の改正で計算が簡単になり、現在は原則として、関連法人株式等に係る配当等の額の4%相当額を控除します(支払利子が少ない会社向けの簡便法もあります)。完全子法人株式等・その他の株式等・非支配目的株式等には、この負債利子控除はありません。中小企業で多い非支配目的株式等なら、負債利子控除を気にする必要はない、ということです。

なぜ関連法人株式等だけ負債利子を引くのか。考え方はこうです。配当が益金不算入で非課税になる一方、その株を買うための借入利息を全額損金にできてしまうと、課税のバランスが崩れます。そこで、益金不算入のうち借入で得た部分に対応する分だけ控除して調整する、というわけです。

5. 別表四との連動 ― 社外流出(減算)

別表八(一)で計算した益金不算入額は、別表四で減算します。区分は「社外流出」です。

益金不算入は、「他社の利益の段階ですでに法人税がかかっている配当を、こちらでは課税しない」という調整。会社の中に残って将来取り崩されるような留保とは違い、その年で完結します。だから、減価償却超過額のように別表五(一)に積み上がることはありません。交際費(社外流出の加算)も受取配当(社外流出の減算)も、別表五(一)には出てこない――この「社外流出は別表五(一)に出てこない」という共通点を押さえると、別表四と別表五(一)の関係がすっきり整理できます。

ここまでで、別表四の加算・減算の主な顔ぶれが出そろいました。加算の留保(減価償却超過額)、加算の社外流出(交際費)、減算の社外流出(受取配当)。このうち別表五(一)に積み上がるのは「留保」だけで、社外流出は加算でも減算でも別表五(一)には出てきません。実務講座①で見た「加算・減算 × 留保・社外流出」のマトリクスに、それぞれの代表例がきれいに収まる――そう捉えると、別表どうしのつながりが頭の中で整理できます。

6. 別表八(一)の書き方

別表八(一)の記入は、区分ごとに進めます。まず、当期に受け取った配当を、完全子法人株式等・関連法人株式等・その他の株式等・非支配目的株式等の4つに振り分けます。次に、それぞれの区分の配当額に、区分ごとの割合(全額・全額−負債利子・50%・20%)を乗じて、益金不算入額を計算します。最後に、それらを合計したものが、受取配当等の益金不算入額。これを別表四で減算(社外流出)します。

ここで、よくある誤りに注意。非支配目的株式等(5%以下)を、誤って「その他の株式等」に記載してしまうミスが多いと、国税庁も注意喚起しています。その他の株式等なら50%、非支配目的株式等なら20%と、割合が大きく違うので、保有割合を正しく確認して区分しましょう。

なお、益金不算入の対象になる「配当等」は、株式の配当や出資の分配などです。一方、対象にならないものもあります。たとえば、外国法人からの配当(これは「外国子会社配当益金不算入」など別の制度で扱います)、REITや特定目的会社からの分配、生命保険の契約者配当、公社債投資信託の分配金などは、この別表八(一)には含めません。ETF(特定株式投資信託)の分配は、非支配目的株式等として扱います。何が対象で何が対象外かを取り違えると、益金不算入額がずれてしまうので、配当の種類も確認しましょう。

この益金不算入は、確定申告書に別表八(一)を添付し、計算の明細を記載することが適用の要件です。配当を受け取ったのに別表八(一)を作り忘れると、本来受けられる益金不算入が受けられなくなってしまいます。配当の入金があった期は、忘れずに別表八(一)を作成しましょう。

7. 記入例:サンプル株式会社

サンプル株式会社が、上場株式を少し保有していて(発行済株式の5%以下=非支配目的株式等)、当期に配当25万円を受け取ったとします(説明用の概算)。

サンプル株式会社の別表八(一):非支配目的株式等(5%以下)の受取配当25万円に20%を乗じて益金不算入額5万円を計算し、別表四で社外流出として5万円を減算する流れ。これが実務①の受取配当の社外流出減算5万円の正体で、社外流出のため別表五(一)には出てこない。

▲ サンプル株式会社の別表八(一)の記入例を示した図。非支配目的株式等(保有5%以下)に係る受取配当25万円に益金不算入割合20%を乗じて益金不算入額5万円を計算し、その5万円を別表四で社外流出として減算する流れを示す。

非支配目的株式等なので、益金不算入割合は20%。受取配当25万円 × 20% = 益金不算入額5万円です。負債利子控除は非支配目的株式等にはないので、調整は不要。この5万円を、別表四で減算(社外流出)します。

実は、これが実務講座①の記入例で「受取配当を社外流出として減算」した5万円の正体です。別表八(一)で計算した益金不算入額5万円が、別表四の減算(社外流出)へ流れ、所得を5万円小さくしていた――別表八(一)→別表四と、数字が一本の筋でつながっているのが見えます。社外流出なので、この5万円は別表五(一)には出てきません。

もう一つ、配当には実務上の論点があります。配当を受け取るとき、その配当からは所得税が源泉徴収されていて、会社の手取りは天引き後の金額になっています。この源泉徴収された所得税は、法人税の前払いとして、別表六(一)で税額控除(所得税額控除)できます。受取配当の益金不算入(別表八(一))と、源泉所得税の税額控除(別表六(一))は、配当をめぐる「セット」の論点。益金不算入で所得を減らし、源泉所得税で税額を取り戻す――次回はこの別表六(一)を扱います。

8. 仕上げのチェックポイント

  • 二重課税の排除が趣旨。配当は支払う側で法人税を払った後の利益。受け取る側で課税しないのは、二重課税を防ぐため。
  • 4区分で割合が変わる。完全子法人100%、関連法人は全額(負債利子控除あり)、その他50%、非支配目的20%。中小で多いのは非支配目的(20%)。
  • 区分の誤りに注意。非支配目的(5%以下)を「その他」にしない。保有割合と保有期間を正しく確認。
  • 益金不算入額は別表四で減算(社外流出)。留保ではないので別表五(一)には出てこない。外国配当・REIT等は対象外。別表八(一)の添付が要件。

会計ソフトを使えば、配当の区分から別表八(一)、別表四への減算まで自動で処理されます。それでも、「配当は二重課税を避けるために一定割合を益金不算入にする、割合は保有割合で4区分、減算は社外流出」という骨格を理解しておけば、配当を受け取ったときに正しく区分でき、別表四の社外流出(加算=交際費/減算=受取配当)の全体像も自分で説明できます。配当の入金通知が来たら、まず「保有割合は何%か」を確認する――この習慣が、区分ミスを防ぐいちばんの近道です。

まとめ:別表八(一)を書くための要点

  • 別表八(一)は、受取配当の益金不算入額を計算する別表。法人間配当の二重課税を排除する、納税者に有利な仕組み。
  • 株式は保有割合で4区分。完全子法人100%・関連法人(全額−負債利子)・その他50%・非支配目的20%。中小で多いのは非支配目的(20%)。
  • 負債利子控除は関連法人株式等だけ(配当の4%相当)。非支配目的などは控除なし。
  • 益金不算入額は別表四で減算(社外流出)。交際費(加算)とは逆の動き。留保ではないので別表五(一)には出てこない。
  • 区分の誤り(非支配目的を「その他」に)に注意。別表八(一)の添付が適用要件。

実務講座①〜⑨で、別表四の加算・減算、留保・社外流出の主な顔ぶれ(減価償却・交際費・受取配当)と、申告書本体(別表一・四・五(一)・五(二))、そして繰越欠損金(七(一))まで一通りそろいました。次は、配当や利子から源泉徴収された所得税を取り戻す所得税額控除(別表六(一))へ進むと、受取配当まわりがさらに完結します。

  • 前回:【法人税の実務講座⑧】別表十五(交際費等)の書き方をわかりやすく解説
  • 次回:【法人税の実務講座⑩】別表六(一)(所得税額控除)の書き方をわかりやすく解説

あわせて読みたい

  • 【法人税の実務講座①】別表四の書き方・記入例をわかりやすく解説
  • 【法人税の実務講座⑧】別表十五(交際費等)の書き方をわかりやすく解説

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。記入例の金額は説明のための概算であり、取扱いは法人の状況や様式により異なります。受取配当等の益金不算入の区分・割合・負債利子控除は改正されることがあります。実際の申告にあたっては、最新の様式・記載要領を国税庁等で確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

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