別表一は、法人税申告書の「本体」です。実務講座①で見た別表四が「所得金額」を出す書類だとすれば、別表一は、その所得金額に税率をかけて「法人税額」を確定させる書類――いわば申告書の表紙であり、税額計算の最終地点です。この記事では、別表一(と次葉)を使って、所得金額から、今回納付すべき税額までを出す流れを、記入例つきで解説します。
実務講座①(別表四)を読んでいる前提で進めます。別表四で所得金額が出せていれば、別表一はその数字を受けて税率をかけるだけ――とは言い切れず、中小法人の軽減税率や、地方法人税、税額控除など、押さえるべき型がいくつかあります。一つずつ見ていきます。
1. 別表一とは ― 法人税と地方法人税を計算する「申告書の本体」
別表一は、正式名称を「各事業年度の所得に係る申告書」といいます。ポイントは3つです。
第一に、別表一は法人税と地方法人税の2つ(どちらも国税)をまとめて計算します。用紙の左側の列は、上段(1〜15)が法人税、下段(28〜40)が地方法人税の計算欄です。法人税の申告書を出せば、地方法人税の申告も同時に済む構造になっています。なお、法人住民税と法人事業税(地方税)は、別表一には出てきません。これらは地方自治体に出す別の申告書(第6号様式など)で、別に計算します。「別表一=国税(法人税+地方法人税)」と整理できます。
第二に、別表一は「次葉」とセットです。別表一だけでは税額計算の枠が足りないため、税率をかける細かい計算は次葉で行い、その結果を別表一へ転記します。令和8年(2026年)4月1日以後に終了する事業年度分から、別表一は「別表一」「別表一次葉一」「別表一次葉二」の3枚になりました。次葉一は新しく加わった防衛特別法人税の計算欄、次葉二は従来の次葉(法人税額と地方法人税額の計算欄)です。3枚で1つの書類です。
第三に、別表一はいちばん最後に作ります。別表二・十五・十六・五(二)・五(一)・四・七(一)などを先に仕上げ、別表四で所得金額を確定させてから、最後に別表一で税額を計算する――この順番です。実務講座①で「別表四は最後のほうに作る」と書きましたが、その別表四よりもさらに後、申告書づくりの締めくくりが別表一です。
2. 全体の流れ ― 所得金額から「差引確定法人税額」まで
別表一の計算は、次の流れで進みます。まず全体像を押さえます。
▲ 別表一の計算の流れを示した図。別表四の所得金額を別表一へ転記し、別表一次葉二で税率をかけて法人税額を計算し、税額控除・中間納付を差し引いて差引確定法人税額を出す。続いて法人税額をもとに地方法人税額(10.3%)を計算し、差引確定地方法人税額を出す。防衛特別法人税は別表一次葉一で計算し、基礎控除500万円以下なら0円と記入して提出する。
- ステップ1:別表四の所得金額を、別表一の先頭「所得金額又は欠損金額」へ転記する(円単位のまま。千円未満の切捨ては、次葉二で税率をかけるときに行う)。
- ステップ2:別表一次葉二で、所得金額に税率をかけ、法人税額を計算する(中小は800万円で2段階)。結果を別表一の「法人税額」へ戻す。
- ステップ3:税額控除(賃上げ促進税制などの特別控除、源泉された所得税額の控除)があれば差し引く。
- ステップ4:中間申告で納めた分を差し引き、「差引確定法人税額」を出す。これが、今回の確定申告で納める法人税です。
- ステップ5:法人税額をもとに地方法人税(10.3%)を計算し、同じように中間分を引いて「差引確定地方法人税額」を出す。
この5ステップを、順に見ていきます。
3. ステップ1:所得金額を別表一へ(別表四から転記)
別表一の出発点は、いちばん上の「所得金額又は欠損金額」の欄です。ここには、別表四でいちばん最後に出した所得金額(総額①)を、そのまま転記します。実務講座①で苦労して出した、あの所得金額です。
一つだけ注意点があります。別表一の「1」には、別表四「52の①」の金額を円単位のまま書きます。千円未満の切捨ては、税率をかける別表一次葉二の欄(「74」「76」。様式に「000」が印字されています)で行います。たとえば別表四の所得が8,914,128円なら、別表一には8,914,128円と書き、次葉二では800万円以下の部分8,000,000円と、800万円を超える部分914,000円(千円未満切捨て)に分けて税率をかけます。
赤字(欠損)の場合は、この欄がマイナス(または0)になり、法人税額も生じません。ただし、赤字でも法人住民税の均等割(資本金1,000万円以下・従業員50人以下なら年7万円程度)はかかるので、申告自体は必要です。
4. ステップ2:法人税額を計算する(中小法人の軽減税率)
所得金額が決まったら、いよいよ税率をかけます。ここが別表一の心臓部です。法人税の税率は、法人の区分と所得の大きさで変わります。
中小法人(資本金1億円以下で、大法人の完全支配下などにない普通法人)の場合、所得のうち年800万円以下の部分は15%、800万円を超える部分は23.2%という、2段階の税率になります。年800万円以下に低い税率がかかるこの軽減措置は、租税特別措置法による時限措置で、現在は令和9年(2027年)3月31日までに開始する事業年度まで延長されています。
▲ 中小法人の軽減税率の2段階計算を示した図。所得金額を800万円で区切り、800万円以下の部分には15%、800万円を超える部分には23.2%をかけて、それぞれの法人税額を足し合わせる仕組みを、所得585万円(全額15%=877,500円)と所得1,000万円(800万円×15%+200万円×23.2%=1,664,000円)の2つの例で示す。
この2段階の計算は、別表一次葉二(2026年3月以前に終了した事業年度分では別表一次葉)で行います。次葉二には、「800万円以下」(「74」)と「800万円超」(「76」その他の所得金額)を分けて計算する欄があり、それぞれに税率をかけて法人税額を出し、合計したものを別表一の「法人税額」の欄へ転記します。たとえば所得が891万4千円なら、800万円×15%=120万円、(891万4千円−800万円)×23.2%=約21万2千円、合計約141万2千円が法人税額になります。所得が800万円以下なら、全額に15%をかけるだけ――次葉でも1段階で済みます。
税率の例外もいくつか押さえておきます。令和7年度改正で、所得が年10億円を超える事業年度は、800万円以下の部分の税率も15%から17%に引き上げられました(2025年4月1日以後開始事業年度から)。また、グループ通算制度を適用している法人は、この軽減税率の対象外(19%)です。前3事業年度の所得の平均が15億円を超える法人(適用除外事業者)も、800万円以下の部分は19%になります。とはいえ、これらは所得が極めて大きい法人やグループ法人の話で、一般的な中小企業には関係しません。多くの中小企業は、800万円以下15%・超23.2%で計算すれば足ります。
なお、資本金が1億円を超える法人は、そもそも中小法人ではないため、軽減税率は使えず、全額が23.2%になります。期中の増資で期末資本金が1億円を超えた年は、その期から軽減税率が使えなくなる点にも注意してください。
5. ステップ3:税額控除 ― 法人税額から直接引ける
法人税額が出たら、次は税額控除です。税額控除は、所得から引く「所得控除」ではなく、計算した法人税額から直接差し引けるため、節税効果が大きいのが特徴です。中小企業に関係するものとしては、次の2つが代表的です。
一つめは、租税特別措置法上の特別控除です。賃上げを行った場合の「賃上げ促進税制」や、一定の機械・設備を取得した場合の控除などがあり、別表一の「法人税額の特別控除額」(「3」。別表六(六)「5」から転記)の欄に記入して差し引きます。とくに賃上げ促進税制は、中小企業向けに大きな控除枠が用意されているので、該当しそうなら検討する価値があります。
二つめは、所得税額控除です。預金の利息や配当を受け取るとき、あらかじめ所得税が源泉徴収されています。この源泉された所得税は、法人税の前払いの性質を持つため、別表六(一)で集計して別表一「16」に転記し、法人税額から差し引くことができます(別表四では加算・社外流出として扱った、あの所得税額です)。
これらの控除がなければ、この欄は空欄のまま、ステップ2で出した法人税額がそのまま次へ進みます。中小企業の多くは、賃上げ促進税制を使う年以外は、税額控除なしで進むことも珍しくありません。
6. ステップ4:差引確定法人税額(中間納付を差し引く)
税額控除を引いたあとの金額が、その事業年度の法人税額(年税額)です。この金額は、100円未満を切り捨てます。
ここから、中間申告で前もって納めた法人税(中間納付額)を差し引きます。前年度の法人税額が一定以上だった会社は、期の途中で中間申告・納付をしているので、その分を差し引くわけです。差し引いた残りが「差引確定法人税額」――これが、今回の確定申告で実際に納める法人税です。
中間納付が年税額を上回った場合(赤字に転落した年など)は、差引確定法人税額がマイナスになり、その分は還付されます。設立1年目は中間申告がないため、年税額がそのまま差引確定法人税額になります。
7. ステップ5:地方法人税(と、2026年からの防衛特別法人税)
法人税額が固まったら、別表一の左列の下段(28〜40)で地方法人税を計算します。地方法人税は、名前に「地方」とつきますが、国に納める国税です。
計算はシンプルで、課税標準法人税額(=法人税額。千円未満切捨て)に10.3%をかけるだけです。これも別表一次葉二に計算欄があり、結果を別表一へ転記します。あとは法人税と同じく、中間申告分を差し引いて「差引確定地方法人税額」を出します。これが、今回納める地方法人税です。
もう一つ、2026年から始まった新しい国税にも触れておきます。防衛特別法人税です。2026年(令和8年)4月1日以後に開始する事業年度から、基準法人税額に4%を課すものですが、年500万円の基礎控除があります。つまり、法人税額が500万円以下の会社は負担がありません。計算は別表一次葉一で行い、税額が0円の会社も「0」と記入して提出します(申告の義務はすべての法人にあります)。法人税額500万円は、中小法人の税率(800万円以下15%・超23.2%)で逆算すると所得約2,400万円に相当するため、大半の中小企業は実質的に影響を受けません。3月決算の会社なら、2026年4月開始の事業年度(2027年3月期)から関係し得る、と覚えておけば十分です。
ここまでで、別表一が完成します。「差引確定法人税額」と「差引確定地方法人税額」――この2つが、今回の申告で納める国税の金額です。
8. 記入例:サンプル株式会社の別表一
では、実務講座①でおなじみのサンプル株式会社(Web制作業・資本金300万円・3月決算・中小法人)で、別表一の記入例を見ていきます。実務講座①の記入例で、別表四の所得金額は585万円になっていました。これを受けて計算します(税額控除なし、中間納付なし、設立後の通常の事業年度とします)。
| 項目 | 欄 | 金額 |
|---|---|---|
| 所得金額(別表四「52の①」から円単位で転記) | 別表一「1」 | 5,850,000円 |
| 法人税額(5,850,000円 × 15%) | 次葉二「74」→「77」→ 別表一「2」 | 877,500円 |
| 税額控除(特別控除・所得税額控除) | 別表一「3」「16」 | 0円(なし) |
| 差引確定法人税額(納める法人税) | 別表一「15」 | 877,500円 |
| 課税標準法人税額(千円未満切捨て) | 別表一「30」 | 877,000円 |
| 地方法人税額(877,000円 × 10.3%) | 次葉二「82」・別表一「31」 | 90,331円 |
| 差引地方法人税額(100円未満切捨て) | 別表一「38」 | 90,300円 |
| 差引確定地方法人税額(納める地方法人税) | 別表一「40」 | 90,300円 |
| 防衛特別法人税(基礎控除500万円以下) | 次葉一「59」 | 0円 |
| 納める国税の合計(法人税+地方法人税) | ― | 967,800円 |
▲ サンプル株式会社の別表一の記入例(所得585万円・中小法人・税額控除なし・中間納付なし)。所得金額5,850,000円に15%をかけて法人税額877,500円、税額控除・中間納付がないため差引確定法人税額も877,500円。課税標準法人税額877,000円に10.3%をかけた地方法人税額90,331円の100円未満を切り捨てて、差引確定地方法人税額は90,300円。納める国税は合計967,800円。別表一は国税(法人税+地方法人税)のみで、法人住民税・事業税は地方税の申告書で別途計算する。
- 所得金額:5,850,000円(別表一「1」。別表四「52の①」から円単位で転記)。
- 法人税額:585万円は800万円以下なので、全額に15%。次葉二「74」5,850,000円 × 15% = 877,500円(「77」→別表一「2」)。
- 税額控除:なし。
- 差引確定法人税額:877,500円(別表一「15」。100円未満の端数なし)。これが納める法人税です。
- 課税標準法人税額:877,500円の千円未満を切り捨てて、877,000円(別表一「30」)。
- 地方法人税額:877,000円 × 10.3% = 90,331円(次葉二「82」・別表一「31」)→ 差引地方法人税額「38」で100円未満を切り捨てて 90,300円。
- 差引確定地方法人税額:90,300円(別表一「40」)。これが納める地方法人税です。
- 防衛特別法人税:法人税額877,500円は基礎控除の500万円以下なので、0円(別表一次葉一「59」に「0」と記入して提出)。
結果、サンプル株式会社が今回納める国税は、法人税877,500円+地方法人税90,300円=967,800円です。基礎講座⑨で「585万円×15%でおよそ88万円」と計算したのと一致します。なお、これに加えて、地方税である法人住民税・法人事業税が別途かかります(別の申告書で計算)。会社が実際に負担する税金の全体像は、これら地方税まで含めて把握します。
9. 仕上げのチェックポイント
別表一を仕上げるときに、間違えやすいポイントを整理しておきます。
- 端数処理を間違えない。次葉二で税率をかける所得(「74」「76」)と課税標準法人税額(「30」)は「千円未満切捨て」、差引所得に対する法人税額(「13」)・差引確定法人税額(「15」)・差引地方法人税額(「38」)・差引確定地方法人税額(「40」)は「100円未満切捨て」。切り捨てる桁が違うので注意します。
- 所得金額は別表四から正しく転記する。別表一は税額を計算するだけの書類で、所得は別表四で確定済み。ここを打ち間違えると、税額がまるごとずれます。
- 法人税額は別表一次葉(次葉二)で計算してから転記する。いきなり別表一に書こうとせず、次葉で800万円の区切りを意識して計算します。
- 住民税・事業税は別表一に含めない。別表一は国税(法人税+地方法人税)だけ。地方税は第6号様式などで別途計算する、と切り分けます。
会計ソフトを使えば、別表四から別表一・次葉への転記と税率計算は自動で行われます。それでも、「所得 → 法人税額(15%/23.2%)→ 地方法人税(10.3%)→ 差引確定税額」という流れと、端数処理のルールを理解しておけば、出てきた数字が正しいかを自分でチェックでき、税務調査や融資の場面でも、根拠を持って説明できます。
まとめ:別表一を書くための要点
- 別表一は申告書の本体。別表四の所得金額に税率をかけて、法人税と地方法人税(どちらも国税)を計算する。住民税・事業税は別表一には含めない。
- 次葉とセット(令和8年4月1日以後終了事業年度分は、別表一・次葉一・次葉二の3枚)。税率計算は次葉二で、防衛特別法人税は次葉一で行い、別表一へ転記する。別表一は申告書の最後に作る。
- 中小法人の税率は年800万円以下15%・超23.2%。所得を800万円で区切って計算する(次葉で2段階)。
- 地方法人税=法人税額(課税標準)×10.3%。2026年4月以後開始事業年度からの防衛特別法人税は、年500万円の基礎控除があり、中小は基本ゼロ(ゼロでも次葉一に「0」と書いて申告する)。
- 端数処理は、税率をかける所得(次葉二)・課税標準は千円未満切捨て、確定税額は100円未満切捨て。出てくる答えは「差引確定法人税額」と「差引確定地方法人税額」。
別表四で所得を出し、別表一で税額を出す――ここまでで、法人税申告の幹はつながりました。次は、税金の納付状況を整理する別表五(二)や、実際にe-Tax・eLTAXで申告・納付する手順へ進むと、申告から納付までが一本につながります。
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※ 本記事は2026年10月時点の情報にもとづく一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談に応じるものではありません。税額は法人の区分・所在地・各種控除・適用される特例などにより異なります。本記事の欄番号は、令和8年4月1日以後終了事業年度分の様式(国税庁)によります。実際の申告にあたっては、最新の様式・記載要領を国税庁等で確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。