実務講座⑬までで、法人税の申告書一式(別表・決算書・内訳書・概況書)がそろいました。ところが、これで申告が終わりではありません。会社は、国に納める法人税とは別に、都道府県と市町村にも税金を納めます。それが、法人住民税と法人事業税――いわゆる地方税です。
しかも地方税は、税務署ではなく、都道府県税事務所と市町村役場に、別の様式で申告します。「法人税の申告書を出したのに、県から書類が届いた」と慌てないよう、今回は地方税の全体像と申告書の書き方を、サンプル株式会社の例で見ていきましょう。
1. 会社が納める税金は3つ ― 国・都道府県・市町村
会社が所得に対して納める税金は、国税(法人税・地方法人税)、都道府県税(法人住民税の道府県民税+事業税+特別法人事業税)、市町村税(法人住民税の市町村民税)の3つの宛先に分かれる。

▲ 会社が納める税金の宛先が3つに分かれることを示した図。国には法人税と地方法人税を税務署へ申告し、都道府県には法人住民税(道府県民税)・法人事業税・特別法人事業税を都道府県税事務所へ申告し、市町村には法人住民税(市町村民税)を市町村役場へ申告することを表す。
会社が利益に対して納める税金は、納め先で3つに分かれます。1つめが国税で、法人税と地方法人税。実務講座①〜⑬で扱ってきた、税務署に出す申告書がこれです。2つめが都道府県税で、法人住民税のうちの道府県民税、法人事業税、特別法人事業税。都道府県税事務所に申告します。3つめが市町村税で、法人住民税のうちの市町村民税。市町村役場に申告します。
つまり、決算のあとに作る申告書は、税務署あて(法人税)・都道府県あて・市町村あての3種類ということです。ただし東京23区に本店がある会社は例外で、市町村民税にあたる部分も都に統合されているため、都税事務所への申告1本にまとまります。
なお、地方法人税は名前に「地方」と付きますが、これは国税です。地方に配分するために国が集める税金で、法人税の申告書(別表一)で法人税といっしょに計算します。名前に惑わされないようにしましょう。
2. 法人住民税 ― 均等割と法人税割
法人住民税は、均等割と法人税割の2つを合計したものです。性格がまったく違うので、分けて理解しましょう。
法人住民税=均等割+法人税割。均等割は所得に関係なく定額で、赤字でもかかる(資本金1,000万円以下・従業者50人以下なら道府県民税2万円+市町村民税5万円=年7万円が目安)。法人税割は法人税額×税率(道府県民税1.0%+市町村民税6.0%が標準)で、赤字ならゼロ。

▲ 法人住民税の構成を示した図。均等割は所得に関係なく資本金や従業者数の区分に応じて課される定額部分で、資本金1,000万円以下かつ従業者50人以下なら道府県民税2万円と市町村民税5万円の合計年7万円が標準であり、赤字でも納める必要があること、法人税割は法人税額に道府県民税1.0%・市町村民税6.0%の標準税率を掛けて計算し、赤字で法人税額がゼロなら法人税割もゼロになることを表す。
均等割は、所得がいくらであっても関係なく、定額でかかる部分です。資本金の額や従業者の数の区分に応じて金額が決まっており、資本金1,000万円以下かつ従業者50人以下という多くの中小企業が当てはまる区分では、道府県民税が年2万円、市町村民税が年5万円で、合計年7万円が標準的な金額です。
ここが地方税でいちばん大事なポイントです。均等割は、赤字でもかかります。 法人税は所得がゼロやマイナスなら発生しませんが、均等割は会社が存在している限り課されます。「赤字だから税金はゼロ」ではなく、「赤字でも最低7万円程度はかかる」と覚えておきましょう。休眠会社でも、原則として均等割は発生します(自治体によっては免除の取扱いがあります)。
法人税割は、法人税額に税率を掛けて計算する部分です。標準税率は、道府県民税が1.0%、市町村民税が6.0%。課税標準となるのは、税額控除を差し引いたあとの法人税額です。したがって、赤字などで法人税額がゼロなら、法人税割もゼロになります。なお、自治体によっては標準税率より高い超過税率を採っているところがあるので、実際の税率は本店所在地の自治体で確認してください。
3. 法人事業税と特別法人事業税 ― 所得割と37%の上乗せ
法人事業税は、所得に対してかかる都道府県の税金です。資本金1億円以下の中小法人は、所得割だけで計算します(資本金1億円超の大法人には、付加価値割・資本割が加わる外形標準課税が適用されます)。
なお、外形標準課税の対象は近年の改正で広がっており、資本金1億円以下でも、以前に対象だった法人や、大きな企業グループの100%子会社にあたる法人などは、資本金と資本剰余金の合計額によって対象になることがあります。とはいえ、オーナーが自分で出資している独立した中小企業であれば、通常は対象外と考えて差し支えありません。グループ会社がある場合は、念のため確認しておきましょう。
所得割の標準税率は、所得の金額に応じた3段階です。所得のうち400万円以下の部分が3.5%、400万円超800万円以下の部分が5.3%、800万円超の部分が7.0%。法人税の軽減税率と同じように、超えた部分にだけ高い率がかかる仕組みです。
そして、この事業税(所得割)の額に37%を掛けたものが、特別法人事業税です(資本金1億円以下の普通法人の場合)。特別法人事業税は、都道府県に事業税といっしょに申告・納付しますが、実質は国が地方に配分するための国税です。申告書の上では事業税とセットで扱うので、「事業税を計算したら、その37%を上乗せする」と覚えておけば実務では足ります。
ここでもうひとつ、法人税との大きな違いがあります。事業税と特別法人事業税は、翌期に損金算入されます。 法人税・住民税は損金になりませんが、事業税は損金になる。ただし損金になるのは納付した翌期(申告した事業年度)です。実務講座④の別表五(二)(租税公課の納付状況)で税金の種類ごとに扱いが違ったのは、このためです。
この「翌期に損金」という性質は、資金繰りの面でも意識しておく価値があります。当期に事業税を計算しても、それが節税として効いてくるのは翌期の申告のとき。逆にいえば、今期たまたま利益が大きかった会社は、翌期に前期分の事業税が損金として落ちるぶん、翌期の所得はやや小さくなります。法人税・住民税・事業税で扱いが違うことを押さえておけば、別表四や別表五(二)を書くときの迷いも減ります。
4. 申告書の様式と提出先 ― 第六号様式・第二十号様式
地方税の申告書は、宛先ごとに様式が分かれています。
都道府県に出すのが、第六号様式です。正式には「法人都道府県民税・事業税・特別法人事業税の確定申告書」で、道府県民税(均等割+法人税割)と、事業税・特別法人事業税を、1枚にまとめて申告します。市町村に出すのが、第二十号様式です。こちらは市町村民税(均等割+法人税割)を申告します。
提出先は、本店所在地によって変わります。東京23区なら、都税事務所に第六号様式を出せば完了です(市町村民税の部分も都に統合されているため)。23区外なら、都道府県税事務所に第六号様式、市町村役場に第二十号様式と、2か所に出します。支店や事業所が複数の都道府県・市町村にある場合は、それぞれの自治体に申告し、従業者数などで税額を分けます(分割)。中小企業で1か所だけなら、この分割は不要です。
提出期限は、法人税と同じで、事業年度終了日の翌日から2か月以内。法人税の申告と同じタイミングで、まとめて進めるのが実務です。提出は、eLTAX(エルタックス)という地方税の電子申告システムで行えます。国税のe-Tax(実務講座③)に対応する、地方税版の窓口だと考えてください。資本金1億円超の法人は電子申告が義務ですが、中小企業も会計ソフトからeLTAXで送信するのが一般的です。
5. 記入例:サンプル株式会社
サンプル株式会社(所得500万円)の地方税:均等割7万円、法人税割は法人税額約90万円×7.0%=約6.3万円、事業税は400万円×3.5%+100万円×5.3%=19.3万円、特別法人事業税は19.3万円×37%=約7.1万円。

▲ サンプル株式会社の地方税の計算例を示した図。所得500万円の中小法人について、均等割が年7万円、法人税割が法人税額約90万円に道府県民税1.0%と市町村民税6.0%の合計7.0%を掛けた約6.3万円、法人事業税が400万円×3.5%と100万円×5.3%の合計19万3,000円、特別法人事業税がその37%で約7万1,000円となることを表す。
サンプル株式会社(Web制作業・資本金300万円・従業員数名)で、地方税を計算してみましょう。当期の所得は500万円、法人税額は約90万円だったとします(標準税率での説明用の想定です)。
まず、法人住民税の均等割。資本金1,000万円以下・従業者50人以下の区分なので、道府県民税2万円+市町村民税5万円=年7万円です。次に法人税割。法人税額90万円に、道府県民税1.0%と市町村民税6.0%を掛けると、9,000円+5万4,000円=6万3,000円になります。
続いて法人事業税。所得500万円を区分に当てはめると、400万円以下の部分が400万円×3.5%=14万円、400万円超800万円以下の部分が100万円×5.3%=5万3,000円。合計19万3,000円です。さらに特別法人事業税が、19万3,000円×37%=7万1,410円(100円未満は切捨てなどの端数処理をします)。
これらを様式に落とすと、第六号様式に道府県民税(均等割2万円+法人税割9,000円)・事業税19万3,000円・特別法人事業税7万1,400円を、第二十号様式に市町村民税(均等割5万円+法人税割5万4,000円)を記載する形になります。仮に赤字だったとしても、均等割7万円は納めることになる――ここがいちばん実感しやすい地方税の特徴です。
6. 地方税でつまずきやすい点
最後に、中小企業が実際につまずきやすいポイントを挙げておきます。
まず、設立初年度や解散した年など、事業年度が12か月に満たない場合の均等割です。均等割は、事務所等を有していた月数で按分します。月数は暦にしたがって数え、1か月に満たない端数は切り捨て、ただし期間の全部が1か月未満のときは1か月とします。たとえば7か月だけ事業所があった年なら、年7万円×7か月÷12か月で計算し、100円未満の端数を切り捨てます。設立1期目に「まるまる7万円」と思い込んで多く納めてしまうケースがあるので注意しましょう。
次に、赤字でも申告書は出すという点です。均等割がかかる以上、申告が不要になることはありません。「赤字だから申告しなくていい」と放置すると、無申告のまま督促を受けることになります。法人税がゼロでも、地方税の申告書は必ず提出します。
また、地方税にも中間申告があります。法人税で中間申告が必要になる会社は、住民税・事業税についても事業年度の途中で申告と納付をすることになります。年1回だと思っていると資金繰りを見誤るので、前期の税額が一定以上あった会社は、期の途中にも納付があると考えておきましょう。
そして、税率は自治体ごとに違うという点。ここまで挙げた税率は、あくまで標準税率です。自治体によっては、法人税割や事業税に標準より高い超過税率を採用しています。均等割の区分金額も、条例で上乗せしている自治体があります。会計ソフトを使う場合も、本店所在地の自治体を正しく設定しないと、税率が違ったまま計算されてしまいます。最初の1年目だけは、自治体のホームページで税率表を確認しておくと安心です。
7. 仕上げのチェックポイント
- 法人税の申告とは別に、都道府県(第六号様式)と市町村(第二十号様式)へ申告する。東京23区は都税事務所に一本化。期限は法人税と同じ2か月以内。
- 均等割は赤字でもかかる(資本金1,000万円以下・従業者50人以下なら年7万円が目安)。法人税割は法人税額×税率(標準1.0%+6.0%)なので赤字ならゼロ。
- 事業税の所得割は3段階(400万円以下3.5%/800万円以下5.3%/800万円超7.0%)。特別法人事業税は事業税額×37%。
- 事業税・特別法人事業税は翌期に損金算入(法人税・住民税は損金不算入)。別表五(二)の扱いの違いはここから来る。
- 税率は自治体によって超過税率があるので、必ず本店所在地の自治体で確認する。提出はeLTAXで電子申告できる。
会計ソフトを使えば、法人税の申告データから地方税の申告書もほぼ自動で作られ、eLTAXまで連携できます。それでも、「均等割は赤字でもかかる」「事業税は翌期に損金」「宛先は都道府県と市町村の2つ」という骨格を理解しておけば、納税資金の見通しが立ち、決算後に慌てずに済みます。
まとめ:法人住民税・事業税の申告書を書くための要点
- 会社の税金の宛先は国・都道府県・市町村の3つ。法人税とは別に、地方税の申告書(第六号様式・第二十号様式)を出す。
- 法人住民税=均等割+法人税割。均等割は赤字でもかかる定額(中小は年7万円が目安)、法人税割は法人税額×標準1.0%+6.0%。
- 法人事業税=所得割(3.5%/5.3%/7.0%の3段階、中小は原則として外形標準課税の対象外)。特別法人事業税=事業税額×37%。
- 事業税・特別法人事業税は翌期に損金算入できる(法人税・住民税との決定的な違い)。
- 期限は事業年度終了の翌日から2か月以内、提出はeLTAX。税率は自治体差(超過税率)があるので所在地で確認。
実務講座①〜⑭で、国税(法人税)と地方税(住民税・事業税)の申告がひととおりつながりました。ただ、会社が申告する税金はもう一つあります。売上に伴って預かる消費税です。次は、消費税の申告が法人税とどう違うのかを見ていきましょう。
- 前回:【法人税の実務講座⑬】法人事業概況説明書の書き方をわかりやすく解説
- 次回:【法人税の実務講座⑮】消費税の申告は法人税とどう違う?基本をわかりやすく解説
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- 【法人税の実務講座③】e-Taxで法人税を申告する手順をわかりやすく解説
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。記入例の金額は説明のための想定であり、税率・均等割の金額は自治体(超過税率の有無)や法人の区分により異なります。地方税の取扱いは改正されることがあります。実際の申告にあたっては、最新の様式・税率を本店所在地の自治体等で確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。