【法人税の基礎講座⑨】法人税額の計算と税額控除|別表一をわかりやすく

前回(第8回)は、別表五(一)と別表四の連動を学びました。別表四で課税所得を計算し、別表五(一)でズレを翌期へ繰り越す――申告書の骨格が、だいぶ見えてきましたね。

第9回の今回は、いよいよ「法人税額そのもの」を計算します。これまで一生懸命に計算してきた課税所得に、税率をかけ、そこから税金を直接減らす「税額控除」を引いて、最終的に納める法人税を確定させます。そして、その計算結果をまとめる、申告書の表紙にあたる書類が「別表一」です。シリーズの一つの到達点です。じっくりいきましょう。

目次

1. 別表一とは ― 申告書の「表紙」

別表一の正式名称は「各事業年度の所得に係る申告書」といいます。少し堅い名前ですが、要するに、法人税申告書のいちばん表、つまり「表紙」にあたる書類です。

これまでの流れを思い出しましょう。別表四で会計の利益から課税所得を計算し、別表五(一)で純資産(ズレの繰り越し)を管理しました。それらの作業の集大成として、最後に別表一で「結局、いくら法人税を納めるのか」を確定させます。

別表一には、会社名・所在地・事業年度といった基本情報のほか、課税所得・法人税額・地方法人税額・差引確定税額など、申告のいちばん大事な数字が一枚にまとまっています。税務署の担当者が最初に目を通すのも、この別表一です。

別表四が「所得の計算書」だとすれば、別表一は「税額の計算書であり、申告書の本体」です。これまで作ってきた各別表の数字が、最後にこの一枚へ集まってくる――そうイメージすると、別表一の位置づけがすっきり掴めます。

2. 法人税額の計算①:課税所得に税率をかける

法人税額の計算は、基本の式で表すとシンプルです。

法人税額 = 課税所得 × 税率  −(税額控除)

まずは税率から見ましょう。法人税の原則的な税率は23.2%です。ただし、中小企業には大切な特例があります。それが「軽減税率」です。

資本金1億円以下の中小法人には、年800万円以下の所得の部分に15%800万円を超える部分に23.2%という、2段階の税率が適用されます。本来の軽減税率は19%ですが、賃上げや物価高への対応として、現在は15%に引き下げる特例が続いています(令和9年/2027年3月末までに開始する事業年度まで延長されています)。

2段階というのが分かりにくいので、例で考えましょう。所得が1,000万円だったとします。

  • 800万円以下の部分:800万円 × 15% = 120万円
  • 800万円を超える部分:(1,000万円 − 800万円)× 23.2% = 46万4千円
  • 合計:166万4千円

このように、所得の全部に同じ税率がかかるのではなく、800万円という線で区切って、それぞれ別の税率をかけるのです。所得が800万円以下なら、全額が15%になります。この「800万円の壁」は、中小企業にとって、とても大きな意味を持ちます。利益を800万円あたりにうまく着地させられるかどうかで、税負担がぐっと変わるからです。

なお、所得が年10億円を超えるような大きな中小法人は800万円以下の部分も17%になる、グループ通算制度を使っている法人や、過去3年の平均所得が15億円を超える大規模な会社(適用除外事業者)は19%になる、といった例外もあります。ただ、これは一部の大きな会社の話で、ふつうの中小企業は15%と覚えておけば十分です。

3. 法人税額の計算②:税額控除で「直接」税金を減らす

ここが、第9回のもう一つの山場です。「税額控除」とは、計算した法人税額から、税金そのものを直接差し引く制度のことです。

これまで何度も出てきた「損金算入(経費にする)」と、混同しやすいので、違いをはっきりさせておきましょう。

  • 損金算入:所得を減らす。減った所得に税率をかけた分だけ、税金が減る。たとえば10万円を経費にできても、税率15%なら、減る税金は1万5千円。
  • 税額控除:税額を直接減らす。10万円の税額控除なら、税金がまるごと10万円減る。

同じ「10万円」でも、効き目がまったく違うのが分かりますね。税額控除は、損金算入よりもインパクトが何倍も大きいのです。だからこそ国は、賃上げや設備投資など、社会のために進めてほしい行動に対して、ごほうびのように税額控除を用意しています。

中小企業の代表的な税額控除が、「賃上げ促進税制」です。青色申告書を出している中小企業者等が、従業員の給与の総額を前年度より一定割合ふやすと、その増加額の一部を、法人税額から直接差し引けます。給与総額を前年度より1.5%以上ふやせば増加額の15%、2.5%以上なら30%を控除でき、教育訓練費をかけたり、子育て支援・女性活躍の認定を受けたりすると、さらに上乗せされます(最大で増加額の45%)。控除できるのは法人税額の20%までですが、中小企業は、その年に引き切れなかった分を5年間くりこせるので、赤字の年に賃上げをしても、将来の黒字の年に使えます。

ほかにも、機械などを買ったときの「中小企業投資促進税制」(取得価額の7%を税額控除)など、中小企業が使える税額控除はいくつもあります。これらは、それぞれ専用の別表で計算してから、その結果を別表一へ持ってきて差し引きます。細かい要件や別表の書き方は、理論講座と実務講座でくわしく扱います。この回では、「税額控除は税金を直接減らす、強力な仕組み」という核心を、しっかり掴んでください。

4. 国税の仲間:地方法人税と防衛特別法人税

法人税額を計算したら、それで終わり――ではありません。同じ「国税」の仲間として、法人税額をもとに計算する税金が、もう少しあります。

地方法人税

地方法人税は、法人税額(税額控除を引いたあと)に10.3%をかけて計算します。名前に「地方」と入っていますが、じつは国に納める国税です。地域によって税収の力に差があるため、いったん国がまとめて集め、財政の弱い地域へ配り直す――その原資にするための税金です。別表一では、法人税額のすぐ下に、この地方法人税を計算する欄があります。

防衛特別法人税

これは、2026年4月1日以後に開始する事業年度から始まる、新しい税金です。防衛力の強化に使う財源を確保するために作られました。計算は、もとになる法人税額から年500万円を差し引いた額に、4%をかけます。500万円の控除があるので、法人税額が500万円以下の会社は、実際の負担はありません。多くの中小企業は負担なしで済みますが、制度としては申告の対象になる、という点だけ押さえておきましょう。2026年からの新顔なので、ここで触れておきます。

これら国税の仲間を合わせた金額が、別表一で確定します。なお、法人住民税や法人事業税といった「地方税」は、別表一とは別の申告書で計算します。そちらは第11回でくわしく扱います。

5. 別表一には何を書くか ― 税額が確定するまでの流れ

別表一を、上から下へ追っていくと、税額が確定するまでの流れが見えてきます。

  1. 課税所得(別表四で計算した最終の数字を、ここへ転記)
  2. 法人税額(課税所得 × 税率。中小法人は2段階)
  3. 税額控除(賃上げ促進税制など)を差し引く → 差引法人税額
  4. 地方法人税額を計算して加える
  5. 中間納付した税額があれば差し引く
  6. 差引確定法人税額・地方法人税額(=今回、実際に納める金額)

ここで、新しく出てきた「中間納付」を説明しておきましょう。前期の法人税額が20万円を超えていた会社は、事業年度の途中で「中間申告」をして、年税額のおおよそ半分を前払いします。そして確定申告のときに、1年間の確定した税額から、この前払い分を差し引いて、残りだけを納めます。いわば「年税額 − 前払い = 残りの納付額」という精算をする場所が、別表一の下のほうなのです。会社を作って1年目は、前期がそもそも存在しないので、中間申告は不要です。

6. ケーススタディ:サンプル株式会社の法人税額

おなじみのサンプル株式会社で、実際に計算してみましょう。

サンプル株式会社(おさらい) ― Web制作業/資本金300万円(中小企業)/3月決算

第7回・第8回で、この会社の課税所得は585万円と確定しました。これに税率をかけます。

  • 課税所得585万円は、800万円以下です。だから全額が15%。2段階に分ける必要はありません。
  • 法人税額 = 585万円 × 15% = 877,500円

(もし所得が900万円だったら、800万円までが15%で120万円、残り100万円が23.2%で23万2千円、合計143万2千円――と2段階になります。585万円は800万円以下なので、まるごと15%でシンプルに計算できる、というわけです。)

次に税額控除です。今回サンプル社は、対象になる取り組みをしていなかったとすると、控除はなく、差引法人税額は877,500円のままです。

ここで、税額控除の効き目も見ておきましょう。もしサンプル社が、従業員の給与の総額を前年度より2%(要件の1.5%超)増やしていて、その増加額が150万円だったとします。すると、賃上げ促進税制で150万円 × 15% = 22万5千円を、法人税額から直接差し引けます。差引法人税額は、877,500円 − 225,000円 = 652,500円。賃上げをするだけで、税金が22万5千円も軽くなる――税額控除のインパクトの大きさが、よく分かりますね。

さらに、法人税額(控除前の877,500円)に地方法人税10.3%をかけると、約9万円。防衛特別法人税は、法人税額が500万円以下なので、実質の負担はありません(申告だけ)。

結果として、サンプル社が納める国税(法人税+地方法人税)は、約97万円となります。ここに、第11回で扱う地方税(住民税・事業税)が加わって、ようやく会社全体の税負担が見えてきます。

税額計算フロー図

税額計算の全体フロー図。課税所得585万円に税率(800万円以下は15%)をかけて法人税額877,500円を求め、そこから税額控除を差し引き、地方法人税(10.3%)を加え、中間納付を精算して、最終的に納める税額が確定するまでの流れを示す図。

こうして見ると、別表一は、これまでの全ての別表の数字が最後に集まり、「納める税額」という一つの答えに変わる場所だと分かります。所得を計算する(別表四)だけでは、税金は決まりません。そこに税率をかけ、政策的な税額控除を引き、国税の仲間を足して、前払い分を精算して――そこまでやって初めて、納税額が確定するのです。

7. よくある疑問

最後に、法人税額の計算でつまずきやすい点を、3つの疑問に答える形で整理しておきます。

赤字の年は、法人税はどうなる?

その年の所得がマイナス(赤字)なら、所得にかける法人税も、地方法人税も0円です。所得がなければ、かける元がないので当然ですね。ただし、注意したいのが法人住民税の均等割です。これは所得とは関係なく、会社が存在するだけでかかる税金で、いちばん小さい規模の会社でも年7万円程度は納めます。「赤字なら一円も払わなくていい」わけではない、という点は覚えておきましょう(くわしくは第11回)。また、賃上げ促進税制の税額控除は、赤字でその年に使えなくても、中小企業なら5年間くりこせるので、将来の黒字の年に活かせます。

「税額控除」と「特別償却」は、どちらが得?

設備投資の優遇には、税額控除のほかに「特別償却」という選択肢が用意されていることがあります。特別償却は、本来なら数年かけて減価償却する金額を、早めにまとめて経費にできる制度です。ただ、これは経費にするタイミングを前倒しするだけで、トータルで経費にできる金額は変わりません(先送りした分、将来の経費は減ります)。いっぽう税額控除は、税金そのものが純粋に減るので、長い目で見ると有利になりやすいです。多くの制度では、どちらか一方しか選べません。「今すぐ資金を手元に残したいなら特別償却、トータルの税負担を軽くしたいなら税額控除」と、目的で選ぶのが基本です。

計算で出た金額の、端数はどうする?

法人税の計算では、端数の切り捨てルールがあります。まず、税率をかける前の課税所得は1,000円未満を切り捨てます。そして、税率をかけて出した法人税額は100円未満を切り捨てます。たとえば課税所得が585万3,400円なら、585万3,000円に直してから税率をかける、というイメージです。会計ソフトを使えば自動でやってくれますが、自分で電卓をたたくときは、この端数処理を知らないと、税務署の計算と一円ずれて戸惑うことがあります。

まとめ:第9回のポイント

  • 別表一は申告書の「表紙」。これまでの別表の数字が集まり、最終的な納付税額を確定させる。
  • 法人税額=課税所得×税率。中小法人は、800万円以下が15%/超える部分が23.2%の2段階。
  • 税額控除は税額を「直接」減らすので、損金算入(所得を減らす)よりインパクトが大きい。代表は賃上げ促進税制
  • 法人税額をもとに地方法人税(10.3%)も計算。2026年4月からは防衛特別法人税も申告対象に。
  • 中間納付があれば差し引いて、残りを納める。設立1年目は中間申告は不要。

税率をかけ、税額控除を引き、税額を確定する――申告書の表紙「別表一」を越えました。これで、申告書の主要な計算は、ほぼ一通り見たことになります。次回(第10回)は、ここまで触れてこなかった「主要な別表」を、まとめて整理します。同族会社を判定する別表二、税金の納付状況を記録する別表五(二)など、申告書を支える脇役たちの役割を見ていきましょう。

  • 前回:【法人税の基礎講座⑧】別表五(一)とは?別表四との連動をわかりやすく
  • 次回:【法人税の基礎講座⑩】法人税の別表とは?主要な別表の役割をまとめて解説

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法人税額の計算や税額控除について、さらに詳しく知りたい方は、こちらもどうぞ。

  • 【法人税の実務講座②】別表一の書き方・記入例|法人税額の計算
  • 【法人税の理論講座⑩】中小企業向けの税額控除をわかりやすくまとめ

※本記事は、一般的な情報を分かりやすくまとめたものです。会計・税務の具体的な取り扱いは状況により異なります。税率や税額控除の要件は改正されることがあるため、正確な情報は国税庁のサイト等でご確認いただくか、専門家へご相談ください。

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