ここまでの全12回で、法人税の「計算の中身」を、ひととおり学んできました。決算から始まり、課税所得を出し、税額を計算し、地方税や繰越欠損金まで――サンプル株式会社の数字も、何度も登場しましたね。
いよいよ最終回となる第13回は、計算した税金をいつ・どうやって申告し、納めるのかという「実務」を扱います。電子申告のしくみ、納付の方法、年の途中の中間申告、そして1年間のスケジュール。最後に、全13回を一気に振り返り、サンプル株式会社の申告書が完成するまでの流れを総復習します。
1. 申告と納付の基本 ― 期限は「2か月以内」
まず、いちばん大事な期限から確認しましょう。法人税(と地方法人税)の確定申告・納付の期限は、事業年度が終わった日の翌日から2か月以内です。3月決算のサンプル株式会社なら、3月末で事業年度が終わるので、その2か月後の5月31日が期限になります。
ここで注意したいのは、申告書を出す期限と、税金を納める期限は、同じ日だということです。「申告だけ先に済ませて、納付はあとで」というわけにはいきません。さらに、法人税・地方法人税(国税)だけでなく、第11回で学んだ地方税(法人住民税・法人事業税・特別法人事業税)も、同じ期限までに申告・納付します。期限に遅れると、延滞税や加算税といった、本来払わなくてよい税金が上乗せされてしまうので、必ず期限内に済ませましょう。
なお、申告期限には、延長の特例があります。定款などで「決算後3か月以内に株主総会を開く」と定めている会社は、申請により、法人税の申告期限を1か月延ばして3か月以内にできます。ただし注意したいのは、これはあくまで「申告書を出す期限」の延長で、「納付の期限」は原則どおり2か月以内のまま、という点です。納付が2か月を過ぎると、延滞税に近い「利子税」がかかります。中小企業では、最初から2か月以内に申告も納付も済ませてしまうのが、いちばんシンプルです。
2. 電子申告 ― 国税は「e-Tax」、地方税は「eLTAX」
いまの法人税申告は、紙ではなく電子申告が主流です。使うシステムは、国税と地方税で分かれています。
- e-Tax … 国税の電子申告・納税システム。法人税・地方法人税・消費税などを申告します。
- eLTAX(エルタックス) … 地方税の電子申告システム。法人住民税・法人事業税・特別法人事業税・市町村民税などを申告します。
国税はe-Tax、地方税はeLTAX――この2つのシステムを使って申告する、と覚えてください。会計ソフトを使っていれば、作成した申告データを、これらのシステムに連携して、まとめて送れることが多く、ぐっと手間が省けます。
なお、資本金が1億円を超える大法人は、電子申告が義務づけられています。サンプル株式会社のような中小企業は、まだ任意ですが、紙よりも早く・正確に申告できるので、電子申告がおすすめです。国も、税務署に行かずに手続きが完結する社会を目指して、電子申告と後述のキャッシュレス納付を強く後押ししています。
電子申告には、紙にはないメリットがあります。税務署の窓口が閉まっている時間でも送信でき、控えもデータで残ります。計算ミスや転記ミスも、ソフトが自動でチェックしてくれるので減らせます。郵送や持参の手間もありません。最初の利用者登録だけ少し手間がかかりますが、一度設定してしまえば、その後の申告は、ずっと楽になります。
3. 納付の方法 ― キャッシュレスが便利
税金の納め方も、いまは選択肢が豊富です。代表的なものを挙げます。
- ダイレクト納付 … 事前に届け出た口座から、簡単な操作で引き落とす方法。即時でも、期日を指定してでも納付できます。
- インターネットバンキング … ふだん使っている銀行のネットバンキングから納付。
- クレジットカード納付 … カードで納付(1,000万円未満まで)。手数料がかかり、領収証は出ません。
- スマホアプリ納付 … スマホの決済アプリで納付(30万円以下まで)。
- コンビニ納付 … QRコードを使ってコンビニで納付(30万円以下まで)。
- 窓口での現金納付 … 納付書を使い、金融機関や税務署の窓口で納める、従来の方法。
最近は、国がキャッシュレス納付を強く勧めており、e-Taxで申告している法人には、納付書をあらかじめ送らなくなっています。「納付書が届かないから、まだ納めなくてよい」と勘違いして、納付を忘れてしまう例もあるので、注意しましょう。自分の会社に合った方法を、一つ決めておくと安心です。
どの方法を選ぶかは、会社の使い勝手で決めて構いません。手間をいちばん省きたいなら、口座から自動で引き落とせるダイレクト納付が便利です。資金繰りの都合で支払いを少し後ろにずらしたいなら、カードの引き落とし日まで実際の出費を遅らせられるクレジットカード納付という選択もあります(ただし手数料はかかります)。いずれにしても、納税の資金は、申告前にあらかじめ準備しておくことが大切です。
なお、ここまでは国税(法人税など)の納付方法ですが、地方税(住民税・事業税)も、eLTAXの共通納税システムを使えば、同じようにオンラインで納付できます。国税と地方税で、別々の窓口に出向く必要はありません。
4. 1年間のスケジュール(3月決算の場合)
では、1年を通して、いつ何があるのでしょうか。3月決算のサンプル株式会社を例に、年間の流れを見てみましょう。下の図で、全体像をつかんでください。

3月決算の会社の法人税 年間スケジュール:4月1日に事業年度が始まり、9月末で半分が過ぎ、前期の法人税が20万円を超える場合は11月末までに中間申告・納付、3月31日に決算日を迎え、4〜5月の決算・申告書作成を経て、5月31日までに確定申告・納付を行う。
▲ 3月決算の会社の年間スケジュールを示した図。4月1日に事業年度が始まり、9月末で半分が過ぎ、前期の法人税が20万円を超える場合は11月末までに中間申告・納付、3月31日に決算日を迎え、その後の決算・申告書作成を経て、5月31日までに確定申告・納付を行うという流れを表す。
ポイントは、大きく3つです。1つめは、3月末の決算。ここで1年間の業績を締めて、決算書を作ります。2つめは、その後の4〜5月の申告書作成。決算書をもとに、これまで学んだ別表を作っていきます。3つめが、5月31日の確定申告・納付。ここで1年の税金が確定し、納付します。そしてもう一つ、会社によっては、年の途中(11月末)に中間申告がある――これが次の話です。
なお、この年間スケジュールの土台にあるのが、日々の経理(記帳)です。毎日の取引をきちんと記録しておくからこそ、決算がスムーズに進み、正確な申告ができます。申告は、決算の日だけの作業ではなく、1年を通じた経理の積み重ねの上に成り立っている、というわけです。
逆にいえば、日々の記帳が滞っていると、決算期になって一気に1年分を整理することになり、ミスも起きやすく、申告もぎりぎりになりがちです。クラウド会計ソフトを使って、取引をこまめに記録しておけば、決算と申告の負担は大きく軽くなります。「申告のための経理」ではなく、「経営を見るための経理」を、ふだんから続けておくこと――それが、結局はいちばんの近道です。
また、決算から申告までの2か月は、会社にとってけっこう忙しい時期です。帳簿を締め、棚卸しや減価償却を計上し、決算書を作り、そこから別表をそろえて申告書を仕上げる――やることは少なくありません。だからこそ、期限の5月31日から逆算して、早めに着手することが大切です。4月のうちに決算作業を始めておけば、余裕をもって申告に臨めます。
5. 中間申告 ― 年の途中の「前払い」
会社の規模が大きくなると、年に1回の確定申告だけでなく、年の途中で中間申告が必要になります。
対象になるのは、前の事業年度の法人税額が20万円を超える会社です。3月決算なら、事業年度の半分が過ぎた9月末を基準に、その2か月後の11月30日までに、税金の一部を前払いします。納め方は、前期の税額の半分を納める「予定申告」か、半年分を実際に計算する「仮決算」のどちらかを選べます。
ただし、設立して1年目の会社は、前期の実績がないので、中間申告は不要です。サンプル株式会社も、開業1年目は中間申告がなく、2年目以降、前期の税額が20万円を超えていれば、中間申告が必要になる、というイメージです。なお、中間申告は、法人税だけでなく、地方税や消費税にもあります。中間で前払いした分は、確定申告のときに、年間の税額から差し引いて精算します。
なぜ中間申告があるのでしょうか。一つは、国が1年分の税金を、年1回ではなく2回に分けて受け取ることで、税収を安定させるため。もう一つは、会社にとっても、納税が年1回にまとまるより、半分ずつのほうが、資金繰りの負担をならせるためです。とはいえ、前期は黒字でも今期は業績が落ちている、という場合は、前期の半分を前払いするのが重く感じることもあります。そんなときは、半年分を実際に計算する「仮決算」を選べば、今期の実態に合った中間納付にできます。
6. 総まとめ:サンプル株式会社の申告書が完成するまで
最後に、全13回を振り返りましょう。サンプル株式会社(Web制作業・資本金300万円・3月決算)の申告書が、どう完成したのかをたどると、これまでの学びが一本につながります。
- 決算(第1〜2回): 1年を締めて、当期純利益 約500万円が確定。
- 申告調整(第3〜6回): 利益に、損金にならない法人税・交際費などを加算し、受取配当などを減算。益金・損金、減価償却、役員給与・交際費のルールを使って調整。
- 別表四・五(一)(第7〜8回): 別表四で課税所得 585万円 を確定し、留保のズレを別表五(一)で翌期へ繰り越し。
- 税額計算(第9回): 課税所得585万円に税率(800万円以下15%)をかけ、法人税額 約88万円。税額控除を引き、地方法人税を加える。これを別表一にまとめる。
- 主要な別表(第10回): 同族会社の別表二、税金の納付状況の別表五(二)などを添えて、申告書の束が完成。
- 地方税(第11回): 法人住民税・事業税・特別法人事業税を計算。国税と合わせた実効税率は、中小でおおむね約30〜35%。
- 繰越欠損金(第12回): 赤字の年があれば、将来の黒字と相殺。
- 申告・納付(第13回): e-TaxとeLTAXで申告し、期限(5月31日)までに納付。
こうして、1年間の利益が、税金として確定し、納付されるまでの全体像が、すべてつながりました。ここまで読んでくださった方は、中小企業の法人税申告の流れを、自分の言葉で説明できるようになっているはずです。あとは、それぞれの書類を実際に書いてみるだけ。具体的な書き方は、これから公開していく実務講座で、一つずつ丁寧に扱っていきます。
もちろん、すべてを自分でやる必要はありません。取引が増えてきたり、判断に迷う論点が出てきたりしたら、税理士などの専門家に任せるのも、立派な選択です。大切なのは、丸投げにせず、「いま会社の数字がどうなっていて、どんな税金がかかるのか」を、自分でも理解しておくこと。その土台があれば、専門家とのやりとりも、ぐっと実りあるものになります。この基礎講座が、その土台づくりに役立てば嬉しく思います。
まとめ:第13回(最終回)のポイント
- 確定申告・納付の期限は、事業年度終了日の翌日から2か月以内(3月決算→5月31日)。申告と納付は同じ日。
- 電子申告は、国税がe-Tax、地方税がeLTAX。大法人は義務、中小は任意だが推奨。
- 納付はキャッシュレスが便利(ダイレクト納付・ネットバンキング・クレジットカード・スマホアプリなど)。納付書が届かなくても納付は必要。
- 前期の法人税額が20万円超なら、年の途中(3月決算→11月末)に中間申告。設立1年目は不要。
- 年間スケジュールの土台は、日々の経理(記帳)。
- 全13回で、決算から申告・納付までの法人税の全体像が完成。
全13回の「法人税の基礎講座」は、これで完結です。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。この基礎シリーズが、あなたの会社の数字を、少しでも身近で、手ごたえのあるものにできていれば嬉しく思います。ここから先は、各テーマをさらに掘り下げる実務講座・理論講座を、順次公開していきます。まずは、申告の実務に直結する「別表の書き方」や「e-Taxの手順」から、ぜひお役立てください。
基礎で全体像をつかみ、実務で手を動かし、理論で「なぜ」を深める――この3つがそろえば、法人税は「なんとなく怖いもの」から「自分で扱えるもの」へと変わっていきます。会社の数字と、これからも長く付き合っていくための、確かな一歩になればと願っています。
- 前回:【法人税の基礎講座⑫】繰越欠損金とは?赤字の繰り越しをわかりやすく
- (基礎講座は今回で完結。ここから先は実務講座・理論講座へ)
あわせて読みたい
実際に自分で申告してみたい方は、こちらの実務講座もどうぞ。
- 【法人税の実務講座③】e-Taxで法人税を申告する手順をわかりやすく
- 【法人税の実務講座⑦】法人税を自分で申告する手順|必要書類まとめ
※本記事は、一般的な情報を分かりやすくまとめたものです。会計・税務の具体的な取り扱いは状況により異なります。税制改正や各システムの仕様変更により内容が変わる場合もありますので、正確な情報は国税庁・e-Tax・eLTAXのサイト等でご確認いただくか、専門家へご相談ください。