【法人税の基礎講座⑪】法人住民税・事業税とは?地方税の申告をやさしく

前回(第10回)までで、国税である法人税・地方法人税と、申告書をかたちづくる別表を学んできました。サンプル株式会社の国税の申告は、ひととおり見えています。

でも、会社が納める税金は、国に納める法人税だけではありません。会社は、事業所のある都道府県や市町村にも、税金を納めます。これが「地方税」です。第11回の今回は、この地方税――法人住民税法人事業税(+特別法人事業税)を取り上げます。会社の利益にかかる税金の全体像が、ここで完成します。

目次

1. 地方税とは ― 会社の利益にかかる「もう一つの世界」

法人税と地方法人税は、国に納める「国税」でした。これとは別に、会社は、自分の事業所がある都道府県・市町村に納める税金があります。これが地方税です。主なものは、次の2つ(実際には3つ)です。

  • 法人住民税(都道府県民税・市町村民税)… 地域社会の一員として納める「会費」のような税。
  • 法人事業税 … その地域で事業を営むことに対して納める税。これにセットで「特別法人事業税」がかかります。

なぜ、国だけでなく地方にも税金を納めるのでしょうか。会社は、国の制度の中で活動すると同時に、特定の地域に事業所をかまえ、その地域の道路・上下水道・消防・警察といった行政サービスを使いながら事業をしています。だから、国に納める法人税とは別に、その地域に対しても応分の負担をする――これが地方税の考え方です。逆に言えば、複数の都道府県や市町村に事業所がある会社は、それぞれの自治体に、従業員数などの基準で按分して地方税を納めます。本記事では、まず1つの自治体だけに事業所がある、シンプルな中小企業を前提に説明します。

法人税・法人住民税・法人事業税は、まとめて「法人税等」と呼ばれます。決算書でも、これらは「法人税、住民税及び事業税」という一つの科目でまとめて表示されます。会社の利益には、国税と地方税の両方がかかる――まずはこの全体像を、下の図でつかんでください。

会社の利益にかかる税金の全体像:国税(法人税は所得×15%/23.2%、地方法人税は法人税額×10.3%、2026年4月からの防衛特別法人税)と地方税(法人住民税=均等割〈赤字でもかかる・最低年7万円〉+法人税割〈法人税額×7.0%〉、法人事業税=所得割3.5/5.3/7.0%+特別法人事業税〈事業税×37%〉)に分かれ、これらを合わせた負担割合が実効税率〈約30〜35%〉になることを示す。

▲ 会社の利益にかかる税金の全体像を示した図。国税(法人税・地方法人税・防衛特別法人税)と地方税(法人住民税=均等割+法人税割/法人事業税=所得割+特別法人事業税)に分かれ、これらを合わせた負担割合が実効税率(約30〜35%)になることを表す。

2. 法人住民税 ― 「均等割」と「法人税割」の二階建て

法人住民税は、都道府県に納める「都道府県民税」と、市町村に納める「市町村民税」の2つに分かれます(東京23区だけは特例で、まとめて「都民税」として納めます)。そして、そのどちらも、「均等割」と「法人税割」という2つの部分からできています。二階建ての構造です。

均等割 ― 赤字でもかかる定額部分

均等割は、会社の利益とは関係なく、会社の規模(資本金等の額・従業員数)で決まる定額の税金です。標準税率では、資本金1,000万円以下で従業員50人以下の会社の場合、都道府県民税2万円+市町村民税5万円で、年7万円になります。規模が大きい会社ほど、この額は増えていきます。たとえば、資本金が1,000万円を超えると均等割は一段上がり(地域や従業員数によりますが、年18万円ほどになる例もあります)、さらに資本金が大きくなるほど高くなります。均等割は、都道府県民税では資本金等の額で、市町村民税では資本金等の額と従業員数で区分されていて、会社の規模に応じて段階的に決まる仕組みです。

ここで、いちばん大事なポイントがあります。均等割は、赤字でもかかるのです。法人税は、利益がなければゼロでした。けれども均等割は、利益が出ていなくても、会社が存在している限り、原則として毎年かかります。「会社という看板を掲げて活動するための会費・場所代」のようなものだと考えるとわかりやすいでしょう。創業まもない時期や、業績が苦しい年でも、最低でも年7万円ほどはかかる――これは、資金繰りを考えるうえで、必ず頭に入れておきたい点です。

法人税割 ― 法人税額に応じてかかる部分

もう一つの法人税割は、その名のとおり、法人税額に応じてかかる部分です。標準税率は、都道府県民税1.0%+市町村民税6.0%で、合わせて法人税額の7.0%です。こちらは法人税額をもとに計算するので、黒字で法人税が出ている会社だけにかかります。赤字で法人税がゼロなら、法人税割もゼロです。

つまり法人住民税は、「赤字でもかかる均等割」と「黒字のときだけかかる法人税割」の組み合わせ、というわけです。なお、自治体によっては標準税率より高い「超過税率」を定めている場合もありますが、資本金1億円以下で法人税額が年1,000万円以下の中小企業は、多くの自治体で標準税率が適用されます。

3. 法人事業税 ― 事業を営むことへの地方税

法人事業税は、会社がその都道府県で事業を営むこと自体に対して課される地方税です。道路や港湾といった公共サービスを使って事業をしているのだから、その費用を負担しましょう、という考え方の税金です。

資本金1億円以下の中小企業の場合、法人事業税は「所得割」――つまり所得に税率をかけたものだけで計算します。標準税率は、所得の大きさに応じて、次のように段階的になっています。

  • 所得のうち年400万円以下の部分 … 3.5%
  • 年400万円を超え800万円以下の部分 … 5.3%
  • 年800万円を超える部分 … 7.0%

法人税の2段階の税率と同じように、所得が大きくなるほど高い税率がかかる仕組みです。そして法人事業税も、所得割だけで計算する中小企業の場合、赤字ならゼロになります。均等割のように赤字でもかかる、ということはありません。

なお、資本金が1億円を超える大企業には、所得とは別に、給与や資本の規模などにも課税する「外形標準課税」(付加価値割・資本割)があり、赤字でも一定の税がかかります。ただし、これは中小企業には関係のない話です。

もう一つ、法人事業税には大事な特徴があります。それは、法人事業税は損金になるという点です。法人税や法人住民税は損金になりませんでしたが、事業税は損金に算入できます。

具体的には、ある年の法人事業税は、その税金を実際に納めた年(原則として翌期)の損金になります。つまり、いったん払った事業税が、将来の所得を減らし、その分の法人税などを軽くしてくれるわけです。法人税や住民税には、こうした効果はありません。同じ「会社が納める税金」でも、損金になるかどうかで、長い目で見た負担感が変わってきます――地味ですが、知っておくと得をする知識です。この違いは、あとで説明する実効税率にも関わってきます。

4. 特別法人事業税 ― 事業税に上乗せされる国税

法人事業税には、セットで「特別法人事業税」というものがかかります。これは、法人事業税の所得割額に税率をかけて計算する税金で、資本金1億円以下の会社の場合、税率は一律37%です。

ややこしいのは、名前に「事業税」とついていますが、これは国税だという点です。地域ごとの税収の偏りをならすために、いったん都道府県が事業税と一緒に集めて国へ渡し、国が地方へ配り直す、という仕組みになっています。第9回で学んだ地方法人税と、よく似た趣旨の税金です。実務上は、法人事業税とセットで、同じ申告書で一緒に申告・納付するので、「事業税の一部」と感じておけば十分です。

なお、この特別法人事業税は、2019年10月に、それまでの「地方法人特別税」に代わって設けられたものです。比較的新しい税ですが、中小企業にとっては「事業税にセットでかかる国税」と押さえておけば、まず困りません。

5. ケーススタディ:サンプル株式会社の地方税

おなじみのサンプル株式会社で、地方税をざっくり計算してみましょう。

サンプル株式会社(おさらい) – Web制作業/資本金300万円(中小企業)/3月決算/課税所得585万円/法人税額 約88万円

法人住民税 – 均等割:資本金300万円・少人数なので、年約7万円。 – 法人税割:法人税額 約88万円 × 7.0% = 約6万円。 – 合わせて、法人住民税は約13万円ほどです。

法人事業税(所得割) 課税所得585万円を、段階の税率で計算します。 – 400万円 × 3.5% = 14万円 – (585万円 − 400万円)= 185万円 × 5.3% = 約9.8万円 – 合計で、法人事業税は約24万円ほどです。

特別法人事業税 – 事業税の所得割額 約24万円 × 37% = 約9万円

これらを合計すると、地方税はおおよそ約46万円になります。さらに、第9回で計算した国税(法人税 約88万円+地方法人税 約9万円)と合わせると、サンプル株式会社の税金は、ぜんぶで約143万円ほど。所得585万円に対して、ざっくり4分の1弱が税金、という感覚です。会社の税金は、国税だけを見ていると実際の負担を見誤ります。地方税まで含めて初めて、本当の負担が見えてくるのです。

6. 実効税率と、申告のまとめ

このように、会社の利益には、国税(法人税・地方法人税)と地方税(住民税・事業税・特別法人事業税)が、まとめてかかります。これらを全部合わせた、実際の負担割合のことを「実効税率」といいます。

中小企業の実効税率は、標準税率でおおむね約30〜35%とされます。ただし、これは所得が大きい部分での割合で、サンプル株式会社のように所得が800万円以下のうちは、軽減税率などが効いて、実際の負担割合は20%台にとどまります。所得が増えて800万円を超えていくと、負担割合は30%台へと上がっていきます。

ちなみに、実効税率は、各税率を単純に足し算したものではありません。先ほど触れたとおり、事業税は損金になるため、その分だけ翌期以降の負担が軽くなる効果があり、それを織り込んで計算します。実効税率の詳しい計算方法は、別の記事(理論講座)で扱います。ここでは「国税と地方税を全部合わせると、中小でだいたい3割前後」という肌感覚をつかんでおけば十分です。

この実効税率の感覚は、経営の場面で役に立ちます。たとえば「あと100万円、利益を増やしたい」と考えたとき、その利益のうち3割ほどは税金で出ていく、と分かっていれば、手元に残るお金を正しく見積もれます。価格の決め方、設備投資や賃上げの判断、納税資金の準備など、さまざまな場面で「税引き後にいくら残るか」を考える土台になるのです。

なお、国税と同じように、地方税にも中間申告の仕組みがあります。前の事業年度の税額が一定額を超えると、年の途中で税金の一部を前払いします。前期が黒字で納税していた場合、今期が赤字でも中間の納付書が届くことがあるので、資金繰りの面では注意が必要です。とくに、赤字でもかかる均等割と、この中間申告は、利益が出ていない時期の会社にとって、見落としがちな負担です。「赤字だから税金はゼロ」と安心せず、最低限かかる地方税を、あらかじめ見込んでおきましょう。

最後に、地方税の申告について。法人住民税・法人事業税・特別法人事業税は、都道府県に納める分を「第六号様式」という申告書で、まとめて申告・納付します。市町村に納める分は「第二十号様式」で別に申告します(東京23区は、都税事務所にまとめて申告します)。申告と納付の期限は、国税と同じく、事業年度が終わった日の翌日から2か月以内。3月決算のサンプル株式会社なら、5月31日です。地方税も、オンラインの電子申告システム「eLTAX(エルタックス)」に対応しています。具体的な申告書の書き方は、実務講座で扱います。

まとめ:第11回のポイント

  • 会社は、国税(法人税・地方法人税)とは別に、事業所のある自治体に地方税を納める。主なものは法人住民税法人事業税(+特別法人事業税)。
  • 法人住民税は「均等割」+「法人税割」の二階建て。均等割は規模で決まる定額(最低年7万円〜)で赤字でもかかる。法人税割は法人税額の7.0%(標準)で黒字のときだけ。
  • 法人事業税は所得に応じた段階税率(中小は所得割のみ/3.5%・5.3%・7.0%)。赤字ならゼロ。損金になる点が法人税・住民税と違う。
  • 特別法人事業税は事業税の所得割額の37%(中小)。名前は事業税だが国税。事業税とセットで申告。
  • 国税と地方税を合わせた実効税率は、中小でおおむね約30〜35%(所得が小さいうちは20%台)。
  • 申告・納付は事業年度終了日の翌日から2か月以内。道府県分は第六号様式、市町村分は第二十号様式

会社の利益にかかる税金の全体像が、これで見えました。あとは、毎年の利益が黒字とは限りません。赤字の年は、どうなるのでしょうか。次回(第12回)は、過去の赤字を将来の黒字と相殺できる「繰越欠損金」を取り上げます。赤字を無駄にしないための、青色申告の大きなメリットです。

  • 前回:【法人税の基礎講座⑩】法人税の別表とは?主要な別表の役割をまとめて解説
  • 次回:【法人税の基礎講座⑫】繰越欠損金とは?赤字の繰り越しをわかりやすく

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  • 【法人税の理論講座⑦】法人税の実効税率とは?計算方法をわかりやすく

※本記事は、一般的な情報を分かりやすくまとめたものです。地方税の税率や均等割の額は自治体により異なる場合があり、税制改正により内容が変わることもあります。正確な情報は、お住まいの都道府県・市町村や総務省のサイト等でご確認いただくか、専門家へご相談ください。

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