【法人税の基礎講座④】益金と損金とは?収益・費用との違いをわかりやすく

前回(第3回)は、課税所得が「当期純利益 ± 申告調整」で計算されること、そして調整には加算・減算の4パターンがあることを見ました。その調整は、すべて「益金」と「損金」という2つの言葉を軸に動いています。

第4回の今回は、その土台となる「益金と損金」を、じっくり掘り下げます。会計の「収益・費用」と、どこが同じで、どこが違うのか。ここがわかると、なぜ申告調整が必要なのかが、心から納得できるようになります。

目次

1. 益金・損金は「税金版の、収益・費用」

まず、言葉の対応関係をおさらいします。

【会計】 収益 - 費用 = 利益
【税金】 益金 - 損金 = 課税所得

  • 益金:税金の計算での「収入」。会計の「収益」に対応。
  • 損金:税金の計算での「経費」。会計の「費用」に対応。

つまり、益金と損金は、いわば「税金版の、収益・費用」です。そして、会計の収益・費用と、税金の益金・損金は、大部分は同じです。売上は益金になり、仕入は損金になる。ほとんどの取引は、会計でも税金でも同じ扱いになります。

問題は、その「ほとんど」からはみ出す、一部の例外です。この例外を、税法では「別段の定め」と呼びます。

2. 「別段の定め」が、ズレを生む

「別段の定め」とは、ひとことで言えば、「会計とは違う、税金独自のルール」のことです。

会計上は収益・費用として処理していても、税法が「これは益金・損金にしない」と別に定めていれば、そのルールが優先されます。逆に、会計上は計上していなくても、税法が「これは益金・損金にする」と定めていれば、それに従います。

益金 = 会計の収益 ± 別段の定め
損金 = 会計の費用 ± 別段の定め

この「別段の定め」によるズレを、申告書の上で調整するのが、前回学んだ申告調整です。だからこそ、「益金・損金」を理解することが、申告調整の理解に直結するのです。

なぜ、わざわざ税金独自のルールを設けるのでしょうか。理由は、第2回でも触れたとおり、会計と税金で目的が違うからです。会計は「会社の実態を正しく伝える」ことが目的なので、経営者の見積もりや判断が入ります。一方、税金は「公平に課税する」ことが目的なので、会社ごとの判断で税額が変わらないよう、ルールを厳格にしているのです。

3. 益金の基本 ― 「無償」でも益金になる

まず、益金から見ていきます。

益金とは、ざっくり言えば、商品の販売やサービスの提供などで得た収入のことです。ここまでは会計の収益とほぼ同じです。

ただし、税金ならではの、おもしろい特徴があります。それは、お金をもらっていない「無償」の取引でも、益金になることがあるという点です。

たとえば、自社の商品を、知り合いの会社にタダであげたとします。会計では、売上は立ちません(お金をもらっていないので)。しかし税法では、「本来なら売れたはずの金額」を益金として扱うことがあります。

なぜでしょうか。もし「タダであげれば課税されない」とすると、税金を逃れるために、わざと安く譲るといった操作ができてしまいます。それを防ぎ、公平に課税するために、無償の取引でも、時価(本来の価値)で益金を認識する、という考え方をとっているのです。これも「公平な課税」という目的から来るルールです。

身近な例で言えば、社長個人に会社の資産を安く売ったり、関連会社へ無利息でお金を貸したりした場合にも、似た考え方が出てきます。「本来受け取るべきだった金額」との差額が、益金として扱われることがあるのです。会社のお金の動きは、たとえ身内との間でも、時価を基準に考える――これが税金の世界の基本姿勢です。

益金は「いつ」計上するのか

益金を考えるとき、金額と並んで大切なのが「タイミング」です。同じ売上でも、それを「今期の益金にするか、来期にするか」で、その年の課税所得が変わります。

税法では、原則として、商品を引き渡した時点や、サービスを提供し終えた時点で益金を計上します。これを「実現主義」「引渡基準」などと呼びます。お金を受け取ったかどうかではなく、「引き渡したか・提供し終えたか」で判断するのがポイントです。

たとえば、3月決算の会社が、3月中に商品を納品し、入金は4月だったとします。この場合、売上(益金)は、納品した3月、つまり今期に計上します。「お金は来期に入るから来期の売上」ではありません。ここを間違えると、売上の計上もれ(第3回で触れた加算調整の原因)につながります。この「いつ計上するか」の考え方は、損金の債務確定主義と表裏一体の関係にあります。

4. 損金の基本 ― 認められる費用には条件がある

次に、損金です。

損金とは、ざっくり言えば、事業のためにかかった費用のことです。仕入、人件費、家賃、水道光熱費など、多くの費用は、そのまま損金になります。ここも会計の費用とほぼ同じです。

ただし、税法では、損金として認められるために、おおむね次の3つの条件を満たすことが求められます。

  • 原価:売上に直接対応する原価(仕入など)。
  • 費用:事業に必要な費用で、その事業年度に対応するもの。
  • 損失:災害などで生じた損失。

特に費用については、「債務が確定していること」が重視されます。これを「債務確定主義」といいます。「将来、たぶん払うことになるだろう」という見込みの段階では、まだ損金にできず、「実際に支払う義務が固まった」時点で損金になる、という考え方です。

会計では、将来に備えて費用を多めに見積もって計上すること(引当金など)が認められますが、税法では、こうした見積もりの費用を制限しています。見積もりで税額が変わると、公平でなくなるからです。これが、損金不算入(前回の加算調整)が生じる、大きな原因の一つです。

実務で自分の会社の損金を確認するときは、「この費用は、本当にこの事業年度のものか」「支払う義務は、もう固まっているか」という2点を意識すると、判断しやすくなります。たとえば、来期分の家賃を前払いした場合、その前払い分は今期の損金にはなりません(前払費用として翌期に回します)。逆に、今期中にサービスを受けたのに支払いが翌期になる場合は、義務が固まっていれば今期の損金にできます(未払費用)。「お金を払ったかどうか」ではなく、「いつのための費用で、義務が固まっているか」で考えるのがポイントです。

損金で注意したい、代表的な費用

損金の中には、扱いに注意が必要な費用がいくつかあります。代表的なものを知っておきましょう。

  • 税金(租税公課):税金にも、損金になるものと、ならないものがあります。固定資産税や自動車税、印紙税などは損金になります。一方、法人税・住民税そのものや、延滞税・加算税といったペナルティは損金になりません。「事業の費用としての税金」は損金、「もうけにかかる税金やペナルティ」は損金にならない、と整理すると分かりやすいです。
  • 寄附金:国や地方公共団体への寄附などは全額が損金になりますが、それ以外の一般の寄附は、一定の限度額を超えた分が損金になりません。際限なく損金にできると、税金の公平が崩れるためです。
  • 貸倒れ(かしだおれ):取引先が倒産するなどして、売掛金が回収できなくなった損失です。一定の要件を満たせば損金になりますが、「回収できなさそう」という見込みだけでは認められず、法律上の整理など、客観的な事実が求められます。ここにも、見積もりを制限する税法の姿勢が表れています。

これらは、第6回(役員給与・交際費)とあわせて、中小企業の申告で実際によく出てくる項目です。

5. 会計と税金がズレる、代表的なパターン

ここまでをまとめると、益金・損金が会計の収益・費用とズレるのは、主に次のような場面です。受験を考えている方は、この分類で整理すると覚えやすくなります。

益金まわりのズレ – 無償取引でも益金になる(時価で認識) – 受取配当は益金にならない部分がある(二重課税の排除) – 法人税の還付金は益金にならない

なお、受取配当が「全額」ではなく「一部」しか益金不算入にならないのは、配当を生み出すための借入金の利子などを考慮しているためです。株式の保有割合などによって、益金から外せる割合が変わります。「二重課税を避ける」という考え方が基本にありつつ、細かい調整が入っている、と知っておくとよいでしょう。

損金まわりのズレ – 法人税・住民税そのものは損金にならない – 交際費・役員給与は、一定のルールを超えると損金にならない – 減価償却費は、税法の限度を超えた分は損金にならない – 見積もりの費用(一部の引当金など)は損金にならない

これらの「ズレ」を、申告書(別表四)で加算・減算するのが、法人税計算の中心の作業です。一つひとつの項目は、第5回(減価償却)、第6回(役員給与・交際費)で、さらに詳しく見ていきます。

6. ズレには「いつか戻る」ものと「戻らない」ものがある

もう一段、深く理解したい方へ。会計と税金のズレには、性質の違う2種類があります。これは第3回で触れた「留保」と「社外流出」にもつながる、大切な考え方です。

① 一時的なズレ(いつか戻る)

今年はズレていても、将来の年度で解消されるズレです。たとえば減価償却。会計で多めに費用にして、税法の限度を超えた分は、今年は損金になりません(加算)。しかし、その分は翌年以降に損金として認められます(減算)。つまり、ズレは時間が経てば帳消しになります。トータルで見れば、損金になる総額は同じです。これが第3回で出てきた「留保」にあたります。

② 永久的なズレ(戻らない)

一方、二度と解消されないズレもあります。たとえば交際費の損金にならない部分。これは今年も将来も、損金として認められません。永久に税金の世界から締め出されます。これが「社外流出」にあたります。

この2つを区別できると、申告調整の意味が、より立体的に見えてきます。「このズレは、いつか戻るのか、戻らないのか」――そう問いかける習慣をつけると、別表四(第7回)や別表五(一)(第8回)の理解が一気に進みます。

7. ケーススタディ:サンプル株式会社の益金・損金

サンプル株式会社で考えてみましょう。

サンプル株式会社(おさらい) – Web制作業/資本金300万円/3月決算/当期純利益 約500万円

この会社の1年間を、益金・損金の視点で見ると、こうなります。

  • 益金になるもの:Web制作の売上、コンサルティングの報酬など。ほとんどは会計の収益と同じ。
  • 損金になるもの:外注費、従業員の給与、事務所の家賃、ソフトの利用料など。ほとんどは会計の費用と同じ。

ここまでは、会計と税金でほぼ一致します。問題は「ズレる部分」です。前回の例で見たように、

  • 会計で費用にした法人税・住民税(→ 損金にならない=加算)
  • 減価償却費のうち、税法の限度を超えた分(→ 損金にならない=加算)

といった項目が、損金から外れます。逆に、

  • 受け取った配当の一部(→ 益金にならない=減算)

が、益金から外れます。

こうして「会計の利益500万円」を、「税金の益金・損金」の考え方で調整し直すと、前回計算したように、課税所得585万円になる、というわけです。益金・損金を理解すると、申告調整の一つひとつが「なぜそうなるのか」まで腑に落ちます。

ここで大切なのは、サンプル株式会社の場合、ほとんどの取引は会計と税金で一致している、という点です。Web制作の売上も、外注費も、給与も、家賃も、会計の収益・費用がそのまま益金・損金になります。ズレているのは、法人税・住民税、減価償却の超過分、受取配当といった、ごく一部の項目だけです。「全部を一から計算し直す」のではなく、「ズレる一部だけを見つけて調整する」――これが、第2回でお話しした「利益を出発点にする」効率的な計算の正体です。益金・損金という土台を理解した今、その意味が、より深く分かるはずです。

まとめ:第4回のポイント

  • 益金・損金は、いわば「税金版の、収益・費用」。大部分は会計と同じ。
  • 違いを生むのが「別段の定め」(税金独自のルール)。これが申告調整の原因。
  • 益金は、無償取引でも時価で認識することがある(公平な課税のため)。
  • 損金は、債務確定主義が基本。見積もりの費用は制限される。
  • 会計と税金のズレを、別表四で加算・減算するのが、法人税計算の中心。

益金・損金の土台が固まりました。次回(第5回)からは、ズレが生じる代表的な項目を、一つずつ具体的に見ていきます。まずは「減価償却」。高い買い物をしたとき、その費用をどう扱うのか。税法ならではのルールを、わかりやすく解説します。

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  • 【法人税の実務講座①】別表四の書き方・記入例をわかりやすく解説

※本記事は、一般的な情報を分かりやすくまとめたものです。会計・税務の具体的な取り扱いは状況により異なります。正確な情報は国税庁のサイト等でご確認いただくか、専門家へご相談ください。

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