【法人税の基礎講座③】課税所得とは?申告調整(加算・減算)の仕組み

前回(第2回)は、法人税の申告が「決算書の当期純利益」から始まること、そして利益と課税所得は少しズレることを確認しました。

第3回の今回は、いよいよこの講座の心臓部に入ります。テーマは「申告調整」。会計の利益を、税金の課税所得へと変える、その調整の正体です。ここが分かると、法人税の計算の8割が見えてきます。少し専門的になりますが、一つずつ、丁寧に進みましょう。

目次

1. おさらい ― 課税所得は「利益+調整」で作る

まず、前回までの要点をおさらいします。法人税がかかるのは「課税所得」であり、それは会計の利益を出発点に、調整を加えて計算するのでした。式で書くと、こうです。

課税所得 = 当期純利益 ± 申告調整

この「± 申告調整」の部分を、詳しく見ていくのが今回のテーマです。

調整には、利益に足す調整と、利益から引く調整の2方向があります。

  • 加算:利益に足す(→ 課税所得が増える)
  • 減算:利益から引く(→ 課税所得が減る)

そして、この加算・減算が、それぞれ2種類ずつ、合計4つのパターンに分かれます。この4つを理解することが、今回のゴールです。

2. その前に ― 「益金・損金」という言葉

申告調整を理解するには、税金の世界の2つの言葉を知っておく必要があります。「益金」と「損金」です。

  • 益金:税金の計算での「収入」にあたるもの。会計の「収益」に近いが、少し違う。
  • 損金:税金の計算での「経費」にあたるもの。会計の「費用」に近いが、少し違う。

つまり、

【会計】 収益 - 費用 = 利益
【税金】 益金 - 損金 = 課税所得

という対応関係です。会計の「収益・費用」に対応するのが、税金の「益金・損金」。ほとんど同じだけれど、一部が違う。その違いを調整するのが、申告調整なのです。

3. 4つの調整パターン(ここが核心)

では、その「違い」を4つに整理します。これが申告調整の全てです。表で全体像を掴んでから、一つずつ見ていきましょう。

方向調整の名前どんなとき
加算(足す)損金不算入会計では費用なのに、税金では損金にならない
加算(足す)益金算入会計では収益でないのに、税金では益金になる
減算(引く)益金不算入会計では収益なのに、税金では益金にならない
減算(引く)損金算入会計では費用でないのに、税金では損金になる

「不算入」「算入」という言葉がややこしいですが、考え方はシンプルです。「会計と税金で扱いが違うところを、税金に合わせる」——それだけです。順に見ます。

① 損金不算入(加算)― いちばん重要

会計では費用にしたのに、税金ではその費用を認めないケースです。費用として引いていた分を、税金の計算では「なかったこと」にするので、その分、利益に足し戻します。

この「損金不算入」が、4つの中で最も種類が多く、最も重要です。中小企業の申告調整は、ほとんどがこれだと言ってよいくらいです。代表例:

  • 法人税・住民税そのもの:会計では費用に見えても、税金の計算では損金になりません。
  • 交際費の一部:接待交際費は、一定額を超えると損金になりません(第6回で扱います)。
  • 減価償却の超過額:会計で計上した減価償却費が、税法の限度を超えた分(第5回で扱います)。
  • 役員給与の一部:ルールに合わない役員給与(第6回で扱います)。

なぜ、これらを損金として認めないのでしょうか。たとえば法人税は、「儲けにかかる税金」です。その税金を経費として引いてよいとすると、「経費が増える→儲けが減る→税金が減る→…」と堂々めぐりになってしまいます。だから、税金そのものは損金にしない、というルールになっています。交際費に限度があるのも、際限なく経費にされると課税の公平が保てないから、という理由があります。それぞれのルールには、課税の公平を守るという理由がある——そう考えると、丸暗記でなく、納得して覚えられます。

② 益金算入(加算)

会計では収益にしていないのに、税金では収入として扱うケースです。会計に表れていない収入を足すので、加算です。中小企業ではあまり多くありませんが、たとえば一定の場合の評価益などがあります。

③ 益金不算入(減算)

会計では収益にしたのに、税金では収入として扱わないケースです。収益から外すので、利益から引きます(減算)。代表例:

  • 受取配当等:他社からもらった配当の一部。すでに相手の会社が税金を払った後のお金なので、二重課税を避けるため、益金から外します。
  • 法人税の還付金:払いすぎた税金が戻ってきたお金。もともと損金でなかった税金の戻りなので、益金にも入れません。

受取配当が益金不算入になる理由を、もう少し噛み砕きます。配当は、相手の会社が法人税を払ったあとの利益から支払われます。それを受け取った側でまた益金に入れて課税すると、同じ儲けに二回課税することになってしまいます。これを避けるために、受け取った配当の一定部分を、益金から外すのです。「二重課税の排除」という考え方は、税金の世界でくり返し出てくる大切な発想です。

④ 損金算入(減算)

会計では費用にしていないのに、税金では経費として認めるケースです。会計に表れていない経費を引くので、減算です。中小企業では多くありませんが、特定の場合の繰越欠損金(第12回で扱います)などが関わります。


この4つを、もう一度シンプルにまとめます。

課税所得  + 損金不算入 + 益金算入  (加算)   = 当期純利益
             - 益金不算入 - 損金算入  (減算)
         

会計の利益に、この4方向の調整を加減算すると、課税所得が出ます。この調整を実際に行う書類が「別表四」です(書き方は第7回)。

4. 「留保」と「社外流出」― もう一段の理解

ここで、受験を考えている方や、より深く理解したい方に向けて、一歩進んだ話をします。実務でも大切なポイントです。

加算・減算の調整は、さらに「留保」と「社外流出」に区分されます。

  • 留保:会計と税金のズレが、将来また解消されるもの。会社の中にお金が残っている。
  • 社外流出:会計と税金のズレが、もう二度と解消されないもの。お金が会社の外に出ていった。

たとえば、

  • 減価償却の超過額 → 今年は損金にならなくても、将来の年度で認められる。だから「留保」。
  • 交際費の損金不算入額 → 永久に損金として認められない。だから「社外流出」。

この区分は、今回扱った別表四と、第8回で扱う「別表五(一)」をつなぐ、大事なカギになります。今は「ズレには、いつか解消するもの(留保)と、永久に解消しないもの(社外流出)の2種類がある」と知っておけば十分です。

5. つまずきやすい、3つの誤解

申告調整を学ぶとき、多くの人がつまずく誤解を、先に解いておきます。

誤解1:「調整が多い=何か間違えている」ではない

会計の利益と税金の所得がズレるのは、前回お話ししたとおり、目的が違うので当たり前のことです。調整があること自体は、何も問題ありません。むしろ、必要な調整を漏らすほうが問題です。

誤解2:「加算すると損、減算すると得」とは限らない

加算すれば課税所得が増えて税金も増えますが、それは「ルール上そうなる」というだけで、得か損かの話ではありません。ルールに従って正しく調整することが、結果的に正しい納税につながります。無理に減算を増やそうとすると、誤った申告になってしまいます。

誤解3:「全ての費用が損金になる」わけではない

会計で費用として処理したものが、全てそのまま税金の経費(損金)になるわけではありません。とくに、法人税そのもの・交際費・役員給与などは、ルールによって損金にならない部分があります。「経費にしたから安心」ではなく、「税金のルールで損金になるか」を確認する視点が大切です。

6. ケーススタディ:サンプル株式会社の課税所得を計算する

では、サンプル株式会社で、実際に課税所得を計算してみましょう。

サンプル株式会社(おさらい) – Web制作業/資本金300万円/3月決算/当期純利益 約500万円

この会社に、次の事情があったとします。

  • 会計で費用にした法人税・住民税が、合わせて80万円あった(→ 損金不算入=加算)
  • 会計の減価償却費が、税法の限度を10万円超えていた(→ 損金不算入=加算)
  • 受け取った配当のうち、5万円が益金不算入になる(→ 減算)

これを式に当てはめます。

課税所得 = 当期純利益 500万円
          + 法人税・住民税(損金不算入) 80万円
          + 減価償却の超過額(損金不算入) 10万円
          - 受取配当等(益金不算入) 5万円
       = 585万円

当期純利益は500万円でしたが、申告調整の結果、課税所得は585万円になりました。会計の利益と、税金の所得が、きちんとズレているのが分かります。

※法人税・住民税を損金不算入として足し戻すあたりは、実際の別表四では「納税充当金」などを使ったやや複雑な処理になります。ここでは仕組みのイメージを掴むため、単純化しています。正確な記載方法は第7回で扱います。

この585万円に税率をかけて法人税額を計算するのが、次のステップです。第1回では課税所得を500万円と単純化していましたが、本当はこうして調整を加えた金額(585万円)を使う、というわけです。

なお、実際の中小企業では、申告調整の項目は意外と少なく、加算は「法人税・住民税」と「交際費」、減算は「繰越欠損金」くらい、というケースがほとんどです。4パターン全てを毎回使うわけではありません。「自分の会社には、どの調整が当てはまるか」を見極められれば、申告はぐっと身近になります。サンプル株式会社の例も、そうした典型的なパターンを想定したものです。

まとめ:第3回のポイント

  • 課税所得は「当期純利益 ± 申告調整」で計算する。
  • 申告調整は、加算(足す)と減算(引く)の2方向。
  • さらに4パターン:損金不算入・益金算入(加算)/益金不算入・損金算入(減算)
  • 中小企業でいちばん多いのは「損金不算入」(法人税・交際費・減価償却超過など)。
  • ズレには「留保(いつか解消)」と「社外流出(永久に解消しない)」の区分がある。
  • この調整を行う書類が「別表四」(書き方は第7回)。

申告調整の全体像が見えました。次回(第4回)は、この調整の土台となる「益金と損金の基本」を掘り下げます。そもそも何が益金で、何が損金なのか。会計の収益・費用と、どこがどう違うのか。一つずつ確認していきましょう。

  • 前回:法人税の基礎講座②「決算書から法人税申告へ」
  • 次回:法人税の基礎講座④「益金と損金とは?会計の収益・費用との違い」

あわせて読みたい

申告調整や別表四について、さらに詳しく知りたい方は、こちらもどうぞ。

  • 【法人税の理論講座⑥】益金不算入・損金不算入とは?具体例で解説
  • 【法人税の実務講座①】別表四の書き方・記入例をわかりやすく解説

※本記事は、一般的な情報を分かりやすくまとめたものです。会計・税務の具体的な取り扱いは状況により異なります。正確な情報は国税庁のサイト等でご確認いただくか、専門家へご相談ください。

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