【法人税の理論講座①】法人税・所得税・消費税の違いをわかりやすく解説

法人税、所得税、消費税。ニュースでもよく耳にする3つの税金ですが、それぞれ何が違うのか、説明できるでしょうか。「会社が払うのが法人税で、個人が払うのが所得税」――間違いではありませんが、それだけでは、なぜ消費税は赤字でも払うのか、なぜ法人化すると節税になることがあるのか、といった疑問に答えられません。

この3つは、「誰にかかるのか」「何に対してかかるのか」「税率はどう決まるのか」という3つの軸で並べると、違いがはっきり見えてきます。今回は、その骨格を押さえていきましょう。

目次

1. 3つの税を、3つの軸で並べる

3つの税の比較。法人税=法人に・所得に・比例税率。所得税=個人に・所得に・累進税率。消費税=事業者が納めるが負担者は消費者・取引に・一律の税率。

▲ 法人税・所得税・消費税を3つの軸で比較した図。法人税は法人に対して所得(利益)を対象に比例税率で課され、所得税は個人に対して所得を対象に累進税率で課され、消費税は取引を対象に課されて事業者が納めるものの実際の負担者は消費者である点を表す。

まず、全体像を整理します。

法人税は、会社(法人)の所得に対してかかる税金です。所得とは、ざっくり言えば1年間の儲け。税率は所得の大きさによらず一定(比例税率)で、原則23.2%です。

所得税は、個人の所得に対してかかる税金です。こちらの税率は、所得が大きくなるほど段階的に上がる累進税率で、5%から45%までの7段階になっています。

消費税は、商品やサービスの取引に対してかかる税金です。ここが決定的に違うところで、消費税を実際に負担するのは消費者ですが、国に納めるのは事業者です。負担する人と納める人が違う――こういう税金を間接税といいます。法人税と所得税は、負担する人が自分で納めるので直接税です。

この「直接税か間接税か」という区別が、3つの税を理解する最初の分かれ道になります。法人税と所得税は同じ仲間(所得にかかる直接税)で、消費税だけが別の仲間(取引にかかる間接税)なのです。

2. 法人税 ― 法人の所得に、比例税率で

法人税は、会社の1年間の所得に対してかかります。所得は、会計上の利益をもとに、税務のルールで調整して計算します(実務講座①の別表四で見た調整です)。

税率の特徴は、所得がいくら増えても税率が上がらないことです。原則23.2%で、これは所得が1,000万円でも10億円でも同じ。ただし、中小企業には優遇があり、資本金1億円以下の中小法人は、年800万円以下の所得部分について15%の軽減税率が使えます。800万円を超える部分は23.2%です。

この軽減税率は恒久的な制度ではなく、期限つきの特例です。現在は令和9年(2027年)3月31日までに開始する事業年度まで適用されることになっています。また、近年の改正で、所得が10億円を超える事業年度は軽減税率が17%になるなどの見直しも入りました。中小企業の大半には関係しませんが、不動産の売却益などで一時的に所得が膨らむ年は注意が必要です。

なお、会社が国に納める税金は、法人税だけではありません。地方法人税(名前に「地方」とありますが国税です)が加わり、さらに令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度からは、防衛特別法人税という新しい付加税も始まりました。これは法人税額をもとに計算される上乗せの税金で、法人税額から年500万円を差し引いた金額に4%を掛けて計算します。500万円の基礎控除があるため、多くの中小企業では税額がゼロになりますが、税額がゼロでも申告書の提出は必要です。

3. 所得税 ― 個人の所得に、累進税率で

所得税は、個人の1年間(1月1日から12月31日)の所得にかかります。法人税との最大の違いは、税率が累進的だという点です。

所得税の税率は、所得が増えるほど段階的に上がり、5%から45%まで7段階あります。ここに住民税(概ね10%)が加わるので、所得が大きい人ほど負担率が高くなります。「たくさん稼いだ人が、より多く負担する」という所得再分配の考え方が、税率の形にそのまま表れているわけです。

ここで、よくある誤解を解いておきましょう。「稼ぎすぎると税率が上がって、かえって手取りが減る」という話を聞いたことがあるかもしれません。これは誤りです。所得税は超過累進税率といって、所得全体に高い税率がかかるのではなく、一定額を超えた部分にだけ高い税率がかかる仕組みだからです。たとえば税率が20%から23%に上がる境目を1円超えたとしても、23%がかかるのはその1円だけ。それまでの部分は元の税率のままです。だから、所得が増えて手取りが減ることは起きません。

法人税と所得税の税率:法人税は所得が増えても税率が一定(比例)で最高23.2%。所得税は所得が増えると税率が上がる(累進)で最高45%+住民税約10%。この差が法人化の判断材料になる。

▲ 法人税と所得税の税率構造の違いを示した図。法人税は所得が増えても税率が変わらない比例税率で最高23.2%であるのに対し、所得税は所得が増えるほど税率が上がる累進税率で最高45%に住民税が加わること、この構造の違いが法人化を検討する際の判断材料になることを表す。

一方、法人税は比例税率で、上限が23.2%。ここに大きな差が生まれます。個人事業主として稼ぐと最大45%(住民税を含めるとさらに)なのに対し、法人なら23.2%が上限。所得が一定額を超えると、法人のほうが税率が低くなる――これが、事業が大きくなると法人化が選択肢になる理由のひとつです。

ただし、税率だけで決めるのは危険です。法人には、赤字でも払う住民税の均等割があり(実務講座⑭)、社会保険への加入義務があり、決算・申告の手間とコストもかかります。法人から自分に給料を出せば、そこに所得税がかかります。税率の比較は判断材料のひとつにすぎない、と考えておきましょう。

4. 消費税 ― 取引にかかり、預かって納める

消費税は、3つの中でいちばん性格が違います。

かかる対象が「所得」ではなく「取引」です。商品を売ったりサービスを提供したりするたびに、その金額に対して消費税がかかります。標準税率は10%(食料品などは軽減税率8%)です。

そして、負担する人と納める人が違います。消費税を負担しているのは、最終的に商品を買った消費者。事業者は、売上のときに消費者から消費税を預かり、仕入や経費で自分が支払った消費税を差し引いて、その差額を国に納めます。

消費税の流れ:消費者が負担した消費税を、事業者が預かり、支払った消費税を差し引いて国に納める。所得ではなく取引にかかるため、赤字でも納税が生じる。

▲ 消費税の流れを示した図。実際に消費税を負担するのは最終的に商品を購入した消費者であり、事業者は売上時に預かった消費税から仕入や経費で支払った消費税を差し引いて国に納めること、消費税は所得ではなく取引に対してかかるため会社が赤字であっても納税が生じ得ることを表す。

ここから、消費税の重要な特徴が導かれます。赤字でも消費税は発生します。 法人税や所得税は儲けがなければゼロですが、消費税は取引に対してかかるので、儲かっているかどうかは関係ありません。売上があれば消費税を預かっており、それを納める義務があるからです。特に、人件費のように消費税がかからない支出が多い会社は、赤字でも消費税の納税額が出やすくなります。

「利益は出ていないのに納税がある」と驚かれるのは、消費税を「儲けにかかる税金」だと誤解しているからです。消費税は、預かったお金を預かった人に代わって納める――そう理解しておけば、納得できるはずです。

なお、すべての事業者が消費税を納めるわけではありません。基準期間(法人なら原則として前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下なら、原則として免税事業者です。ただし、インボイス制度が始まってからは、インボイスを発行するために登録すると、売上規模にかかわらず課税事業者になります(実務講座⑮)。

5. なぜ仕組みが違うのか ― 3つの税の役割

3つの税で仕組みが違うのは、それぞれに期待されている役割が違うからです。

所得税には、所得の再分配という役割があります。稼ぐ力に応じて負担を分かち合い、格差を緩やかにする。だから累進税率が採られています。個人の事情(家族構成、医療費、住宅ローンなど)に応じた控除が多いのも、一人ひとりの担税力に合わせるためです。

法人税は、法人の活動から生じた利益に課税します。累進税率を採らないのは、会社の規模で税率が変わると、成長や投資の判断がゆがみかねないからです。会社を大きくすると税率が上がるとしたら、成長を思いとどまる会社が出てきます。それに、法人は最終的に個人(株主・従業員)に利益を分配するので、再分配は個人の段階で行えばよい、という整理もあります。

消費税は、安定した税収を確保する役割を担っています。所得税や法人税は景気に左右されて税収が大きく振れますが、消費は景気が悪くてもゼロにはなりません。また、働く世代だけでなく、あらゆる世代が消費を通じて広く負担する形になるため、社会保障の財源として使われています。

制度の背景を知っておくと、細かいルールの意味もつかみやすくなります。たとえば法人税に累進税率がない理由が分かれば、「中小企業の800万円以下15%」がなぜ特例という位置づけなのかも見えてきます。

6. 会社が納める税金の全体像

最後に、会社が実際に納める税金を整理しておきましょう。

会社が納めるのは、まず法人税・地方法人税・防衛特別法人税(いずれも国税で、税務署へ)。次に法人住民税・法人事業税・特別法人事業税(地方税で、都道府県・市町村へ)。そして課税事業者なら消費税・地方消費税(国税で、税務署へ)です。

さらに、会社は従業員や役員の給与から源泉所得税を天引きして、本人に代わって納めています。これは会社の税金ではなく、個人が負担する所得税を会社が預かって納めているものです。消費税と同じく「預かって納める」構造ですね。

つまり、会社の周りには「会社自身が負担する税金(法人税・住民税・事業税)」と「預かって納める税金(消費税・源泉所得税)」の2種類があります。この区別ができると、資金繰りの見方が変わります。預かっている分は、もともと自分のお金ではないからです。売上代金に含まれて入金された消費税を、手元にあるからと使ってしまうと、納付のときに足りなくなります。

納める時期にも違いがあります。法人税・住民税・事業税・消費税は、決算のあとにまとめて来ます(事業年度終了の翌日から2か月以内)。一方、源泉所得税は、給与を支払った月の翌月10日までに納めるのが原則で、毎月やってきます(納期の特例を受ければ年2回にまとめられます)。決算期だけを見ていると、毎月の納付を見落としがちなので、年間の流れとして押さえておきましょう。

もうひとつ、税務上の扱いにも違いがあります。法人税と住民税は、支払っても損金になりません。会社の利益から納めるものなので、経費として引いてしまうと計算が循環してしまうからです。一方、事業税は翌期に損金算入できます。同じ「会社が負担する税金」でも、損金になるものとならないものがある――この区別は、申告書を作るときに効いてきます。

7. 仕上げのチェックポイント

  • 法人税と所得税は直接税、消費税は間接税。負担する人と納める人が違うのが消費税の特徴。
  • 法人税は比例税率(原則23.2%、中小は年800万円以下15%)、所得税は累進税率(5%〜45%+住民税)。この差が法人化の判断材料になる。
  • 消費税は赤字でも生じる。所得ではなく取引にかかるため。人件費比率が高い会社ほど、赤字でも納税が出やすい。
  • 軽減税率15%は期限つきの特例(令和9年3月31日までに開始する事業年度まで)。所得10億円超の事業年度は17%になるなどの見直しもある。
  • 令和8年4月以後開始事業年度から防衛特別法人税(法人税額から500万円を控除した額×4%)。多くの中小企業は税額ゼロだが申告は必要

まとめ:3つの税の違いの要点

  • 誰に:法人税=法人、所得税=個人、消費税=負担は消費者・納付は事業者。
  • 何に:法人税・所得税=所得(儲け)、消費税=取引。だから消費税だけ赤字でも生じる
  • どう:法人税=比例(一定率)、所得税=累進(増えるほど高く)、消費税=取引額に一律。
  • 役割:所得税=所得の再分配、法人税=法人の利益への課税(成長をゆがめないため累進にしない)、消費税=安定財源。
  • 会社の税金は「自分が負担するもの(法人税・住民税・事業税)」と「預かって納めるもの(消費税・源泉所得税)」に分かれる。この区別が資金繰りの土台になる。

3つの税の違いが見えてくると、日々の判断の意味も変わってきます。法人化を考えるとき、役員報酬をいくらにするか決めるとき、納税資金を準備するとき――どれも、この3つの税がどう動くかを踏まえた判断だからです。次回は、法人税の中でも特に誤解の多い「役員給与はなぜ損金にならないのか」を掘り下げます。

  • 次回:【法人税の理論講座②】役員給与はなぜ損金にならない?定期同額給与をわかりやすく解説

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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。記載の税率・制度は2026年6月時点の一般的な情報であり、取扱いは個別の状況により異なります。税率や特例の適用期限は改正されることがあります。実際の判断にあたっては、最新の情報を国税庁等で確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

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