【法人税の理論講座⑪】同族会社とは?なぜ特別な規制があるのかをわかりやすく解説

日本の中小企業のほとんどは、同族会社です。社長ひとりの会社も、夫婦で経営している会社も、税法上は同族会社に当たります。

実務講座⑪では、別表二でどう判定して、どう書くかを見ました。今回は一歩踏み込んで、なぜ同族会社にだけ特別な規制があるのかを考えます。

理由が分かると、3つの規制(みなし役員・行為計算の否認・留保金課税)がバラバラの決まりごとではなく、ひとつの考え方から派生したものだと見えてきます。そして、自社が同族会社として何に気をつけるべきかも、自分で判断できるようになります。

目次

1. 同族会社とは何か ― 支配の集中

同族会社は上位3株主グループで50%超、特定同族会社は上位1グループで50%超。株主と経営者が重なり、意思決定を自分たちだけで通せる状態。

▲ 同族会社と特定同族会社の関係を示した図。同族会社は上位3つの株主グループの持株割合の合計が発行済株式または議決権の50%を超える会社であり、特定同族会社は上位1つの株主グループだけで50%を超える会社であること、いずれも株主と経営者が重なるため会社の意思決定を自分たちだけで通せる状態にあることを表す。

まず、定義を確認しておきましょう。同族会社とは、上位3つの株主グループが、発行済株式または議決権の50%超を持っている会社です。株主グループは、株主本人と特殊の関係にある者(親族など)をまとめたものです。

さらに、上位1グループだけで50%超を持つ会社が、特定同族会社です。もっとも支配が集中した形になります。

ここで大事なのは、なぜ50%という線が引かれているのかです。株主総会の普通決議は過半数で通ります。つまり、50%を超えていれば、役員の選任も、配当の決議も、自分たちだけで決められる。反対する人がいても関係ありません。この「意思決定を自分たちだけで通せる状態」が、同族会社の本質です。

なお、同族会社の定義が税法に置かれたのは大正時代にさかのぼります。持株割合の基準は時代とともに変わってきましたが、支配が集中している会社を特別に扱うという発想自体は、100年近く続いていることになります。

2. なぜ規制されるのか ― 所有と経営の一致

同族会社に規制がある理由は、突き詰めればひとつです。所有と経営が一致しているから

規制の根っこは「所有と経営の一致」。非同族会社では株主と経営者が別なので互いに牽制が働くが、同族会社では自分で決めて自分が受け取るため、取引条件を自由に決められる。

▲ 同族会社に特別な規制がある理由を示した図。非同族会社では株主と経営者が別々の人であるため互いに牽制が働き取引条件が適正に保たれるのに対し、同族会社では株主と経営者が同一人物であるため自分で決めて自分が受け取ることになり、取引条件を自由に決められてしまうことが規制の根拠であることを表す。

上場企業のような非同族会社を考えてみましょう。株主は配当を多く求め、経営者は事業への再投資を望む。役員報酬を上げようとすれば、株主総会で株主が反対する。立場の違う人がいるからこそ、互いに牽制が働き、条件が適正な範囲に収まります。

同族会社では、この牽制がありません。社長が株主でもあるので、役員報酬を決めるのも自分、それを受け取るのも自分。会社と社長個人の取引も、条件を決めるのは実質的に同じ人です。自分で決めて、自分が受け取る。 ここに、税負担を自由に動かせる余地が生まれます。

理論講座②で見た役員給与の話を思い出してください。役員給与が原則損金不算入とされたのは、「自分で自分の給与を決められるから」でした。同族会社の規制も、まったく同じ発想です。決められる立場にある人には、あらかじめ歯止めをかけておく。それが課税の公平を守る、という考え方です。

誤解しないでいただきたいのは、これは同族会社が悪いという話ではないということです。所有と経営が一致していることは、意思決定が速いという強みでもあります。税法は、その構造から生じる恣意性の余地に対して、限定的に手当てをしているにすぎません。

3. 3つの規制、それぞれの趣旨

同族会社の3つの規制。みなし役員(役員でない人を役員扱い)、行為計算の否認(不合理な取引を引き直す)、留保金課税(利益を貯め込んだら追加課税)。

▲ 同族会社に適用される3つの規制とその趣旨を示した図。みなし役員は登記上の役員でなくても経営に従事し一定の株式を持つ人を役員として扱う規制であり、行為計算の否認は税負担を不当に減らす不合理な取引を税務署が正常な金額に引き直せる規制であり、留保金課税は特定同族会社が利益を配当せず貯め込んだ場合に追加で課税する規制であることを表す。

規制1:みなし役員。 登記上は役員でなくても、経営に従事していて一定の株式を持っている人は、税法上は役員として扱われます。

なぜでしょうか。同族会社では、実質的に経営を担っている人を、あえて「従業員」として登記しないことができます。従業員なら賞与も損金になるので、役員給与の制限を回避できてしまう。形式ではなく実質で判断することで、その抜け道を塞いでいるわけです。社長の配偶者を従業員として雇い、賞与を出していたら否認された――中小企業で最も起きやすい失敗が、これです。

みなし役員に当たらない場合でも、油断はできません。役員の親族などが従業員として働いている場合、その給与が不相当に高額であれば、高すぎる部分は損金になりません(特殊関係使用人への過大給与)。役員でなければ何でも認められる、というわけではないのです。

なお、かつては一定の同族会社について社長の報酬の一部を損金不算入とする制度もありましたが、これは平成22年4月1日以後に廃止されています。同族会社の規制は、時代とともに見直されていることも押さえておきましょう。

規制2:行為計算の否認。 同族会社が税負担を不当に減らすような取引をした場合、税務署はその取引を正常な金額に引き直して計算できます(法人税法132条)。

これは強い権限なので、どこまで適用されるのかが問題になります。裁判例では、「容認すると法人税の負担を不当に減少させる結果となる」かどうかは、経済的・実質的に見て不合理・不自然かという客観的な基準で判断すべきだとされています。言い換えれば、独立した第三者どうしなら、その条件で取引するかという視点です。

だから、合理的な事業目的に基づく経営判断まで否認されるわけではありません。問われるのは「その取引に経済的合理性があるか」。ここが分かれ目です。

具体的に問題になりやすいのは、会社と社長個人の間の取引です。社長所有の建物を会社が相場より高い家賃で借りる、会社が社長に無利息でお金を貸す、社長の親族に実態のない外注費を払う。いずれも、第三者どうしなら成立しない条件です。

特に注意したいのが、土地の貸借に伴う借地権の問題です。権利金のやりとりが慣行になっている地域で、社長個人の土地を会社が権利金なしで借りると、会社が権利金相当の経済的利益を受けたとして課税されることがあります。同族会社では「身内だから権利金なんて」と考えがちですが、税務はそう見ません。土地の貸借を始めるときは、事前に確認しておくべき論点です。

規制3:留保金課税。 特定同族会社が利益を配当せずに貯め込んだとき、通常の法人税とは別に追加で課税される仕組みです。趣旨は、次の章で詳しく見ます。

4. 留保金課税の趣旨と、中小企業への配慮

留保金課税は、理屈を知らないと不思議な制度に見えます。利益を貯めることの何が問題なのでしょうか。

鍵は、所得税と法人税の税率構造の違いです。理論講座①で見たとおり、所得税は累進で最高45%(住民税を加えると約55%)、法人税は比例で原則23.2%。

ここで、オーナー社長の立場に立ってみます。会社の利益を配当で受け取れば、個人の所得税がかかる。所得が大きければ、税率は高くなります。ところが、配当せずに会社に貯めておけば、法人税を払うだけで済む。同じ利益でも、受け取り方によって税負担が変わるわけです。

配当をコントロールできるのは、支配が集中している同族会社だからです。非同族会社なら、株主が配当を求めます。同族会社だけが、配当するかどうかを自由に決められる。 これを放置すれば、同族会社と非同族会社の間で税負担に差が生まれてしまいます。

そこで、一定額を超えて留保した部分に、特別税率で追加課税する制度が置かれました。税率は、課税留保金額のうち3,000万円以下が10%、3,000万円超1億円以下が15%、1億円超が20%です。

なお、留保した利益のすべてに課税されるわけではありません。会社が事業を続けるために必要な内部留保は認められており、所得の一定割合や資本金を基準にした留保控除額を超えた部分だけが対象になります。貯めること自体が悪いのではなく、行き過ぎた部分だけを是正するという設計です。

ただし、資本金1億円以下の法人は適用対象外です(平成19年度改正)。中小企業にとって、内部留保は将来の投資や不測の事態への備えであり、それに課税するのは成長を妨げる――そういう政策判断がなされました。多くの中小企業にとって、留保金課税は実際には関係のない制度だといえます。ただし、資本金5億円以上の大法人に100%支配されている子会社は、資本金が小さくても適用されます。

5. 同族会社として気をつけること

理屈が分かったところで、実務で何に注意すべきかを整理します。

会社と社長個人の取引には、必ず根拠を持つこと。 社長所有の建物を会社に貸す、会社が社長にお金を貸す、社長の親族に外注する。同族会社では日常的にある取引ですが、いずれも条件を自分で決められる取引です。だからこそ、相場を確認し、契約書を作り、なぜその条件なのかを説明できるようにしておく必要があります。「第三者との取引でも同じ条件にするか」を自問するのが、いちばん確実なチェックです。

役員の範囲を正しく把握すること。 登記上の役員だけでなく、経営に従事している親族が持株要件を満たせばみなし役員です。給与の設計をする前に、誰が税務上の役員なのかを確認しておきましょう。株主構成が変わった年や、家族が新たに経営に関わり始めた年は、特に見直しが必要です。

記録を残すこと。 取締役会や株主総会の議事録、取引の経緯を示す資料。同族会社は「なぜそうしたのか」を問われやすい立場にあります。理論講座②の役員給与でも、⑨の損金判定でも同じことを書きましたが、説明できる状態にしておくことが、結局いちばんの備えになります。

なお、同族会社であることのメリットもあります。意思決定が速く、株主の顔色をうかがわずに長期的な視点で経営できる。事業承継も設計しやすい。規制を知ったうえで、その強みを活かしていくというのが、本来の向き合い方だと思います。

6. まとめ:同族会社の要点

  • 同族会社=上位3株主グループで50%超特定同族会社=上位1グループで50%超。50%という線は、株主総会の決議を自分たちだけで通せることを意味する。
  • 規制の根っこは所有と経営の一致。自分で決めて自分が受け取る立場なので、取引条件を自由に決められる。理論講座②の役員給与とまったく同じ発想
  • みなし役員は、実質的に経営を担う人を形式で判断させないための規制。中小企業で最も起きやすい失敗が、親族への賞与の否認。
  • 行為計算の否認の基準は「経済的合理性があるか」。合理的な事業目的に基づく判断まで否認されるわけではない。第三者と同じ条件かを自問する。
  • 留保金課税は、所得税(累進)と法人税(比例)の差を利用した留保を是正する制度。留保控除額を超えた部分だけが対象で、資本金1億円以下の法人は適用対象外なので、多くの中小企業には関係しない。

同族会社の規制は、必要以上に身構えるようなものではありません。「自分で決められる立場だから、説明できるようにしておく」――要は、それだけのことです。相場を確認し、契約書を残し、議事録を作る。この習慣が身についていれば、3つの規制のどれも、必要以上に怖がることはありません。次回は理論講座の最終回として、赤字が出た年をどう扱うか、繰越欠損金と青色申告の関係を取り上げます。

  • 前回:【法人税の理論講座⑩】中小企業向けの税額控除をわかりやすく解説
  • 次回:【法人税の理論講座⑫】繰越欠損金と青色申告の関係をわかりやすく解説

あわせて読みたい

  • 【法人税の実務講座⑪】別表二(同族会社の判定)の書き方をわかりやすく解説
  • 【法人税の理論講座②】役員給与はなぜ損金にならない?定期同額給与をわかりやすく解説

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。記載の税率・要件は一般的な場合を想定した説明であり、実際の取扱いは法人の状況により異なります。取扱いは改正されることがあります。実際の判断にあたっては、最新の情報を国税庁等で確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

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