同じ機械を200万円で買っても、定額法を選ぶか定率法を選ぶかで、毎年の減価償却費はまったく違う金額になります。
では、どちらが得なのでしょうか。この問いに答えるには、まずトータルで損金になる金額は、どちらを選んでも同じだという事実を押さえる必要があります。取得価額200万円は、いずれ全額が損金になる。違うのは、それがいつ損金になるかだけです。
理論講座④で、留保とは時間差のことだと見ました。減価償却も同じで、突き詰めればタイミングの問題です。今回は、2つの償却方法の違いと、なぜ選択の余地があるのかを整理します。
1. 計算の違い ― 毎年同額か、だんだん減るか
定額法は毎年同額(取得価額×償却率)。定率法は期首の未償却残高×償却率なので、初めの年ほど大きく、だんだん小さくなる。トータルの損金額は同じで、違うのはタイミング。

▲ 定額法と定率法の計算の違いを示した図。定額法は取得価額に償却率を掛けるため毎年同じ額を償却するのに対し、定率法は期首の未償却残高に償却率を掛けるため初年度の償却額が最も大きく年を追うごとに減っていくこと、どちらの方法でもトータルで損金になる金額は同じで違いは損金になるタイミングだけであることを表す。
まず、計算式を並べてみましょう。
定額法 は、「取得価額 × 定額法の償却率」です。掛ける相手が取得価額なので、この数字は毎年変わりません。したがって、毎年同じ額を償却します。耐用年数10年なら償却率は0.100で、200万円の資産なら毎年20万円ずつ、10年かけて償却していきます。
定率法 は、「期首の未償却残高 × 定率法の償却率」です。掛ける相手が未償却残高なので、償却が進むほど小さくなっていきます。だから、初めの年ほど償却額が大きく、だんだん減っていくわけです。耐用年数10年の定率法の償却率は0.200なので、200万円の資産なら1年目は40万円、2年目は残高160万円に0.200を掛けて32万円、3年目はさらに減って25万6千円、という具合です。
ここで、定率法の償却率が定額法の2倍になっていることに気づいたでしょうか。平成24年4月1日以後に取得した資産の定率法は、200%定率法と呼ばれ、定額法の償却率の2倍が設定されています。耐用年数10年なら、定額法0.100に対して定率法0.200。この「2倍」が名前の由来です。
大事なのは、初年度の償却額が2倍でも、トータルで損金になる金額は変わらないということです。定率法で初めに多く償却すれば、その分だけ後半の償却額は少なくなります。10年かけて損金にする総額は、どちらも取得価額の全額(正確には残存簿価1円を残した額)です。
2. どちらが有利か ― 「早く損金にできる」の意味
トータルが同じなら、どちらを選んでも結果は同じでしょうか。実は、そうとも言い切れません。
定率法には、早く損金にできるというメリットがあります。同じ200万円でも、1年目に40万円を損金にできるのと、20万円しか損金にできないのとでは、その年の税額が変わります。早く損金にすれば、その分だけ納税が後ろにずれる。手元に資金が残るので、資金繰りの面では有利です。
これは節税というより、課税の繰延べと呼ぶのが正確です。払う税金の総額が減るわけではなく、払う時期が遅くなるだけ。とはいえ、手元資金を確保できる価値は小さくありません。特に設備投資をした直後は、支払いで資金が減っている時期なので、償却を前倒しできる意味は大きいのです。
一方、定額法にも良さがあります。毎年の償却額が一定なので、利益計画が立てやすいのです。定率法だと初年度に費用が集中し、翌年以降は費用が減っていくため、同じ売上でも利益の出方がでこぼこします。安定した数字を見せたい会社や、初年度から利益を確保したい会社には、定額法のほうが向いています。
なお、赤字の会社では話が変わります。損金を増やしても税額はもともとゼロなので、定率法で早く償却するメリットは働きません。むしろ、繰越欠損金の期限(実務講座⑥)を考えると、償却を急がないほうがよい場面もあります。どちらが有利かは、会社の状況によって変わるということです。
実務でもうひとつ意識したいのが、期の途中で取得した資産の扱いです。減価償却は、事業に使い始めた月から月割で計算します。3月決算の会社が2月に機械を買っても、その期に償却できるのは年間の償却額の12分の2だけ。「決算前に設備を買って節税」と言われることがありますが、期末間際の購入では、思ったほど損金が出ないのです。設備投資の効果を当期に取り込みたいなら、期の前半に動くほうが理にかなっています。
3. 法人は、資産の種類で方法が決まっている
建物・建物附属設備・構築物・ソフトウェア等は定額法のみ。機械装置・器具備品・車両運搬具等は定率法が法定で、届出をすれば定額法も選べる。

▲ 法人の法定償却方法を示した図。建物や建物附属設備、構築物、ソフトウェアなどの無形固定資産は定額法しか使えないのに対し、機械装置や器具備品、車両運搬具などは定率法が法定の償却方法であり、届出書を提出すれば定額法を選ぶこともできることを表す。
ここまで「選ぶ」と書いてきましたが、実は法人には制約があります。
定額法しか使えない資産があります。 建物(平成10年4月1日以後に取得したもの)、建物附属設備と構築物(平成28年4月1日以後に取得したもの)、そしてソフトウェアなどの無形固定資産です。これらは、選択の余地なく定額法です。
なぜでしょうか。建物のような資産は、長期にわたって安定して使われ、価値の減り方も緩やかです。初年度に大きく償却する定率法は、実態に合いません。加えて、建物は金額が大きいため、定率法を認めると初年度の損金が大きくなりすぎるという税収面の事情もあります。実際、これらが定額法に一本化されたのは、税制改正の積み重ねによるものです。
機械装置・器具備品・車両運搬具などは、定率法が法定の方法です。ただし、届出をすれば定額法を選ぶこともできます。届出書(減価償却資産の償却方法の届出書)は、設立第1期なら最初の確定申告期限まで、新たな種類の資産を取得したならその事業年度の確定申告期限までに提出します。
いったん選んだ方法を後から変更したいときは、変更しようとする事業年度が始まる日の前日までに承認申請が必要です。決算が終わってから「やっぱり変えたい」と言っても間に合いません。届出関係は、実務講座⑰でも触れたとおり、後から取り戻せない手続きの代表格です。
また、償却方法は資産の種類ごとに選ぶもので、同じ種類の資産を資産ごとに使い分けることはできません。「この機械は定率法、あの機械は定額法」という選び方はできない、ということです。届出をするときは、その種類の資産すべてに適用されると考えておきましょう。
4. 定率法の複雑な仕組み ― 償却保証額と改定償却率
定率法には、初めて学ぶ人がつまずく仕組みがあります。償却保証額と改定償却率です。
定率法は、未償却残高に償却率を掛けるので、計算上は永久にゼロになりません。残高が小さくなるほど、償却額も小さくなっていくからです。これでは、耐用年数を過ぎても償却が終わらないことになってしまいます。
定率法の後半の切り替え。未償却残高×償却率が償却保証額を下回った年から、改定取得価額×改定償却率に切り替わり、以後は毎年同額になる。

▲ 定率法における償却保証額と改定償却率の仕組みを示した図。定率法では未償却残高に償却率を掛けて償却額を計算するが、その金額が償却保証額を下回った年からは、その年の期首未償却残高である改定取得価額に改定償却率を掛ける計算に切り替わり、以後は毎年同額を償却して耐用年数内に償却を終えることを表す。
そこで、こういう仕組みが置かれました。まず、償却保証額という下限を決めます(取得価額 × 保証率)。そして、通常どおり計算した償却額がこの償却保証額を下回った年からは、計算方法を切り替えます。その年の期首未償却残高を改定取得価額とし、それに改定償却率を掛ける。この方法だと、以後は毎年同額の償却になり、耐用年数内にきちんと償却が終わります。
たとえば耐用年数5年の資産(定率法償却率0.400、保証率0.108、改定償却率0.500)を100万円で取得した場合を考えます。償却保証額は100万円×0.108=10万8千円。1年目40万円、2年目24万円、3年目14万4千円と減っていき、4年目は8万6,400円になります。これは償却保証額の10万8千円を下回るので、4年目から切り替えです。4年目の期首未償却残高21万6千円が改定取得価額となり、21万6千円×0.500=10万8千円が4年目と5年目の償却額になります。
つまり、定率法は後半で定額法に切り替わる仕組みだ、と理解しておけば十分です。細かい率は国税庁の「減価償却資産の償却率等表」に載っていますし、会計ソフトが自動で処理してくれます。保証率と改定償却率は暗記するものではなく、表を引くものです。
5. 会計と税務がずれるとき
ここまで税務の話をしてきましたが、会計上の減価償却は、本来これとは別のものです。
会計では、資産を実際に使う期間(経済的耐用年数)にわたって、実態に合った方法で償却するのが筋です。5年で使い切る機械なら5年で償却する。税法の耐用年数が10年でも、会計の理屈としては5年が正しい。
しかし実務では、多くの中小企業が税法の耐用年数と償却方法をそのまま使います。別々に計算すると手間が二重になるうえ、差が出れば申告調整が必要になるからです。
とはいえ、実態に合わせて会計上多めに償却すれば、税務の限度額を超えます。その超過額が、理論講座④で見た減価償却超過額です。会計が先に費用にした分を、税務が後から追いかける。だから留保として別表五(一)に積み上がり、将来の年に認容されていくわけです。
償却方法の選択は、この差の出方も左右します。 会計で定額法、税務で定率法という組み合わせなら、初期は税務の限度額のほうが大きいので超過は生じにくく、後半は逆転します。どの方法を選ぶかは、単に償却額の話ではなく、申告調整の手間にも関わってくるのです。
6. 中古資産を買ったときは
もうひとつ、実務でよく出てくる論点に触れておきます。中古の資産を買った場合です。
中古資産は、新品と同じ耐用年数を使う必要がありません。すでに何年か使われている以上、残りの使用可能期間は短いはずだからです。そこで、使用可能期間を見積もるか、それが難しければ簡便法で耐用年数を計算します。
簡便法では、法定耐用年数をすでに過ぎている資産なら「法定耐用年数×20%」、まだ過ぎていない資産なら「法定耐用年数−経過年数+経過年数×20%」で計算します(いずれも1年未満切捨て、2年未満は2年)。
有名なのが、4年落ちの中古車です。普通乗用車の法定耐用年数は6年なので、4年経過していれば「6年−4年+4年×20%=2.8年」、1年未満を切り捨てて2年になります。耐用年数2年の定率法償却率は1.000なので、期首に取得すれば1年で全額を損金にできるわけです。中古車が節税策として話題になるのは、この仕組みによります。
ただし、ここでも第2章の話が効いてきます。早く損金にできるだけで、税金の総額が減るわけではありません。しかも車は購入後に価値が下がり、売却時には売却益が出て課税されることもあります。課税の繰延べと、資産としての損得は別だと理解しておきましょう。
7. まとめ:定額法と定率法の要点
- 定額法=取得価額×償却率で毎年同額。定率法=期首未償却残高×償却率で初めが大きく、だんだん減る。
- トータルで損金になる金額は同じ。違うのは「いつ損金になるか」だけ。定率法が有利といわれるのは、課税の繰延べ(納税が後ろにずれて資金が残る)であって、税額そのものが減るわけではない。
- 平成24年4月1日以後に取得した資産の定率法は200%定率法(定額法の償却率の2倍)。
- 建物・建物附属設備・構築物・ソフトウェア等は定額法のみ。機械装置・器具備品・車両運搬具等は定率法が法定で、届出をすれば定額法も選べる。変更には事前の承認申請が必要。
- 定率法には償却保証額と改定償却率があり、後半は実質的に定額法へ切り替わる。率は償却率等表を引けばよく、暗記は不要。
減価償却の方法選びは、「どちらが得か」という問いよりも、「いつ損金にしたいか」という問いに置き換えると考えやすくなります。設備投資の直後で資金を残したいのか、利益を安定して見せたいのか。会社の状況によって答えは変わります。次回は、そもそも何が益金・損金になるのかという入口に戻り、益金不算入・損金不算入の考え方を整理します。
- 前回:【法人税の理論講座④】留保と社外流出の違いをわかりやすく解説
- 次回:【法人税の理論講座⑥】益金不算入・損金不算入とは?をわかりやすく解説
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。記載の償却率・金額は説明のための例であり、実際の取扱いは資産の種類や取得時期により異なります。取扱いは改正されることがあります。実際の申告にあたっては、最新の償却率等表を国税庁で確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。