法人税の所得は、益金から損金を引いて計算します。会計の利益が「収益-費用」なので、一見すると同じことをしているように見えます。
ところが、益金と収益、損金と費用は、それぞれ別物です。だから、会計の利益をそのまま課税所得にはできず、別表四で調整する必要が出てきます(実務講座①)。
理論講座②から⑤では、役員給与・交際費・減価償却といった個別の論点を見てきました。今回は一段上に戻って、そもそもなぜズレが生まれるのか、そして調整には何種類あるのかを整理します。個別の話がひとつの枠組みに収まると、新しい項目に出会っても自分で位置づけられるようになります。
1. 会計の利益と、税務の所得
会計の利益=収益−費用。税務の所得=益金−損金。範囲が違うので、会計の利益に申告調整を加えて所得を計算する。

▲ 会計の利益と税務の所得の関係を示した図。会計上の利益が収益から費用を差し引いて計算されるのに対し、税務上の所得は益金から損金を差し引いて計算されること、収益と益金、費用と損金は範囲が異なるため、会計の利益に申告調整を加えて税務の所得を計算する必要があることを表す。
まず、2つの計算式を並べます。
会計の利益 = 収益 - 費用 税務の所得 = 益金 - 損金
形は同じですが、中身が違います。収益と益金、費用と損金は、範囲が一致しないのです。
もっとも、まったく別物というわけでもありません。法人税法は、益金・損金の額を「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従って計算すると定めています。つまり、会計を出発点にするという立場です。そのうえで、税法に別段の定めがあるものだけを調整する。
これは実務的に見て、とても合理的な仕組みです。もし税務が会計とまったく無関係に所得を計算するなら、会社は帳簿を2つ作らなければなりません。そうではなく、決算書の利益を土台にして、違うところだけ手を入れる。だから別表四は、当期純利益から始まるのです。
では、そもそもなぜ違いが出るのでしょうか。根っこにあるのは、目的の違いです。会計は、株主や銀行に対して会社の実態を正しく伝えることを目的としています。だから、将来の損失に備えて引当金を積んだり、実態に合わせて償却を早めたりと、保守的に(慎重に)計算するのが基本姿勢です。一方、税務の目的は、公平に税を集めることです。各社が自由に判断して所得を圧縮できてしまうと、同じ利益なのに税額が違うという不公平が生まれます。だから税務は、明確な基準を置いて画一的に計算しようとします。
慎重さを重んじる会計と、公平さを重んじる税務。目的が違えば結論も違ってくる――これが、ズレの根本にある構図です。
2. 調整は4種類ある
申告調整は4種類:益金算入と損金不算入は加算、益金不算入と損金算入は減算。

▲ 申告調整の4つのパターンを示した図。会計上の収益ではないが税務上は益金となる益金算入と、会計上の費用だが税務上は損金とならない損金不算入は所得を増やす加算項目であり、会計上の収益だが税務上は益金とならない益金不算入と、会計上の費用ではないが税務上は損金となる損金算入は所得を減らす減算項目であることを表す。
ズレの直し方は、4パターンあります。
益金算入。 会計では収益にしていないが、税務では益金になるもの。所得が増えるので加算します。
損金不算入。 会計では費用にしているが、税務では損金にならないもの。費用を取り消すので加算します。
益金不算入。 会計では収益にしているが、税務では益金にならないもの。収益を取り消すので減算します。
損金算入。 会計では費用にしていないが、税務では損金になるもの。所得が減るので減算します。
整理すると、加算されるのは益金算入と損金不算入、減算されるのは益金不算入と損金算入です。ここで混乱しやすいのが、「不算入」という言葉が加算にも減算にも出てくることです。ポイントは、何が不算入なのかを見ることです。損金が不算入なら費用が否定されるので所得は増え、益金が不算入なら収益が否定されるので所得は減ります。
実務でいちばんよく出てくるのは、損金不算入です。役員給与、交際費、減価償却超過額、法人税・住民税――理論講座②から⑤で見てきた論点は、ほとんどがこのグループでした。次に多いのが益金不算入で、代表が受取配当等の益金不算入です。益金算入と損金算入は、中小企業の実務ではあまり登場しません。
とはいえ、まったく縁がないわけでもありません。損金算入の代表は、繰越欠損金の控除です(実務講座⑥)。過去の赤字を当期の所得から差し引くもので、会計上の費用ではないのに税務では所得を減らします。益金算入は、たとえば資産を無償や著しく低い価額で譲渡したときに、時価との差額を益金として認識するようなケースです。会計では対価がないので収益が立たなくても、税務では時価で取引したものとみなす、という考え方によります。
3. なぜズレが生まれるのか ― 3つの理由
ズレが生まれる3つの理由:課税の公平(お手盛り防止など)、政策目的(冗費の抑制など)、二重課税の排除(受取配当など)。

▲ 会計と税務にズレが生まれる3つの理由を示した図。ひとつめは課税の公平を保つためで役員給与の損金不算入などが該当し、ふたつめは政策目的で交際費の損金不算入などが該当し、みっつめは二重課税を避けるためで受取配当等の益金不算入が該当することを表す。
ここが今回の中心です。会計と税務がズレるのには、大きく3つの理由があります。
理由1:課税の公平を保つため。 会社が自由に利益を調整できると、税負担が不公平になります。理論講座②で見た役員給与がその代表です。自分で自分の給与を決められる立場を利用して利益を調整させないため、原則損金不算入としました。減価償却の限度額も同じ発想です。会計では会社が耐用年数を見積もれますが、それを無制限に認めると、償却額を通じて所得を操作できてしまいます。だから税務は限度額を決めています(理論講座⑤)。
理由2:政策目的のため。 税制を使って、企業の行動を望ましい方向へ導こうとするものです。理論講座③で見た交際費が代表で、冗費を抑えて企業の体質を強くするという狙いがありました。逆方向の政策もあり、設備投資を促すための特別償却や税額控除は、損金算入や税額控除を増やす方向で企業を後押しします。
理由3:二重課税を避けるため。 同じ所得に2回課税されるのを防ぐ調整です。代表が受取配当等の益金不算入です。配当を支払う会社は、すでに法人税を払ったあとの利益から配当しています。それを受け取った会社で再び課税すると、同じ利益に2度課税されることになる。だから、受け取った側では益金に入れないのです(実務講座⑨)。
この3つで分類すると、個別の論点が整理できます。役員給与と減価償却は公平のため、交際費は政策のため、受取配当は二重課税を避けるため。 理由が違えば、扱いも違ってきます。
4. 理由の違いが、扱いの違いを生む
3つの理由の違いは、そのまま制度の性格の違いになって表れます。
課税の公平が理由のものは、法人税法の本体に置かれます。役員給与も減価償却も、法人税法や施行令に規定があります。公平の要請は時代によって揺れないので、制度も比較的安定しています。
政策目的のものは、租税特別措置法に置かれることが多くなります。理論講座③で見たとおり、交際費の制限がそうです。政策である以上、時代の要請で変わるので、適用期限がついていて、数年ごとに見直されるという特徴があります。「あの特例は今も使えるのか」を毎年確認しなければならないのは、この性格によります。
二重課税の排除が理由のものは、理屈としての正しさに支えられているため、これも安定しています。ただし、どこまで排除するかは政策判断が入るので、株式の保有割合によって益金不算入の割合が変わるといった細かい調整はあります。
そして、理論講座④で見た留保と社外流出の区分も、この3つの理由と関係しています。公平を理由とする調整には、減価償却超過額のようにいつか解消する(留保)ものが多い。一方、政策目的や二重課税の排除を理由とする調整は、交際費や受取配当のように永久に解消しない(社外流出)ものが多くなります。理由から入ると、区分の見当もつけやすくなるわけです。
5. 益金・損金に入らないもの ― 資本等取引
もうひとつ、押さえておきたい考え方があります。資本等取引です。
法人税法は、益金・損金の定義から資本等取引を除いています。資本等取引とは、増資や減資、剰余金の配当といった、株主との間のお金のやりとりです。
なぜ除くのでしょうか。法人税は、会社が事業活動で稼いだ儲けに課税する税金です。ところが、株主が出資したお金は、会社が稼いだものではありません。株主から預かった元手です。これに課税してしまえば、事業の成果とは関係のないところで税金が発生してしまいます。
配当も同じです。配当は、稼いだ利益を株主に分配する行為であって、費用ではありません。だから損金にもなりません。利益をどう使ったかの話であって、利益をどう稼いだかの話ではないからです。
この区別は、会計でも同じ考え方をします。増資は資本の増加、配当は利益剰余金の減少であって、どちらも損益計算書には出てきません。会計と税務が珍しく素直に一致する領域です。逆にいえば、損益計算書に出てこないものは、そもそも申告調整の対象にもならない、と考えておけば整理しやすくなります。
6. 新しい項目に出会ったときの考え方
最後に、実務で役立つ視点をまとめておきます。見慣れない調整項目に出会ったとき、次の順で考えると位置づけられます。
まず、会計ではどう処理されているかを確認します。 収益に入っているか、費用に入っているか。それとも、そもそも会計には出てこないのか。
次に、税務ではどう扱われるかを確認します。 益金になるか、損金になるか、ならないか。
この2つを突き合わせれば、4パターンのどれかに必ず収まります。 会計は費用だが税務は損金でない、なら損金不算入で加算。会計は収益だが税務は益金でない、なら益金不算入で減算。この対応関係さえ覚えておけば、迷うことはありません。
そして、なぜそうなっているのかを考えます。 公平のためか、政策のためか、二重課税を避けるためか。理由が分かれば、その項目が留保になるか社外流出になるかも見当がつきますし、適用期限のある特例かどうかの見当もつきます。
会計ソフトを使えば、調整の多くは自動で処理されます。それでも、この枠組みを持っておけば、ソフトが出した結果を検証でき、税制改正のニュースを見たときも「これはどのグループの話か」とすぐ位置づけられます。個別の暗記ではなく、枠組みで理解する。 これが、税務を長く使える知識にするコツです。
7. まとめ:益金不算入・損金不算入の要点
- 法人税の所得は益金-損金。会計の収益-費用とは範囲が違うので、申告調整が必要になる。ただし会計を出発点とし、別段の定めがあるものだけ調整する。
- ズレの根っこにあるのは目的の違い。会計は実態を伝えるため保守的に、税務は公平に集めるため画一的に計算する。
- 調整は4種類。加算=益金算入・損金不算入、減算=益金不算入・損金算入。「何が不算入なのか」を見れば、加算か減算かが決まる。
- ズレが生まれる理由は3つ。課税の公平(役員給与・減価償却の限度額)、政策目的(交際費・特別償却)、二重課税の排除(受取配当等の益金不算入)。
- 理由の違いは制度の性格に表れる。公平は法人税法本体で安定、政策は租税特別措置法で適用期限つき、二重課税の排除は理屈に支えられて安定。
- 資本等取引(増資・減資・配当)は益金にも損金にも入らない。株主とのやりとりであって、事業の成果ではないから。
益金不算入・損金不算入という言葉は、それ自体が難しそうに聞こえます。でも中身は、「会計と税務でどこが違い、なぜ違うのか」を整理したものにすぎません。この枠組みを持てば、個別の論点は枠の中に収まっていきます。次回は、法人がトータルでどれだけの税負担を負っているのかを示す、実効税率の考え方を取り上げます。
- 前回:【法人税の理論講座⑤】定額法と定率法の違いをわかりやすく解説
- 次回:【法人税の理論講座⑦】法人税の実効税率とは?をわかりやすく解説
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。記載の内容は一般的な場合を想定した説明であり、実際の取扱いは法人の状況により異なります。取扱いは改正されることがあります。実際の判断にあたっては、最新の情報を国税庁等で確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。