【法人税の実務講座⑰】法人税を自分で申告する手順|必要書類と年間スケジュール【総まとめ】

実務講座①から⑯まで、別表の書き方、添付書類、地方税、消費税、納付と、法人税の申告に必要な作業をひとつずつ見てきました。最終回は、それらを一本の流れにつなぎ直します。

どの順番で手をつければいいのか。何を提出すればいいのか。決算日から納付まで、どんなスケジュールで進むのか。3月決算のサンプル株式会社を例に、全体像を整理しましょう。つまずいたところがあれば、該当する回に戻れるようにしてあります。

目次

1. 申告までの全体像 ― 5つのステップ

法人税の申告は、5つのステップ。①決算を締める→②別表で所得と税額を計算→③添付書類(内訳書・概況書)を作る→④地方税・消費税を申告→⑤納付する。

▲ 法人税の申告が5つのステップで進むことを示した図。まず決算を締めて決算書を作り、次に別表で所得と税額を計算し、続いて勘定科目内訳明細書と法人事業概況説明書という添付書類を作り、そのうえで地方税と消費税を申告し、最後に納付するという流れを表す。

法人税の申告は、大きく5つのステップで進みます。

①決算を締める。 期中の記帳を確定させ、決算整理(棚卸・減価償却・経過勘定など)をして、貸借対照表・損益計算書を作ります。ここで出てくる「当期純利益」が、申告のスタート地点です。

②別表で所得と税額を計算する。 決算書の利益に、税務のルールで加算・減算を加えて所得を出し(別表四)、そこから税額を計算します(別表一)。加算・減算の根拠となる各別表も、あわせて作ります。

③添付書類を作る。 決算書の数字を取引先ごとに分解した勘定科目内訳明細書と、会社全体の姿を示す法人事業概況説明書。この2つを添えて、申告書一式が完成します。

④地方税・消費税を申告する。 税務署だけでなく、都道府県・市町村にも申告します。課税事業者なら消費税の申告も必要です。

⑤納付する。 計算した税金を、期限までに納めます。

大事なのは、②の前に①が確定していることです。法人税は「確定した決算に基づいて」申告するルールなので、株主総会(または取締役会)で決算の承認を受けてから申告書を出すのが本来の姿です。別表一に「決算確定の日」を書く欄があるのは、このためです。

2. 提出する書類一式

提出する書類は、法人税申告書(各別表)、決算報告書(B/S・P/L・株主資本等変動計算書・個別注記表)、勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書の4点セット。該当すれば適用額明細書・出資関係図も。

▲ 法人税の確定申告で税務署に提出する書類を示した図。法人税申告書(各別表)、決算報告書(貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表)、勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書の4点が基本であり、租税特別措置を使う場合の適用額明細書や、完全支配関係がある場合の出資関係図が加わることを表す。

税務署に出すのは、次の4点が基本です。

法人税申告書(各別表)。 別表一を表紙に、別表四・五(一)・五(二)などが続きます。どの別表が必要かは会社によって違い、減価償却があれば十六、交際費があれば十五、というように、自社に関係するものを揃えます。

決算報告書。 貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表です。会計ソフトの決算書出力がそのまま使えます。

勘定科目内訳明細書。 決算書の金額を、相手先ごとに分解したもの(実務講座⑫)。

法人事業概況説明書。 会社全体の姿を1〜2枚で示すもの(実務講座⑬)。

これに加えて、少額減価償却資産の特例など租税特別措置を使う年は適用額明細書が必要です。完全支配関係がある法人があるときは出資関係図も添えます。

ここで押さえておきたいのが、赤字でも申告は必要だという点です。法人税がゼロでも、申告書を出さなければ青色欠損金を繰り越せません(実務講座⑥)。しかも地方税の均等割は赤字でも発生します(実務講座⑭)。「赤字だから出さなくていい」は、いちばん損をする選択です。

3. 別表を作る順番

別表は、番号順に作るものではありません。作りやすい順番があります。

まず、加算・減算の根拠になる個別の別表から手をつけます。減価償却があれば十六、交際費があれば十五、受取配当があれば八(一)、源泉所得税があれば六(一)。これらで「いくら加算するか・減算するか」が決まります。

次に、それらを集めて別表四で所得を計算します。ここが申告書の心臓部です。加算・減算には留保と社外流出の区別があり、留保は別表五(一)に積み上がっていきます。

所得が出たら、別表七(一)で繰越欠損金を控除し、別表一で税額を計算します。同族会社の判定(別表二)は、株主構成が変わっていなければ前期の内容をそのまま踏襲できます。

最後に、別表五(二)で税金の納付状況を整理し、別表五(一)で利益積立金を締めます。別表五(一)は、別表四の留保と別表五(二)の税金の両方を受け止める場所なので、いちばん最後に完成させるのが自然です。

会計ソフトを使えば、この順番はほぼ自動で処理されます。それでも順番を知っておくと、数字が合わないときにどこを見ればいいかが分かります。

数字が合わないときのたどり方も、覚えておくと役立ちます。別表五(一)の期末残高が合わないなら、別表四の留保欄と別表五(二)の税金の動きを見ます。所得の金額に違和感があるなら、別表四の加算・減算の一つひとつを、根拠となる別表(十六・十五・八(一)など)と突き合わせます。税額が想定と違うなら、別表七(一)の繰越欠損金の控除と、別表六(一)の所得税額控除を確認します。どの数字も必ずどこかの別表から来ているので、流れをさかのぼれば原因にたどり着けます。

4. 決算後2か月のスケジュール ― 3月決算の場合

3月決算の会社は、5月31日が申告・納付期限。4月に決算整理と残高確定、5月前半に別表と添付書類の作成、5月中旬に株主総会で決算承認、5月下旬にe-Tax・eLTAXで申告と納付。

▲ 3月決算の会社の決算後2か月のスケジュールを示した図。決算日の3月31日から2か月後の5月31日が申告・納付期限であり、4月に決算整理と残高の確定を行い、5月前半に別表と添付書類を作成し、5月中旬に株主総会で決算の承認を受け、5月下旬にe-TaxとeLTAXで申告して納付するという流れを表す。

3月決算のサンプル株式会社を例に、決算日から期限までの2か月を追ってみましょう。

4月:決算を固める。 3月末時点の残高を確定させます。預金残高の照合、売掛金・買掛金の相手先ごとの確認、棚卸、固定資産の確認、経過勘定の計上。ここで取引先ごとの残高を整理しておくと、内訳書の作成がそのまま進みます。

5月前半:申告書を作る。 決算書ができたら、別表を作成します。前章の順番で進め、内訳書と概況書も並行して作ります。この時点で税額が見えるので、納税資金の確認もしておきます。

5月中旬:決算を確定させる。 株主総会(小さな会社なら書面決議でも構いません)で決算の承認を受けます。この日が「決算確定の日」です。

5月下旬:申告と納付。 e-Taxで法人税・消費税、eLTAXで地方税を申告し、納付します。期限当日は混み合うので、数日前に済ませておくと安心です。

このスケジュールを楽にする鍵は、実は期中にあります。毎月の記帳を溜めずに進め、取引先を補助科目で管理し、固定資産台帳を更新しておく。それだけで、4月にやることは確認作業だけになります。逆に、1年分の記帳を決算後にまとめてやろうとすると、2か月では到底足りません。決算作業の重さは、期中の過ごし方で決まります。

なお、定款で株主総会を3か月以内と定めている会社は、申請により申告期限を1か月延長できます(3月決算なら6月末)。ただし納付期限は延びません。この場合は5月末までに見込納付をします(実務講座⑯)。

5. 年間の税務カレンダー

決算まわり以外にも、通年で決まった時期に来る手続きがあります。3月決算の会社を前提に、代表的なものを挙げます。

7月10日: 源泉所得税の納付(納期の特例を受けている場合の1〜6月分)。あわせて労働保険の年度更新、社会保険の算定基礎届もこの時期です。

9月〜11月: 上半期が終わり、前期の法人税額が20万円を超えていた会社は中間申告が必要です(3月決算なら11月末)。消費税の中間申告も、前期の税額に応じてこの時期に来ます。

12月: 年末調整。従業員から書類を集めて、その年の源泉所得税を精算します。

1月20日: 源泉所得税の納付(納期の特例の7〜12月分)。

1月31日: 源泉徴収票と法定調書合計表を税務署へ、給与支払報告書を市町村へ提出します。償却資産申告(固定資産税)も同じ期限です。

3月31日: 決算日。ここから2か月の申告作業が始まります。

このカレンダーを見ると、税務の仕事は決算期だけではないことが分かります。特に1月は、年末調整の後始末が集中する山場です。カレンダーに登録しておけば、思い出す手間そのものがなくなります。

6. 実務講座①〜⑯の目次 ― つまずいたら、この回に戻る

最後に、実務講座の全記事を並べておきます。作業中に迷ったら、該当する回に戻ってください。

申告書の中心をつくる

  • 【法人税の実務講座①】別表四の書き方・記入例をわかりやすく解説
  • 【法人税の実務講座②】別表一の書き方・記入例をわかりやすく解説
  • 【法人税の実務講座③】e-Taxで法人税を申告する手順をわかりやすく解説

税金と利益積立金を整理する

  • 【法人税の実務講座④】別表五(二)(租税公課の納付状況)の書き方をわかりやすく解説
  • 【法人税の実務講座⑤】別表五(一)の書き方・記入例をわかりやすく解説

加算・減算の根拠をつくる

  • 【法人税の実務講座⑥】別表七(一)(繰越欠損金)の書き方をわかりやすく解説
  • 【法人税の実務講座⑦】別表十六(減価償却)の書き方をわかりやすく解説
  • 【法人税の実務講座⑧】別表十五(交際費等)の書き方をわかりやすく解説
  • 【法人税の実務講座⑨】別表八(一)(受取配当等の益金不算入)の書き方をわかりやすく解説
  • 【法人税の実務講座⑩】別表六(一)(所得税額控除)の書き方をわかりやすく解説
  • 【法人税の実務講座⑪】別表二(同族会社の判定)の書き方をわかりやすく解説

添付書類をそろえる

  • 【法人税の実務講座⑫】勘定科目内訳明細書の書き方をわかりやすく解説
  • 【法人税の実務講座⑬】法人事業概況説明書の書き方をわかりやすく解説

申告書の外へ

  • 【法人税の実務講座⑭】法人住民税・事業税の申告書の書き方をわかりやすく解説
  • 【法人税の実務講座⑮】消費税の申告は法人税とどう違う?基本をわかりやすく解説
  • 【法人税の実務講座⑯】法人税の納付方法は?納め方・納付期限をわかりやすく解説

はじめて読む方は、①の別表四から順に進むのがおすすめです。所得の計算という申告書の背骨を先に押さえておくと、そのあとの別表がすべて「別表四のどこにつながる数字なのか」という視点で読めるようになります。

自分で申告するのは、決して不可能ではありません。会計ソフトが計算の大部分を担ってくれる今、必要なのは「どの数字がどこへ流れるか」を理解しておくことです。それさえ分かっていれば、ソフトが出した結果を検証でき、税務署からの問い合わせにも自分で答えられます。

とはいえ、無理をしない判断も大切です。組織再編や特殊な取引があった年、多額の設備投資をした年、税務調査を受けたときなどは、専門家に相談するほうが結果的に安く済みます。日常の申告は自分で、判断が必要な場面は専門家と――この使い分けが、中小企業にとって現実的な形だと思います。

初めて自分で申告する年に、特に気をつけたい落とし穴を3つ挙げておきます。1つめは、届出の出し忘れです。青色申告の承認申請、消費税の簡易課税選択、減価償却方法の届出などは、期限を過ぎると次の年まで使えません。計算は後からやり直せても、届出は取り戻せないのです。2つめは、納税資金です。法人税だけを見ていると、地方税と消費税が加わったときに足りなくなります。3つめは、期限の管理です。申告書が完成していても、送信し忘れれば無申告になります。この3つは、知識よりも段取りの問題なので、カレンダーとチェックリストで防げます。

7. 仕上げのチェックポイント

  • 申告は5ステップ。決算を締める→別表で所得と税額→添付書類→地方税・消費税→納付。決算の確定が申告の前提。
  • 提出書類は4点セット。申告書(各別表)・決算報告書・勘定科目内訳明細書・法人事業概況説明書。特例を使う年は適用額明細書も。
  • 赤字でも申告する。青色欠損金の繰越(10年)ができなくなり、均等割は結局かかる。
  • 期限は決算日の翌日から2か月以内。申告期限は延長できても納付期限は延びない(見込納付)。
  • 決算期以外にも手続きがある。7月10日・1月20日の源泉所得税、1月31日の法定調書と償却資産申告、上半期後の中間申告。

まとめ:法人税を自分で申告するための要点

  • 流れは決算 → 別表 → 添付書類 → 地方税・消費税 → 納付の一本道。この順番を押さえれば、作業の全体像が見える。
  • 別表は根拠となる個別の別表 → 別表四 → 別表七(一)・別表一 → 別表五(二) → 別表五(一) の順に作ると迷わない。
  • 提出は申告書・決算報告書・内訳書・概況書の4点が基本。赤字でも必ず申告する。
  • 3月決算なら5月31日が申告・納付期限。4月に決算を固め、5月前半に申告書、中旬に決算確定、下旬に申告・納付。
  • 年間では7月10日・1月20日(源泉所得税)、1月31日(法定調書・償却資産申告)、上半期後の中間申告が定例。

実務講座は、これで全17回が完結です。決算書から始まって、別表を組み立て、添付書類を添え、地方税と消費税を申告し、納付するところまで――中小企業の法人税申告に必要な作業を、ひととおり見てきました。あとは、実際の申告で手を動かしてみてください。1年目は時間がかかっても、2年目からは前期の申告書が最良の教科書になります。

  • 前回:【法人税の実務講座⑯】法人税の納付方法は?納め方・納付期限をわかりやすく解説
  • シリーズの最初から読む:【法人税の実務講座①】別表四の書き方・記入例をわかりやすく解説

あわせて読みたい

  • 【法人税の基礎講座①】法人税とは?仕組み・税率・申告の流れをやさしく解説
  • 【法人税の基礎講座②】決算書から申告へ|決算と申告の関係をわかりやすく

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。記載のスケジュール・書類は一般的な中小企業を想定した例であり、実際の手続きは法人の状況により異なります。期限や制度は改正されることがあります。実際の申告にあたっては、最新の情報を国税庁等で確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次