【法人税の理論講座⑧】損益計算書・貸借対照表の読み方をわかりやすく解説

決算書と聞くと、数字がびっしり並んだ書類を思い浮かべて、それだけで身構えてしまう方が多いようです。

でも、決算書の中心にある2つの表は、それぞれ役割がはっきりしています。損益計算書は1年間の成績表、貸借対照表は期末時点の財産目録。 この違いさえつかめば、どこを見ればいいかが分かってきます。

そして、法人税の申告書は、この決算書から出発します(実務講座①)。決算書が読めるようになると、申告書の意味も見えてくる。今回は、サンプル株式会社を例に、2つの表の読み方を整理します。

目次

1. 2つの表は、役割が違う

損益計算書は1年間の経営成績(フロー)、貸借対照表は期末時点の財政状態(ストック)。前者は期間の記録、後者は瞬間の記録。

▲ 損益計算書と貸借対照表の役割の違いを示した図。損益計算書は1年間という期間の経営成績を表すフローの情報であるのに対し、貸借対照表は決算日という一時点の財政状態を表すストックの情報であり、前者は期間の記録、後者は瞬間の記録であることを表す。

まず、2つの表の性格の違いを押さえましょう。

損益計算書(P/L)は、1年間の経営成績を表します。4月1日から3月31日まで、いくら売って、いくら使って、いくら儲かったのか。期間の記録です。

貸借対照表(B/S)は、決算日時点の財政状態を表します。3月31日という一瞬を切り取って、何を持っていて、どれだけ借りていて、正味いくらの会社なのか。時点の記録です。

たとえるなら、P/Lは1年間の家計簿、B/Sは年末時点の預金通帳と借金の一覧です。家計簿を見れば1年の収支が分かり、通帳を見ればいまの財産が分かる。どちらか一方では、会社の姿は分かりません。

会計では、P/Lのような期間の情報をフロー、B/Sのような時点の情報をストックと呼びます。1年間で貯めたお金がフロー、いま貯まっている残高がストック、という関係です。

2. 損益計算書の5つの利益

P/Lは、上から順に費用を差し引いていく構造になっています。そして途中に5つの利益が出てきます。

P/Lの5つの利益:売上総利益(粗利)→営業利益(本業の儲け)→経常利益(会社全体の実力)→税引前当期純利益→当期純利益(最終的な手取り)。

▲ 損益計算書に現れる5つの利益を示した図。売上高から売上原価を引いた売上総利益、そこから販売費及び一般管理費を引いた営業利益、営業外収益と営業外費用を加減した経常利益、特別利益と特別損失を加減した税引前当期純利益、そして法人税等を引いた当期純利益という順に、上から段階的に計算されることを表す。

売上総利益(粗利)。 売上高から売上原価を引いたものです。商品やサービスそのものが持つ利益で、ここが薄いと、あとで何をしても苦しくなります。

営業利益。 売上総利益から、販売費及び一般管理費(人件費・家賃・広告費など)を引いたものです。本業でどれだけ儲かったかを示す、いちばん重要な利益といえます。

経常利益。 営業利益に、営業外収益(受取利息・受取配当など)を足し、営業外費用(支払利息など)を引いたものです。本業に財務活動の影響を加えた、会社全体の平常時の実力を表します。

税引前当期純利益。 経常利益に、特別利益(固定資産の売却益など)と特別損失(災害損失など)を加減したものです。その年だけの臨時的な要因を含んだ利益になります。

当期純利益。 税引前当期純利益から法人税等を引いた、最終的に会社に残る利益です。そして、この当期純利益こそが、法人税の申告書(別表四)の出発点になります。

5つも利益があるのは、どこで儲けて、どこで失ったのかを段階的に見せるためです。たとえば、営業利益は黒字なのに経常利益が赤字なら、本業は順調でも借入金の利息が重すぎる、と分かります。逆に、営業利益が赤字なのに当期純利益が黒字なら、資産を売った利益で見かけを取り繕っている可能性がある。利益を1つの数字で見ないことが、P/Lを読むコツです。

もうひとつのコツは、前期と並べて見ることです。今期の営業利益が300万円だったとして、それが良いのか悪いのかは、単年では分かりません。前期が500万円だったなら悪化、100万円だったなら改善です。さらに、売上高に対する各利益の比率(売上高営業利益率など)を出しておくと、規模が変わっても比較できます。決算書は、1年分だけを眺めるより、2期・3期を並べたときに初めて意味を持ちます。

3. 貸借対照表の3つの箱

B/Sは、左に資産、右上に負債、右下に純資産という3つの箱でできています。

B/Sの構造:左側が資産(お金の使い道)、右側が負債と純資産(お金の出どころ)。左右は必ず一致する。

▲ 貸借対照表の構造を示した図。左側には資産が並び、これは集めたお金が何に形を変えているかというお金の使い道を表すのに対し、右側には負債と純資産が並び、これはそのお金をどこから調達したかというお金の出どころを表すこと、左側の合計と右側の合計は必ず一致することを表す。

資産(左側) は、会社が持っているものです。現金預金、売掛金、商品、建物、車両など。集めたお金が何に形を変えているかを示しています。

負債(右上) は、返さなければならないものです。買掛金、未払金、借入金など。他人から調達したお金なので、他人資本とも呼ばれます。

純資産(右下) は、返さなくてよいものです。株主が出資した資本金と、これまでに稼いで会社に残してきた利益剰余金が中心です。自己資本とも呼ばれます。

ここで大事なのが、左右が必ず一致することです。だから「バランスシート」と呼ばれます。理由は単純で、右側はお金の出どころ、左側はその使い道だからです。調達した金額と、それが形を変えた金額は、当然一致します。

そして、資産と負債はさらに流動と固定に分かれます。おおまかにいえば、1年以内に現金化・支払いになるものが流動、それより先が固定です。流動資産が流動負債より十分に多ければ、当面の支払いに困りにくい、という見方ができます。

中小企業のB/Sで、特に注意して見たい項目が2つあります。ひとつは役員貸付金です。会社から社長へ貸し付けたお金がここに残っていると、金融機関から「私的な流用ではないか」と見られることがあります。実務講座⑫で、株主・役員への貸付金は50万円未満でも内訳書に個別記載する決まりだったのは、この重要性の裏返しです。

もうひとつは利益剰余金です。ここがプラスで積み上がっていれば、これまで利益を出して会社に残してきた証拠になります。逆にマイナス(繰越欠損金がある状態)なら、過去の赤字がまだ回収できていないということ。銀行が決算書を見るとき、当期の利益と同じくらい、この蓄積を重視します。

4. 2つの表は、どこでつながるか

P/LとB/Sは、別々の表に見えて、実はつながっています。つなぎ目は当期純利益です。

P/Lで計算された当期純利益は、配当などで社外に出た分を除いて、B/Sの純資産(繰越利益剰余金)に積み上がります。1年間稼いだ結果が、期末時点の会社の厚みになるわけです。

だから、毎年利益を出している会社は純資産が厚くなり、赤字が続く会社は純資産が薄くなります。純資産がマイナスになった状態が債務超過で、資産をすべて売っても負債を返しきれない状態を意味します。

この構造は、法人税の申告書にもそのまま現れます。 実務講座①で見たとおり、別表四は当期純利益から始まります。そして実務講座⑤の別表五(一)は、利益積立金という「税務版の純資産」を管理する表でした。P/L→B/Sという会計の流れが、別表四→別表五(一)という税務の流れに対応しているわけです。理論講座④で見た留保が別表五(一)に積み上がるのも、同じ構造によります。

5. 記入例:サンプル株式会社

サンプル株式会社(Web制作業)で、実際の数字を当てはめてみましょう。これまでの実務講座で使ってきた設定と同じです。

サンプル株式会社のP/LとB/S:売上高3,000万円から費用を引いて当期純利益、B/Sは資本金300万円と利益剰余金が純資産に。

▲ サンプル株式会社の損益計算書と貸借対照表の関係を示した図。損益計算書では売上高3,000万円から売上原価と販売費及び一般管理費を差し引いて営業利益を計算し、最終的に当期純利益を求めること、その当期純利益が貸借対照表の純資産にある繰越利益剰余金へ積み上がり、資本金300万円と合わせて会社の純資産を構成することを表す。

P/Lを見ます。 売上高は3,000万円。ここから外注費などの売上原価を引いて売上総利益が出ます。さらに、役員報酬・給与・地代家賃・減価償却費といった販売費及び一般管理費を引くと、営業利益が出ます。Web制作業は人件費の割合が高いので、この販管費が大きくなりやすい業種です。借入金があれば支払利息を引いて経常利益。特別なことがなければ、これが税引前当期純利益になり、法人税等を引いて当期純利益が確定します。

B/Sを見ます。 資産の側には、預金のほか、実務講座⑫で分解した売掛金150万円、実務講座⑦で見た機械装置などが並びます。負債の側には買掛金や未払金、借入金。純資産の側には、資本金300万円と、これまで積み上げてきた利益剰余金が入ります。

そして、2つはつながります。 当期純利益は、B/Sの繰越利益剰余金に加算されます。もし当期純利益が200万円なら、純資産はその分だけ厚くなる。翌期のB/Sは、この厚くなった状態から始まります。

ここで、実務講座⑬の概況書を思い出してください。概況書には主要科目として売上高や人件費を書く欄がありました。あれは、このP/Lから転記していたわけです。実務講座⑫の内訳書も、このB/Sの売掛金や買掛金を相手先ごとに分解したものでした。決算書が中心にあって、内訳書と概況書がそれを別の角度から見せている――この関係が見えてくると、書類の意味がつながります。

6. 利益とお金は、一致しない

最後に、決算書を読むうえで最も大事なことをお伝えします。利益が出ていても、お金があるとは限らないということです。

理由はいくつもあります。売上を計上しても、代金が売掛金のままなら現金は入っていません。商品を仕入れて在庫のまま残っていれば、お金は出たのに費用にはなっていない。借入金を返済しても、それは費用ではないのでP/Lには表れませんが、現金は確実に減ります。逆に、減価償却費は費用として利益を減らしますが、その年に現金が出ていくわけではありません。

だから、「黒字なのに資金繰りが苦しい」という状況が普通に起こります。黒字倒産という言葉があるのは、このためです。

実務講座⑯で見たとおり、法人税は決算後2か月以内に納めます。利益が出ていれば納税額も大きくなりますが、その利益が売掛金や在庫の形で寝ていれば、納税資金が足りなくなる。だから、P/Lの利益とあわせて、B/Sの現金預金と売掛金の残高を見ておく必要があるのです。

上場企業がキャッシュ・フロー計算書を作るのは、この「利益とお金のズレ」を示すためです。中小企業に作成義務はありませんが、利益とお金は別物という感覚だけは持っておきたいところです。

7. まとめ:決算書の読み方の要点

  • P/Lは1年間の経営成績(フロー)、B/Sは期末時点の財政状態(ストック)。役割が違うので、両方を見て初めて会社の姿が分かる。
  • P/Lには5つの利益。とくに営業利益(本業の儲け)と経常利益(会社全体の実力)を見る。利益を1つの数字で見ないこと。
  • B/Sは資産・負債・純資産の3つの箱。右側がお金の出どころ、左側がその使い道なので、左右は必ず一致する。純資産がマイナスなら債務超過
  • 2つの表は当期純利益でつながる。稼いだ利益が純資産に積み上がる。この構造は別表四→別表五(一)という税務の流れにも対応している。
  • 利益とお金は一致しない。売掛金・在庫・借入金の返済・減価償却が原因。黒字でも納税資金が足りなくなることがあるので、B/Sの現金預金もあわせて見る。

決算書は、税務署や銀行に出すためだけの書類ではありません。自分の会社がいまどういう状態にあるのかを、いちばん正確に教えてくれる資料です。年に一度、申告のときにだけ眺めるのではなく、月次の試算表の段階から同じ目で見る習慣をつけると、経営の判断が変わってきます。次回は、その決算書で費用として計上したもののうち、何が税務でも損金になるのかを整理します。

  • 前回:【法人税の理論講座⑦】法人税の実効税率とは?をわかりやすく解説
  • 次回:【法人税の理論講座⑨】損金になる経費・ならない経費をわかりやすく解説

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  • 【法人税の実務講座⑫】勘定科目内訳明細書の書き方をわかりやすく解説
  • 【法人税の理論講座④】留保と社外流出の違いをわかりやすく解説

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。記載の金額・科目は説明のための想定であり、実際の表示や区分は法人の状況や適用する会計基準により異なります。実際の決算・申告にあたっては、必要に応じて専門家にご相談ください。

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