【法人税の理論講座⑨】損金になる経費・ならない経費をわかりやすく解説

「これは経費になりますか」――経理でいちばん多い質問だと思います。

理論講座⑥で見たとおり、会計の費用と税務の損金は別物です。決算書で費用にしたからといって、そのまま損金になるとは限りません。では、その境目はどこにあるのでしょうか。

役員給与(理論講座②)、交際費(理論講座③)、減価償却(理論講座⑤)は、それぞれ個別に見てきました。今回はそれ以外の論点――税金、寄附金、引当金、修繕費――を扱いながら、そもそもどう判定するのかという考え方を整理します。

目次

1. 判定の3つの軸

損金になるかの判定は3ステップ。①事業に関係があるか ②債務が確定しているか ③別段の定めに引っかからないか。

▲ 損金になるかどうかの判定を3つの軸で示した図。まず事業に関係のある支出かどうかを確認し、次に期末までに債務が確定しているかどうかを確認し、最後に税法の別段の定めによる制限がないかどうかを確認するという3段階で判断することを表す。

損金になるかどうかは、次の3つを順に確認すると判断できます。

軸1:事業に関係があるか。 会社の事業のために支出したものかどうか。社長の個人的な買い物や、家族旅行の費用は、名目が何であれ損金になりません。役員に対する経済的な利益として、給与とみなされることもあります。「会社の口座から出たかどうか」ではなく、「事業のために使ったかどうか」が基準です。

軸2:債務が確定しているか。 費用として損金にするには、原則として期末までに債務が確定している必要があります。具体的には、①債務が成立していること、②その原因となる事実が発生していること、③金額を合理的に算定できること、の3つを満たすことです。「来年こうなりそうだから今のうちに費用にしておこう」という見込み計上は、税務では認められません。

この軸がよく問題になるのが、決算賞与です。期末までに支給していなくても、一定の要件を満たせば当期の損金にできます。具体的には、期末までに各人ごとの金額を通知し、翌期の一定期間内に実際に支払い、当期に費用として経理していること。逆にいえば、「決算で利益が出そうだから賞与を出すことにした」と決めただけで、通知も支払いもしていなければ損金になりません。債務確定とは、口約束ではなく事実の積み重ねで示すものだと考えてください。

軸3:別段の定めに引っかからないか。 上の2つを満たしても、税法が個別に制限をかけているものがあります。役員給与、交際費、寄附金、租税公課の一部などです。理論講座⑥で見たとおり、課税の公平や政策目的から置かれた制限です。

多くの支出は、軸1と軸2をクリアすれば損金になります。問題になるのは、軸3に引っかかるもの。以下では、そこを見ていきます。

2. 税金は、損金になるものとならないものがある

会社が払う税金のうち、損金になるものとならないものがあります。

損金になる税金とならない税金:事業税・固定資産税・印紙税などは損金、法人税・住民税・延滞税・罰金などは損金不算入。

▲ 租税公課の損金算入と損金不算入の区分を示した図。事業税や特別法人事業税、固定資産税、印紙税、自動車税、消費税(税込経理)、利子税などは損金に算入できるのに対し、法人税や地方法人税、法人住民税の本税、加算税や延滞税、罰金や科料などは損金に算入できないことを表す。

損金になるものは、事業活動に伴って生じる税金です。事業税・特別法人事業税、固定資産税・都市計画税、印紙税、自動車税、不動産取得税、税込経理の場合の消費税など。これらは事業を営むうえでの必要な負担なので、費用として認められます。

損金にならないものは、大きく2つに分かれます。ひとつは、所得に対してかかる税金。法人税、地方法人税、法人住民税の本税です。これらを損金にすると、税金を計算するために税金を引くという循環が起きてしまいますし、そもそも「儲けの分配」としての性格を持つからです。もうひとつは、ペナルティです。加算税、延滞税、延滞金、罰金・科料・過料(交通反則金を含む)など。制裁として課されたものを損金にすれば、罰の効果が薄れてしまいます。

ここで、実務講座⑯で見た論点を思い出してください。延滞税は損金にならないが、利子税は損金になる、という違いです。延滞税は期限に遅れたことへのペナルティ、利子税は正規の手続き(申告期限の延長)に伴う利息。性格が違うから、扱いも違うわけです。地方税でも同じで、通常の延滞金は損金不算入、納期限延長に係る延滞金は損金になります。

いつ損金になるかも押さえておきましょう。事業税や消費税のように自分で申告する税金(申告納税方式)は、申告書を提出した日を含む事業年度の損金です。だから事業税は翌期の損金になります(実務講座⑭・理論講座⑦)。一方、固定資産税のように通知が来る税金(賦課課税方式)は、賦課決定があった日の事業年度が原則です。

3. 寄附金には限度額がある

寄附金は、事業と直接の関係がなくても支出されるものなので、無制限に損金にすると利益調整に使われかねません。そこで、寄附先に応じた区分と限度額が設けられています。

国や地方公共団体への寄附金、財務大臣が指定した指定寄附金は、全額が損金になります。公益性が高く、利益調整の懸念が小さいからです。

特定公益増進法人(日本赤十字社、公益社団法人など)への寄附金は、一般の寄附金とは別枠の限度額まで損金になります。

一般の寄附金は、次の限度額までです。

(期末の資本金等の額 × 当期の月数÷12 × 2.5/1000 + 所得の金額 × 2.5/100)× 1/4

資本金と所得の両方を基準にしているのは、会社の規模と儲けに応じた常識的な範囲を認める、という考え方です。中小企業の場合、この限度額はかなり小さくなります。たとえば資本金300万円・所得500万円の会社なら、(300万円×2.5/1000+500万円×2.5/100)×1/4で、限度額は約3万3千円。寄附をしても、ほとんどが損金にならないのが実情です。

そして完全支配関係のある法人への寄附金は、全額が損金不算入です。グループ内でお金を動かして所得を移すことを防ぐためで、受け取った側も益金に入れません。

なお、理論講座④で見たとおり、寄附金の損金不算入額は社外流出です。永久に損金にならないので、別表五(一)には積み上がりません。

4. 引当金は、原則として損金にならない

会計では、将来の費用や損失に備えて引当金を計上します。賞与引当金、退職給付引当金、修繕引当金など。保守的に見積もるのが会計の姿勢だからです(理論講座⑥)。

ところが税務では、これらの引当金は原則として損金になりません。理由は、第1章の軸2にあります。債務が確定していないからです。将来支払うかもしれない、という段階では、まだ債務は確定していません。見積もりで損金を作れるとすれば、各社が自由に所得を圧縮できてしまいます。

ただし、例外があります。貸倒引当金です。中小法人等については、一定の繰入限度額まで損金算入が認められています。売掛金や貸付金が回収できなくなるリスクは事業に必ず伴うものなので、限度額を決めたうえで認めている、という位置づけです。

ここでも、理論講座④の視点が効いてきます。引当金の繰入超過額は留保です。実際に賞与を支払ったり、貸倒れが生じたりした年には損金になるので、いつか解消する差だからです。だから別表五(一)に積み上がり、将来取り崩されていきます。

5. 修繕費か、資本的支出か

もうひとつ、実務でよく迷うのが修繕費と資本的支出の区別です。

修繕費と資本的支出の違い:原状回復・維持管理は修繕費(その年の損金)、価値を高める・耐用年数を延ばす支出は資本的支出(資産計上して減価償却)。

▲ 修繕費と資本的支出の違いを示した図。壊れた箇所を元に戻す原状回復や通常の維持管理のための支出は修繕費としてその年の損金になるのに対し、資産の価値を高めたり使用可能期間を延ばしたりする支出は資本的支出として資産に計上し、減価償却を通じて複数年にわたって損金になることを表す。

修繕費は、壊れたところを元に戻したり、通常の維持管理をしたりする支出です。その年の損金になります。

資本的支出は、資産の価値を高めたり、使用可能期間を延ばしたりする支出です。これは資産として計上し、減価償却を通じて何年かかけて損金にしていきます(理論講座⑤)。

つまり、どちらに当たるかで、その年に損金になる金額が大きく変わるわけです。100万円の工事が修繕費なら100万円が今年の損金、資本的支出なら今年の損金は減価償却費の分だけになります。

区別の考え方はシンプルで、元に戻すだけなら修繕費、良くするなら資本的支出です。とはいえ、実際の工事は両方の性格が混ざるので、判断に迷います。そこで形式的な基準も用意されており、支出額が20万円未満のもの、おおむね3年以内の周期で行われるものは修繕費として扱えます。また、60万円未満、または前期末の取得価額のおおむね10%以下であれば、修繕費とすることが認められています。

実務のコツは、工事の内容が分かる資料を残しておくことです。見積書や工事内訳書に「どこを、なぜ、どう直したか」が書かれていれば、判断も説明もできます。「工事一式」としか書かれていない請求書だけでは、後から根拠を示せません。

6. 迷ったときの考え方

最後に、実務での向き合い方をまとめます。

まず、事業との関係を説明できるかを考えます。税務調査で問われるのは、突き詰めれば「なぜこの支出が事業に必要だったのか」です。ここに答えられない支出は、そもそも損金になりません。

次に、期末までに確定しているかを確認します。契約はしたが役務の提供は来期、というものは今期の損金になりません。逆に、支払いは来期でも、今期中にサービスを受けていて金額が確定していれば、未払計上して損金にできます。支払った時期ではなく、債務が確定した時期で判断するのが原則です。

ただし、この原則には実務上よく使われる例外があります。短期前払費用です。家賃や保険料のように、継続的にサービスを受けるための支出で、支払った日から1年以内にサービスの提供を受けるものは、支払った時点で損金にできます。毎期継続して同じ処理をすることが条件です。年払いの家賃を期末に支払って当期の損金にする、といった使い方ができますが、一度この処理を選んだら翌期以降も続ける必要がある点には注意が必要です。

最後に、別段の定めを確認します。 役員給与、交際費、寄附金、租税公課、引当金。これらは個別のルールがあるので、金額が大きいときは必ず確認します。

そして、記録を残すこと。ここまで何度も出てきましたが、税務の判断は最終的に「説明できるか」で決まります。会食の参加者、工事の内容、寄附先の性格。支出した時点で一言メモを残しておけば、決算のときも調査のときも困りません。会計ソフトの摘要欄は、そのためにあります。

7. まとめ:損金判定の要点

  • 判定の軸は3つ。①事業に関係があるか ②債務が確定しているか ③別段の定めに引っかからないか。多くの支出は①②で決まり、問題になるのは③。
  • 税金は損金になるものとならないものがある。事業税・固定資産税・印紙税などは損金、法人税・住民税の本税とペナルティ(加算税・延滞税・罰金)は損金不算入。延滞税は不算入だが利子税は損金算入
  • 寄附金は寄附先で扱いが変わる。国等・指定寄附金は全額損金、特定公益増進法人は別枠、一般寄附金は限度額まで、完全支配関係法人へは全額不算入。中小企業の限度額は小さい。
  • 引当金は原則損金にならない(債務未確定のため)。ただし中小法人等の貸倒引当金は限度額まで可。繰入超過額は留保なので、いつか解消する。
  • 修繕費か資本的支出かで、その年の損金額が変わる。元に戻すなら修繕費、良くするなら資本的支出。20万円未満・3年周期などの形式基準もある。工事内容の記録を残すこと。

「経費になりますか」という問いは、実は「事業に必要だと説明できますか」という問いと同じです。領収書があるかどうかではなく、その支出に事業上の意味があるか。そこさえ押さえておけば、細かいルールは調べれば済みます。次回は、支払う税金そのものを減らす仕組み――中小企業が使える税額控除を取り上げます。

  • 前回:【法人税の理論講座⑧】損益計算書・貸借対照表の読み方をわかりやすく解説
  • 次回:【法人税の理論講座⑩】中小企業向けの税額控除をわかりやすく解説

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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。記載の金額基準・計算式は一般的な場合を想定した説明であり、実際の取扱いは法人の状況により異なります。取扱いは改正されることがあります。実際の判断にあたっては、最新の情報を国税庁等で確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

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