【法人税の基礎講座⑩】法人税の別表とは?主要な別表の役割をまとめて解説

前回(第9回)までで、別表四(所得の計算)、別表五(一)(純資産の管理)、別表一(税額の計算・申告書の表紙)と、申告書の背骨となる別表を学んできました。サンプル株式会社の申告書も、ほぼ形になっています。

ただ、法人税の申告書には、ほかにもたくさんの別表があります。第10回の今回は、これまで触れていない主要な別表の役割を、まとめて整理します。一つひとつの細かい書き方ではなく、「どの別表が、何のためにあるのか」という地図を手に入れる回だと思ってください。この地図があると、申告書の束を前にしても、迷わずに全体を見渡せるようになります。

目次

1. 別表とは ― 申告書は「別表の束」

法人税の確定申告書は、一枚の紙ではありません。「別表」と呼ばれる、番号のついた計算用紙の集まり――いわばです。別表は、別表一から別表十八まで、たくさんの種類があります。

それぞれの別表には、役割の分担があります。ある別表は所得を計算し、ある別表は減価償却を計算し、ある別表は税金の納付状況を記録する、というように、項目ごとに専用の用紙が用意されているのです。そして、それらの計算結果が最後に別表四に集まり、別表一で税額として完成する――この流れは、第7回から第9回で見たとおりです。

大切なのは、すべての別表を出すわけではない、ということです。会社の状況に応じて、必要な別表だけを選んで提出します。たとえば、減価償却をする資産がなければ減価償却の別表は要りませんし、交際費を使っていなければ交際費の別表も要りません。逆に、どんな会社でもほぼ必ず出す別表もあります。「自分の会社には、どの別表が必要か」を見分けられるようになることが、申告書を理解する第一歩です。

2. まず背骨をおさらい ― 別表一・四・五(一)

地図の中心には、すでに学んだ3つの別表があります。ここを軸に、ほかの別表が枝のようにつながっていきます。

  • 別表四(所得の金額の計算に関する明細書)… 会計の利益に加算・減算をして、課税所得を計算する申告書の心臓部。
  • 別表五(一)(利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書)… 税務版の純資産の管理表。別表四の「留保」を翌期へ繰り越す。
  • 別表一(各事業年度の所得に係る申告書)… 各別表の結果を集め、税額を確定させる表紙。法人税と地方法人税を一枚で申告する。

この3つが、申告書の背骨です。これから紹介する別表は、いずれもこの背骨のどこかにつながり、最終的には別表四を通って別表一に流れ込みます。

なお、別表の番号の順番と、実際に作る順番は、必ずしも一致しません。たとえば別表四は「四」番ですが、各別表から数字が集まってくるので、実務ではいちばん最後のほうに仕上げます。番号は整理用の通し番号と考え、「数字がどう流れて別表四に集まるか」という関係のほうを意識すると、申告書の構造が、すっと頭に入ります。

法人税の別表 関連マップ:減価償却・交際費・受取配当・寄附金・租税公課・繰越欠損金などの明細書がすべて別表四(所得の計算のハブ)に集まり、別表四から別表一(税額の計算・申告書の表紙)へ流れる。別表四の留保は別表五(一)へ連動し、別表二(同族会社の判定)と別表六(一)(所得税額控除)は別表一につながる。

▲ 法人税の別表 関連マップ。各項目の明細書はすべて別表四に集まり、別表四から別表一で税額が完成します。

3. 同族会社を判定する「別表二」

どんな中小企業でも、ほぼ必ず出すのが「別表二」です。正式名称は「同族会社等の判定に関する明細書」。その名のとおり、自分の会社が同族会社かどうかを判定するための別表です。

「同族会社」とは、ざっくり言えば、少数の株主とその身内で支配されている会社のことです。正確には、3人以下の株主のグループ(それぞれの親族なども含む)が、発行済株式の50%超を持っている会社をいいます。日本の中小企業の多くは、社長とその家族が株式を持っているので、この同族会社に当てはまります。

では、なぜわざわざ判定するのでしょうか。それは、同族会社には、ふつうの会社とは違う特別なルールがいくつか適用されるからです。たとえば、社長の身内で一定の株式を持って経営に関わっている人を役員とみなす「みなし役員」の扱いや、税負担を不当に減らす行為を税務署が否認できる規定などです。判定の結果は、こうしたルールを適用するかどうかの出発点になります。だから、まず別表二で「うちは同族会社です」とはっきりさせておくわけです。

さらにもう一段、厳しい区分があります。1つの株主グループだけで50%超を支配している会社は「特定同族会社」と呼ばれ、利益を配当せず社内にためすぎると、通常の法人税に上乗せで税金がかかる「留保金課税」の対象になりえます。ただし、ここで中小企業にとって朗報があります。資本金1億円以下の会社は、この留保金課税の対象から外れているのです(資本金5億円以上の大法人の完全支配下にある場合などを除きます)。

サンプル株式会社(資本金300万円)で考えてみましょう。この会社は、社長が株式の大半を持つ同族会社にあたるでしょう。ですから別表二は提出します。けれども、資本金は300万円で1億円以下ですから、留保金課税の心配はありません。利益をいくら社内にためても、留保金課税はかからないのです。したがって、留保金課税の計算をする「別表三(一)」も、通常は出す必要がありません。「同族会社だが、資本金が小さいので留保金課税はない」――これが、多くの中小企業に当てはまる結論です。

同族会社の判定が実務で効いてくる場面も、少し具体的に見ておきましょう。たとえば、社長の配偶者や子どもが会社の株式を一定割合持ち、経営にも関わっている場合、その人は本人としては「従業員のつもり」でも、税務上は「みなし役員」として、役員と同じ扱いを受けることがあります。すると、第6回で学んだ役員給与のルール(賞与は原則として損金にならない、など)が、その人の給与にも当てはまってしまいます。家族を従業員として雇っているつもりが、税務上は役員と判定されて、思わぬ課税につながる――同族会社では、こうしたことが起こりえます。別表二での判定は、その前提になるため、形式的に見えて、実はとても大事なのです。

4. 税金の納付状況を記録する「別表五(二)」

別表二と並んで、ほとんどの会社が出すのが「別表五(二)」です。正式名称は「租税公課の納付状況等に関する明細書」。会社が納める税金(法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税など)について、いつ・いくら納めたかを記録する別表です。

ここでは、税金ごとに、期首に未納だった額・当期に発生した額・当期に納めた額・期末になお未納の額、という流れで整理していきます。預金通帳のように、税金の出入りを一覧で管理するイメージです。

この別表五(二)は、第8回で学んだ「納税充当金(未払法人税等)」と深くつながっています。決算で「これから払う税金」を未払いとして計上した額や、それを実際に納めた額が、ここに表れるからです。さらに、税金には損金になるもの損金にならないものがあり、その区別を整理する役割も担っています。

具体的には、法人税・地方法人税・法人住民税は損金になりません。一方で、法人事業税や固定資産税、自動車税などは損金になります。また、納期限に遅れたときの延滞税や加算税といったペナルティ的な税も、損金にはなりません。これらを別表五(二)できちんと区分しておくことで、別表四での加算(損金にならない税を足し戻す)が正しくでき、結果として課税所得の計算がぶれずに済みます。別表五(二)で整理した内容が、別表四の加算・減算へとつながっていくのです。地味な別表ですが、税金まわりの整合性を支える、縁の下の力持ちといえます。

5. その他、知っておきたい主要な別表

ここまでの別表二・別表五(二)は、多くの会社が出すものでした。ここからは、「その項目がある会社だけ出す」別表を、これまでの回と結びつけて紹介します。

  • 別表十五(交際費等の損金算入に関する明細書)… 第6回で学んだ交際費の計算。中小企業の「800万円定額控除」か「接待飲食費の50%」かを、ここで計算します。交際費を使った会社が出します。
  • 別表十六(減価償却資産の償却額の計算に関する明細書)… 第5回で学んだ減価償却。定額法は別表十六(一)、定率法は別表十六(二)、少額減価償却資産の特例は別表十六(七)です。固定資産がある会社が出します。
  • 別表八(一)(受取配当等の益金不算入に関する明細書)… 第4回で触れた、受取配当の益金不算入の計算。株式を持ち配当を受けた会社が出します。
  • 別表六(一)(所得税額の控除に関する明細書)… 預金利息などから天引き(源泉徴収)された所得税を、法人税から差し引くための別表。税額控除の一種で、利息や配当を受け取った会社が出します。
  • 別表七(一)(欠損金等の損金算入等に関する明細書)… 過去の赤字(繰越欠損金)を、当期の黒字と相殺するための別表。これは第12回で詳しく扱います。
  • 別表十四(二)(寄附金の損金不算入額の計算に関する明細書)… 寄附をした会社が、損金にできる限度額を計算する別表。第4回で触れた、寄附金の限度額の計算をここで行います。

このほかにも、貸倒引当金の別表十一など、項目に応じてさまざまな別表があります。すべてを覚える必要はありません。「こういう項目を扱うときは、専用の別表がある」という地図さえ頭に入っていれば、いざ必要になったときに、迷わずたどり着けます。会計ソフトを使えば、必要な別表は自動で選ばれ、数字も連動して埋まっていきますが、その裏でどんな別表が動いているのかを知っておくと、出てきた申告書の意味がはっきり読み取れるようになります。

なお、申告書には、別表のほかに「添える書類」もあります。代表的なのが「勘定科目内訳明細書」(売掛金・買掛金などの内訳を示す書類)と「法人事業概況説明書」(会社の事業内容や従業員数などをまとめた書類)です。これらは別表ではありませんが、申告のときにいっしょに提出するのが原則です。別表が「税額を計算するための用紙」だとすれば、これらは「会社の中身を税務署に説明するための書類」という位置づけです。あわせて知っておくと、申告に必要な書類の全体像が、よりはっきりします。

6. ケーススタディ:サンプル株式会社が出す別表の束

最後に、サンプル株式会社が実際に提出する別表の束を、組み立ててみましょう。

サンプル株式会社(おさらい) – Web制作業/資本金300万円(同族会社)/3月決算/課税所得585万円

この会社が出す別表は、おおむね次のようになります。

  • 別表一(税額の計算・表紙)… 必須。
  • 別表二(同族会社の判定)… 同族会社なので提出。ただし資本金300万円のため留保金課税はなく、別表三(一)は不要。
  • 別表四(所得の計算)… 必須。
  • 別表五(一)(純資産の管理)… 必須。
  • 別表五(二)(税金の納付状況)… 必須。
  • そのほか、減価償却があれば別表十六、交際費があれば別表十五、受取配当があれば別表八(一)、源泉所得税があれば別表六(一)を、必要に応じて追加。

このように、中小企業の申告書は、必須の別表(一・二・四・五(一)・五(二))を土台に、その会社にある項目の別表を足していく形になります。そして、それらの計算はすべて別表四に集まり、別表一で税額として完成する――第7回から続いた申告書の全体像が、ここでようやく一枚の地図として完成します。「全部の別表を出すのではなく、必要なものだけ」「すべては別表四に集まり、別表一で締めくくる」。この2つを押さえておけば、もう申告書の束に圧倒されることはありません。実際の申告では、会計ソフトが会社の状況に合わせて必要な別表をそろえ、数字も連動して埋めてくれますが、こうして全体の地図を持っておくことで、出てきた申告書を「読める」ようになります。

まとめ:第10回のポイント

  • 法人税の申告書は、別表一〜十八などの「別表の束」。会社の状況に応じて、必要な別表だけを出す。
  • 背骨は別表一(表紙・税額)・別表四(所得計算)・別表五(一)(純資産)。すべての計算は別表四に集まり、別表一で完成する。
  • 別表二は同族会社の判定。中小の多くは同族会社。特定同族会社の留保金課税は、資本金1億円以下なら対象外(だから別表三は通常不要)。
  • 別表五(二)は税金の納付状況の記録。納税充当金や、損金になる税・ならない税の整理とつながる。
  • 項目に応じて、交際費の別表十五、減価償却の別表十六、受取配当の別表八(一)、源泉所得税の別表六(一)、欠損金の別表七(一)などを追加する。

申告書という束の全体像が、地図として見えてきました。残るは、会社の利益にかかる「もう一つの世界」――地方税です。次回(第11回)は、法人税とは別に納める法人住民税・法人事業税などの地方税を取り上げます。赤字でもかかる均等割や、実際の負担割合(実効税率)まで、わかりやすく解説します。

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※本記事は、一般的な情報を分かりやすくまとめたものです。会計・税務の具体的な取り扱いは状況により異なります。税制改正により内容が変わる場合もありますので、正確な情報は国税庁のサイト等でご確認いただくか、専門家へご相談ください。

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