【法人税の理論講座④】留保と社外流出の違いをわかりやすく解説

法人税の申告書を書いていて、多くの人が最初につまずくのが、別表四の「留保」と「社外流出」という2つの欄です。

同じ加算なのに、なぜ2つに分けるのか。どちらに書くかで何が変わるのか。用語だけ見ると分かりにくいのですが、実は考え方はとてもシンプルです。その差が、いつか解消するのか、それとも永久に解消しないのか。 ただそれだけの違いです。

今回は、この区分の意味を、代表例を使って解きほぐしていきます。理解できると、別表四と別表五(一)がなぜつながっているのかまで、一本の線で見えてきます。

目次

1. 同じ「加算」でも、行き先が違う

留保と社外流出の違い。留保は会社の中にお金や価値が残り、将来解消する差(別表五(一)へ積み上がる)。社外流出は会社の外へ出て永久に解消しない差(別表五(一)に出てこない)。

▲ 留保と社外流出の違いを示した図。留保は会計と税務の差が会社の内部に残っていて将来解消するものであり別表五(一)の利益積立金に積み上がるのに対し、社外流出は支出したお金が会社の外へ出てしまい永久に解消しない差であるため別表五(一)には積み上がらないことを表す。

まず、別表四が何をしているかを思い出しましょう。会計上の利益に、税務のルールで加算・減算を加えて、法人税の所得を計算する――これが別表四の役割です(実務講座①)。

このとき、加算・減算のそれぞれに、留保と社外流出という区分があります。判断基準は次のとおりです。

留保は、会計と税務の差が、会社の中に残っているものです。お金や資産の価値が社外に出ていったわけではなく、単に「費用として認めるタイミング」が会計と税務でずれているだけ。だから、いつか必ず解消します。

社外流出は、お金や価値が会社の外へ出ていったもの、あるいは会社の中に残っていても永久に解消しない差です。将来にわたって取り戻すことはありません。

この違いが、決定的な結果を生みます。留保は別表五(一)に積み上がり、社外流出は積み上がりません。 別表五(一)は、会計と税務のズレの残高を管理する表です(実務講座⑤)。いつか解消するものは、解消するまで残高として管理しておく必要がある。逆に、永久に解消しないものは、管理する必要がないので、その年に加算して終わりです。

2. 留保の代表例 ― 減価償却超過額

留保がいちばん分かりやすいのは、減価償却です。実務講座⑦で見た数字で追ってみましょう。

減価償却超過額の動き。1年目は会計70万円・税務40万円で超過30万円を加算(留保)し別表五(一)へ。2年目は限度額32万円に対し会計15万円なので17万円が認容され減算(留保)、残高13万円。

▲ 減価償却超過額が留保として動く仕組みを示した図。1年目は会計上の減価償却費70万円に対し税務上の限度額が40万円のため差額30万円を別表四で加算し留保として別表五(一)に積み上げ、2年目は税務上の限度額32万円に対し会計上の償却費が15万円にとどまるため差額17万円が認容されて別表四で減算され、別表五(一)の残高が13万円に減ることを表す。

機械装置を200万円で取得し、税務上の償却限度額が40万円だったとします。ところが会社は、実態に合わせて会計上70万円の減価償却費を計上しました。

差額の30万円は、税務では損金になりません。そこで別表四で加算します。このとき、この30万円はどこへ行ったでしょうか。 どこへも行っていません。会社は現金を支払ったわけではなく、帳簿上で価値を減らしただけです。機械そのものは会社の中にあります。だから留保です。

そして、この30万円は永久に損金にならないわけではありません。会計が先に費用にしただけなので、その資産の会計上の償却が進んで、税務の限度額に届かない年が来れば、そこで認容されます。実際、翌期は税務の限度額32万円に対して会計の償却費が15万円だったので、差額の17万円が認容され、別表四で減算されます。別表五(一)の残高は13万円に減ります。

つまり、留保とは時間差なのです。会計が先に費用にした分を、税務が後から追いかける。トータルで見れば、取得価額の全額がいずれ損金になります。違うのは、損金になるタイミングだけ。だから、その差を別表五(一)で残高管理しておく必要があるのです。

留保になるものは、ほかにもあります。貸倒引当金の繰入超過額は、会計上は将来の貸倒れに備えて費用にしても、税務上の繰入限度額を超えた部分は損金になりません。ただし、実際に貸倒れが起きれば、その時点で損金になります。未払事業税も留保です。事業税は納付した期の損金になるので(実務講座⑭)、決算で未払計上した年はいったん加算し、翌期に納付したときに減算されます。棚卸資産の評価損の否認も同じで、税務上認められない評価損はいったん加算されますが、その資産を売却したときに解消します。

どれも「会社の中に残っていて、いつか解消する」という点で共通しています。逆にいえば、この2つを満たすなら留保だと判断してよい、ということです。

3. 社外流出の代表例 ― 交際費

一方、社外流出の代表が交際費です。実務講座⑧の例で見てみましょう。

交際費が年900万円で、中小法人の限度額800万円を超えたとします。超過した100万円は損金になりません。別表四で加算します。

ここで、先ほどと同じ問いを立てます。この100万円はどこへ行ったでしょうか。 取引先との会食や贈答に使われ、会社の外へ出ていきました。会社の中には何も残っていません。だから社外流出です。

そして、この100万円が将来損金になることは、ありません。翌年になっても、その次の年になっても、戻ってきません。永久に損金にならない差なので、別表五(一)で残高を管理する意味がないのです。

減価償却超過額と交際費を並べると、違いがはっきりします。どちらも「加算」で、どちらも「その年は損金にならない」。でも、減価償却超過額はいつか損金になり、交際費は永久に損金にならない。同じ加算でも、その後の運命がまったく違うわけです。

社外流出の仲間も見ておきましょう。寄附金の損金不算入額は、交際費と同じく支出したお金が外へ出ていき、限度超過分は永久に損金になりません。役員給与の損金不算入額(理論講座②)も同じで、支払った給与が要件を満たさなければ、その分は二度と損金になりません。法人税・住民税も社外流出です。これらは少し性格が違うので、次の章で詳しく見ます。

こうして並べると、社外流出には「ペナルティ的な性格を持つもの」が多いことに気づきます。無駄づかいを抑えたい(交際費)、お手盛りを防ぎたい(役員給与)、税金は税金から引かせない(法人税)。永久に損金にしないという扱いは、税制上いちばん厳しい扱いなのです。

4. どちらか迷ったときの考え方

留保と社外流出の判定:会社の外へお金や価値が出たか?出ていない=留保、出た=社外流出。将来解消するか?するなら留保、しないなら社外流出。

▲ 留保と社外流出を判定する考え方を示した図。会社の外へお金や価値が出ていったかどうかを確認し、出ていないなら留保、出ているなら社外流出と判断すること、あわせてその差が将来解消するかどうかを確認し、解消するなら留保、永久に解消しないなら社外流出と判断することを表す。

実務で迷ったときは、次の2つを自問すると整理できます。

問い1:会社の外へ、お金や価値が出ていったか。 出ていないなら留保、出ているなら社外流出です。減価償却は帳簿上の処理なので出ていない。交際費は実際に支払って出ていった。この違いです。

問い2:その差は、将来解消するか。 解消するなら留保、永久に解消しないなら社外流出です。減価償却超過額は将来認容されるので解消する。交際費は永久に損金にならないので解消しない。

多くの場合、この2つの問いは同じ答えになります。会社の中に残っているものは、いつか解消することが多いからです。まずは問い1で見当をつけ、迷ったら問い2で確かめる、という順序が実務的です。

ただし、例外もあります。代表が法人税・住民税です。これらは実際に支払って会社の外へ出ていきますが、税法上そもそも損金にならないと決められているため、将来にわたって解消しません。だから社外流出です。会計上の費用として計上しても、税務では永久に認められない――問い2の観点で社外流出になるわけです。

もうひとつ、受取配当等の益金不算入も押さえておきましょう。これは加算ではなく減算ですが、区分は社外流出です(実務講座⑨)。受け取った配当は会社の中に入ってきているのに社外流出、というのは直感に反しますが、「永久に解消しない差」という基準で見れば筋が通ります。二重課税を避けるために、税務では永久に益金に含めないと決めた差なので、将来元に戻ることはないのです。

ここから分かるのは、「社外流出」という言葉は、お金が外に出たことより、永久に解消しないことを本質としているということです。名前に引きずられると、受取配当の扱いで必ず混乱します。

5. 会計の言葉でいえば ― 一時差異と永久差異

会計を学んだことがある方には、別の説明のほうが早いかもしれません。

留保は、会計でいう一時差異にあたります。会計と税務で認識のタイミングが違うだけで、いずれ解消する差。だから税効果会計では、繰延税金資産・繰延税金負債の対象になります。

社外流出は、会計でいう永久差異にあたります。会計と税務の考え方そのものが違っていて、いつまでも解消しない差。税効果会計の対象にはなりません。

法人税法が「留保・社外流出」と呼ぶものを、会計は「一時差異・永久差異」と呼ぶ。着眼点が少し違うので完全に同じではありませんが、いずれ解消するかどうかで区別しているという骨格は共通しています。簿記や会計を学んだ経験があれば、この対応で理解するのが近道です。

6. 区分が正しいかを検算する

留保と社外流出の区分を間違えると、どうなるでしょうか。

所得の金額そのものは変わりません。加算は加算だからです。しかし、別表五(一)の残高が狂います。 本来積み上がるべき留保が社外流出に入っていれば、別表五(一)に載るべき金額が抜け落ちます。逆も同じです。

そして、別表五(一)の狂いは、その年だけで終わりません。翌期の期首残高が違ってしまうので、誤りが延々と引き継がれます。数年後に気づいたときには、どこで狂ったのか追跡するのが困難になります。

そこで、毎期必ず検算します。別表五(一)の期首の利益積立金に、別表四の留保の増減を加減すると、期末の利益積立金と一致する――この関係が成り立っていれば、区分はおおむね正しいと考えられます(実際には別表五(二)の納税充当金なども絡みますが、骨格はこれです)。

会計ソフトを使えば区分は自動で入りますが、イレギュラーな仕訳をした年や、決算で特殊な処理をした年は、この検算をしておくと安心です。別表五(一)が合わないときは、まず「留保に入れるべきものを社外流出に入れていないか」を疑うのが、いちばん近道です。あわせて、前期の申告書から期首残高が正しく繰り越されているかも確認しておきましょう。前期の数字が違っていれば、当期にどれだけ丁寧に作業しても合いません。

7. まとめ:留保と社外流出の要点

  • 別表四の加算・減算は、留保社外流出に区分する。分ける理由は、その差がいつか解消するか、永久に解消しないか
  • 留保=会社の中に残り、将来解消する差(タイミングのズレ)。別表五(一)に積み上がり、解消時に反対の調整で取り崩される。代表例は減価償却超過額
  • 社外流出=会社の外へ出た、または永久に解消しない差。別表五(一)には積み上がらない。代表例は交際費・寄附金・法人税や住民税
  • 受取配当等の益金不算入は、減算だが社外流出。「お金が外へ出たか」ではなく「永久に解消しないか」が本質だと理解しておく。
  • 会計でいえば、留保=一時差異、社外流出=永久差異。区分を誤ると別表五(一)の残高が狂い、翌期以降に引き継がれるので、毎期検算する。

留保と社外流出は、別表四という一枚の紙の上で、「この差はいつか戻ってくるのか」を仕分けている作業です。この視点さえ持てば、新しい調整項目に出会っても、自分で判断できるようになります。次回は、そもそも何が益金・損金になるのかという入口に戻り、益金不算入・損金不算入の考え方を整理します。

  • 前回:【法人税の理論講座③】交際費の損金算入限度額はなぜあるのか?をわかりやすく解説
  • 次回:【法人税の理論講座⑤】定額法と定率法の違いをわかりやすく解説

あわせて読みたい

  • 【法人税の実務講座①】別表四の書き方・記入例をわかりやすく解説
  • 【法人税の実務講座⑤】別表五(一)の書き方・記入例をわかりやすく解説

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。記載の金額は説明のための想定であり、実際の取扱いは法人の状況により異なります。取扱いは改正されることがあります。実際の判断にあたっては、最新の情報を国税庁等で確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

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