実務講座⑭までで、法人税(国税)と法人住民税・事業税(地方税)の申告がつながりました。でも、会社が申告する税金はもう一つあります。消費税です。
消費税は、これまで見てきた法人税とは、性格がまったく違います。法人税は「儲かったら払う税金」ですが、消費税は「お客さんから預かったお金を納める税金」。この違いを押さえないと、「赤字なのに消費税を払うのはおかしい」とつまずいてしまいます。今回は、消費税が法人税とどう違うのかを、サンプル株式会社の例で見ていきましょう。
1. 法人税と消費税は「性格」が違う
法人税は利益(所得)にかかる直接税で赤字なら発生しない。消費税は取引にかかる間接税で、預かった消費税から支払った消費税を差し引いて納めるため、赤字でも納税が生じる。

▲ 法人税と消費税の性格の違いを示した図。法人税は会社の利益(所得)に対してかかる直接税で、赤字なら税額は発生しないのに対し、消費税は取引に対してかかる間接税で、お客さんから預かった消費税から仕入先などに支払った消費税を差し引いた差額を納めるため、会社が赤字であっても納税が生じ得ることを表す。
法人税は、会社の利益(所得)に対してかかる税金です。会社自身が負担する直接税なので、赤字なら税額は発生しません。実務講座①〜⑬で見てきた別表の世界は、この「利益をどう計算するか」の世界でした。
一方、消費税は、商品やサービスの取引に対してかかる税金です。実際に負担しているのは、最終的に商品を買った消費者。会社は消費者から消費税を預かって、代わりに国に納める立場にすぎません。こういう税金を間接税といいます。
納める金額は、単純にいえば「預かった消費税−支払った消費税」です。売上のときにお客さんから預かった消費税から、仕入や経費で自分が支払った消費税を差し引いて、残りを納めます(この差し引きを仕入税額控除といいます)。
ここから、いちばん大事な結論が出ます。消費税は、赤字でも納税が生じます。 消費税は利益ではなく取引にかかるので、会社が赤字かどうかとは関係ありません。人件費のように消費税がかからない支出が多い会社ほど、赤字でも消費税の納税額は出やすくなります。「利益は出ていないのに納税がある」――消費税でいちばん驚かれるのがこの点です。
2. 消費税を納める会社・納めない会社
すべての会社が消費税を納めるわけではありません。消費税を納める義務があるのが課税事業者、ないのが免税事業者です。
判定の基本は、基準期間の課税売上高です。基準期間とは、法人なら原則として前々事業年度のこと。ここでの課税売上高が1,000万円を超えていれば、その事業年度は課税事業者になります。1,000万円以下なら、原則として免税事業者です。設立したての会社に2期目まで消費税がかからないことが多いのは、基準期間(前々期)が存在しないからです。
ただし例外があります。ひとつは特定期間(前事業年度の上半期)の判定で、この期間の課税売上高や給与等の支払額が1,000万円を超えると、基準期間が1,000万円以下でも課税事業者になります。そして今いちばん影響が大きいのが、インボイス制度です。インボイス(適格請求書)を発行する事業者として登録すると、売上規模にかかわらず課税事業者になります。 取引先から「インボイスを出してほしい」と言われて登録した小さな会社が、そこから消費税の申告義務を負うようになった――これがここ数年で起きた大きな変化です。
なお、免税事業者からの仕入れについては、買い手側で仕入税額控除が制限されます。ただし急な影響を避けるため、一定割合を控除できる経過措置が置かれており、控除できる割合は段階的に縮小していく方向で改正が進んでいます。取引先に免税事業者が多い会社は、将来の控除額が徐々に減っていく前提で、価格や契約条件を考えておくと安心です。この分野は改正が続いているので、最新の内容は国税庁の情報で確認してください。
3. 計算方法は3つ ― 本則課税・簡易課税・2割特例
消費税の計算方法は3つ。本則課税は売上税額−実際の仕入税額(還付あり)。簡易課税は売上税額−売上税額×みなし仕入率(基準期間5,000万円以下+事前届出)。2割特例は売上税額の2割(インボイスを機に課税になった事業者・届出不要・2026年9月末で終了)。

▲ 消費税の計算方法が3つあることを示した図。本則課税は売上にかかる消費税から実際に支払った消費税を差し引く方法で設備投資などでは還付もあり得ること、簡易課税は基準期間の課税売上高5,000万円以下かつ事前の届出をした事業者が売上税額に業種ごとのみなし仕入率を掛けた金額を仕入税額とみなす方法であること、2割特例はインボイス制度を機に免税事業者から課税事業者になった事業者が売上税額の2割を納める方法で届出は不要だが2026年9月30日を含む課税期間で終了することを表す。
本則課税(原則課税) は、預かった消費税から、実際に支払った消費税を差し引く、原則どおりの方法です。仕入税額控除を受けるには、取引先から受け取ったインボイスを保存しておく必要があります。設備投資が大きい年など、支払った消費税が預かった消費税を上回れば、差額が還付されることもあります。
簡易課税 は、実際の支払額を集計せず、売上にかかる消費税額に業種ごとの「みなし仕入率」を掛けた金額を、仕入税額とみなす方法です。使えるのは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下で、かつ事前に「消費税簡易課税制度選択届出書」を出している事業者に限られます。みなし仕入率は、卸売業90%、小売業80%、製造業・建設業70%、飲食業など60%、サービス業・金融保険業50%、不動産業40%の6区分。事務が楽になる一方、還付は生じず、原則2年間は継続適用というしばりがあります。
なお、どの事業区分に当たるかは、会社の看板ではなく取引の実態で判定します。同じ会社でも、事業ごとに区分が分かれることがあり、区分を誤ると税額が変わってしまいます。複数の事業をしている場合は、売上を区分ごとに分けて記帳しておく必要があるので、判断に迷うときは早めに確認しておきましょう。
2割特例 は、インボイス制度をきっかけに免税事業者から課税事業者になった事業者向けの負担軽減措置で、売上にかかる消費税額の2割だけを納めればよい、というものです。届出は不要でした。ただし、この特例は令和8年(2026年)9月30日までの日が属する課税期間で終了します。たとえば3月決算の法人なら、2027年3月期が最後です。特例が終わったあとは、本則課税か簡易課税で計算することになります。
ここで注意したいのが、簡易課税には事前の届出が必要という点です。2割特例が終わったからといって、自動的に簡易課税に移るわけではありません。適用したい課税期間が始まる前の日までに届出書を出しておかないと、事務負担の重い本則課税になってしまいます。2割特例を使ってきた会社は、終了時期を今のうちにカレンダーに入れておきましょう。
4. 申告書と経理方式 ― 法人税とここが違う
申告書の作り方も、法人税とはかなり違います。
法人税は、決算書の利益からスタートして、別表四で加算・減算して所得を出す――という「決算書からの調整」でした。消費税はそうではありません。日々の取引を、課税・非課税・不課税・免税といった区分に分けて集計し、そこから税額を計算します。つまり、決算のときにまとめて調整するのではなく、日々の記帳で正しい税区分を付けておくことが、そのまま申告書につながるのです。会計ソフトで仕訳ごとに税区分を選ぶのは、このためです。
申告期限は、課税期間終了日の翌日から2か月以内。法人税と同じタイミングです(3月決算なら5月末)。申告書は消費税と地方消費税を1枚でまとめて申告します。また、前期の消費税額(国税分)が48万円を超えると中間申告が必要になり、金額に応じて年1回・3回・11回と回数が増えていきます。
経理方式にも2つあります。税抜経理は、売上や仕入を消費税抜きで記帳し、預かった消費税・支払った消費税を仮受消費税・仮払消費税として分けて管理する方法。税込経理は、消費税込みの金額でそのまま記帳する方法です。どちらを選ぶかで、法人税の所得計算にも影響が出ます(たとえば税込経理だと、消費税を含んだ金額で減価償却の判定などをすることになります)。実務では、税抜経理を選ぶ会社が多数派です。
5. 記入例:サンプル株式会社
サンプル株式会社(課税売上3,000万円・預かった消費税300万円)の比較:本則課税は300万円−実際の支払分100万円=200万円、簡易課税(サービス業50%)は300万円−150万円=150万円、2割特例は300万円×20%=60万円。

▲ サンプル株式会社の消費税の計算例を示した図。課税売上3,000万円で預かった消費税が300万円の場合、本則課税では実際に支払った消費税100万円を差し引いて納税額200万円、簡易課税ではサービス業のみなし仕入率50%を用いて300万円から150万円を差し引いた150万円、2割特例では売上税額300万円の2割で60万円となり、選ぶ方法によって納税額が変わることを表す。
サンプル株式会社(Web制作業=サービス業)で、消費税を計算してみましょう。課税売上が3,000万円(税抜)、預かった消費税が300万円、仕入や経費で実際に支払った消費税が100万円だったとします(説明のための想定です)。
本則課税 なら、300万円−100万円=200万円が納税額です。簡易課税(サービス業なのでみなし仕入率50%)なら、仕入税額は300万円×50%=150万円とみなすので、300万円−150万円=150万円。2割特例が使えるなら、300万円×20%=60万円です。
同じ会社・同じ売上でも、方法によって納税額がこれだけ変わります。ポイントは、サンプル株式会社のようなWeb制作業は、売上の多くが人件費(消費税がかからない)に変わる業種なので、実際に支払う消費税が少なく、本則課税だと納税額が大きくなりやすいこと。こういう会社は、簡易課税のほうが有利になりやすいのです。逆に、大きな設備投資をした年は、本則課税なら還付を受けられる可能性があります。
ここで、法人税との違いをもう一度確認しましょう。仮にサンプル株式会社が赤字だったとしても、消費税は上の計算どおり納めることになります。法人税はゼロでも、消費税は発生する。だから、決算のときは「法人税・地方税・消費税」の3つを合わせて納税資金を用意しておく必要があります。
資金繰りの面で気をつけたいのは、預かった消費税は自分のお金ではないという点です。売上代金には消費税が含まれて入金されますが、そのぶんは将来納めるために預かっているだけ。手元にあるからと使ってしまうと、決算後の納税で資金が足りなくなります。税抜経理にしておけば、仮受消費税と仮払消費税の差額として「今いくら預かっているか」が帳簿から見えるので、納税資金の目安を期中から把握できます。
6. 仕上げのチェックポイント
- 法人税は利益にかかる直接税、消費税は取引にかかる間接税。だから赤字でも消費税は納めることがある。納税資金は法人税・地方税と合わせて準備する。
- 課税事業者の判定は基準期間(前々事業年度)の課税売上高1,000万円超。ただしインボイス登録をすれば売上規模に関係なく課税事業者になる。
- 計算は3つ。本則課税(実額・還付あり・インボイス保存が要件)/簡易課税(5,000万円以下+事前届出・みなし仕入率・還付なし・2年継続)/2割特例(売上税額の2割・2026年9月30日を含む課税期間で終了)。
- 簡易課税は事前届出が必須。2割特例が終わっても自動で簡易課税にはならないので、適用したい課税期間の開始前日までに届出書を出す。
- 申告期限は課税期間終了の翌日から2か月以内(法人税と同じ)。前期の税額48万円超で中間申告が必要。経理方式は税抜経理と税込経理があり、法人税の計算にも影響する。
消費税は、日々の記帳で税区分を正しく付けておけば、会計ソフトが申告書まで作ってくれます。それでも、「消費税は預かって納める税」「赤字でも納税がある」「計算方法の選択で税額が変わる」という骨格を理解しておけば、資金繰りの見通しが立ち、届出の出し忘れという取り返しのつかないミスも防げます。
まとめ:消費税と法人税の違いの要点
- 法人税は利益にかかる直接税、消費税は取引にかかる間接税(預かった消費税−支払った消費税を納める)。赤字でも消費税は生じ得る。
- 納税義務は基準期間(前々事業年度)の課税売上高1,000万円超で判定。インボイス登録をすると規模に関係なく課税事業者。
- 計算方法は本則課税・簡易課税・2割特例の3つ。簡易課税は5,000万円以下+事前届出、みなし仕入率は業種で90%〜40%。
- 2割特例は2026年9月30日を含む課税期間で終了(3月決算なら2027年3月期が最後)。終了後に簡易課税を使うなら事前の届出を忘れない。
- 申告期限は法人税と同じ2か月以内。中間申告あり。税抜経理・税込経理の選択は法人税の所得計算にも影響する。
実務講座①〜⑮で、法人税・地方税・消費税と、会社が申告する税金がひととおりそろいました。あとは、計算した税金を実際に納めるところまでです。次は、法人税の納付方法と納付期限を見ていきましょう。
- 前回:【法人税の実務講座⑭】法人住民税・事業税の申告書の書き方をわかりやすく解説
- 次回:【法人税の実務講座⑯】法人税の納付方法は?納め方・納付期限をわかりやすく解説
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。計算例の金額は説明のための想定であり、取扱いは法人の状況により異なります。消費税の経過措置(2割特例・免税事業者からの仕入れに係る控除割合など)は改正が続いており、内容が変わることがあります。実際の申告にあたっては、最新の情報を国税庁等で確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。