【法人税の実務講座⑦】別表十六(減価償却)の書き方をわかりやすく解説

別表十六は、減価償却の「税務上の限度額」を計算する別表です。実務講座①④⑤で、留保の例として何度も出てきた「減価償却超過額」――あれが、どこから来ていたのか。答えは、この別表十六です。会社が会計上計上した減価償却費と、税務が認める償却限度額を比べて、はみ出した分(超過額)を別表四へ送り出す。それが別表十六の役割です。

実務講座①〜⑥で、所得(別表四)・税額(別表一)・税金(別表五(二))・純資産(別表五(一))・繰越欠損金(別表七(一))を見てきました。今回は、減価償却超過額の発生源である別表十六を、サンプル株式会社の記入例つきで解説します。

目次

1. 別表十六とは ― 税務の償却限度額を計算し、会計と比べる

減価償却とは、固定資産の取得価額を、耐用年数にわたって少しずつ費用にしていく会計処理です。会計では、会社が自社の見積もりで償却費を計上できます。しかし税務では、「ここまでしか損金にできない」という上限(償却限度額)が決まっています。別表十六は、この税務上の限度額を計算し、会計の償却費と突き合わせる別表です。

そもそも、なぜ取得価額を一度に費用にせず、何年もかけて分割するのでしょうか。機械や建物は、何年も使って収益を生み出します。買った年に全額を費用にすると、その年だけ大赤字になり、翌年以降の利益とのバランスが崩れてしまいます。そこで、使う年数(耐用年数)にわたって少しずつ費用にして、収益と費用を対応させる――これが減価償却の考え方です。そして法人税では、この償却費を損金にするには、会社が決算で費用として計上していること(損金経理)が前提になります。なお、土地や骨董品のように、時間がたっても価値が減らないと考えられる資産は、減価償却の対象になりません。

別表十六の役割:会計の減価償却費(損金経理額)と税務の償却限度額を比べ、会計が多ければ差額を償却超過額として別表四で加算、会計が少なければ償却不足として原則調整しない。

▲ 別表十六の役割を示した図。会社が会計上計上した減価償却費(損金経理額)と、税務上の償却限度額を比べ、会計の方が多ければ差額が減価償却超過額として別表四で加算され、会計の方が少なければ償却不足となり原則として調整しないことを示す。

別表十六は、使う償却方法や資産によって、いくつかの様式に分かれています。代表的なのは、定額法を使う資産の「別表十六(一)」と、定率法を使う資産の「別表十六(二)」。ほかに、後で説明する一括償却資産の「別表十六(八)」、中小特例の「別表十六(七)」などがあります。建物のように定額法で償却する資産は十六(一)、機械や備品のように定率法で償却する資産は十六(二)、と使い分けます。

2. 償却限度額の計算 ― 取得価額・耐用年数・償却率

償却限度額は、次の3つの要素で決まります。取得価額・耐用年数・償却率です。耐用年数は、国税庁の「耐用年数表」で資産の種類ごとに決まっており、その耐用年数に対応する償却率も表で決まっています。

計算式は、償却方法によって変わります。

  • 定額法:償却限度額 = 取得価額 × 定額法の償却率。毎年同じ額を償却します。建物・建物附属設備・構築物は、定額法と決まっています。
  • 定率法:償却限度額 = 期首の未償却残高(帳簿価額)× 定率法の償却率。初めの年ほど償却額が大きく、だんだん小さくなります。機械装置・器具備品・車両運搬具などは、法定では定率法(届出をすれば定額法も選べます)。

なお、事業年度の途中で取得して使い始めた資産は、月割で計算します(その年に使った月数 ÷ 12)。取得価額には、本体価格だけでなく、運送費や据付費などの付随費用も含めます。

具体例で見てみましょう。耐用年数5年の測定工具を150万円で取得し、定額法で償却する場合。耐用年数5年の定額法償却率は0.200なので、償却限度額は 150万円 × 0.200 = 30万円。毎年30万円ずつ、5年かけて償却していきます。定率法なら、初年度は未償却残高(初年度は取得価額)に定率法の償却率をかけるので、初めの年ほど償却額が大きく、年々小さくなります。同じ資産でも、定額法と定率法では各年の償却額の出方が変わる、というわけです。

どの償却率を使うかは、資産の種類と耐用年数で決まります。たとえば普通乗用車は耐用年数6年、パソコンは4年、金属製の事務机は15年といった具合に、国税庁の耐用年数表で細かく定められています。中古資産を買った場合は、使用可能期間を見積もるか、簡便法で短い耐用年数を使えるため、新品より早く償却できます。

3. 償却超過額と別表四の連動 ― これが「留保」の正体

別表十六で償却限度額を計算したら、会計上の減価償却費(損金経理額)と比べます。ここが、別表四との連動の入口です。

償却超過・不足と別表四の連動:償却超過額(会計>限度)は別表四で加算(留保)し別表五(一)に積み上がる。前期超過額の認容(会計<限度)は別表四で減算(留保)し別表五(一)が取り崩される。償却不足は原則調整なし。

▲ 償却超過額・償却不足額と別表四の調整方向を示した図。会計の償却費が税務の限度額を超える場合は超過額を別表四で加算(留保)し別表五(一)へ積み上げる。会計の償却費が限度額に満たない場合は、減価償却が任意償却のため損金にならないだけで原則調整せず、前期の償却超過額がある資産では当期に不足する範囲で認容して減算(留保)することを示す。

  • 会計の償却費 > 税務の限度額 … はみ出した分が「償却超過額」。税務上は損金にできないので、別表四で加算(留保)します。そして、この超過額は別表五(一)に積み上がります。実務講座①④⑤で見た「減価償却超過額」は、まさにこれです。
  • 会計の償却費 < 税務の限度額 … 限度額より少なく償却した場合(償却不足)。減価償却は任意償却で、会計で費用にした範囲(損金経理額)までしか損金にできません。足りない分は、損金にならないだけで、原則として調整は不要です(翌期以降に償却できます)。
  • 前期からの償却超過額がある資産 … 当期の償却費が限度額に満たない範囲で、前期の超過額を当期の損金として「認容」し、別表四で減算(留保)します。前期に加算した超過額が、こうして将来取り崩されていきます。

この「超過なら加算、認容なら減算、いずれも留保」という動きが、別表五(一)の減価償却超過額の行を増やしたり減らしたりする――実務講座⑤で見た、留保の往復そのものです。

ここで、償却超過額の本質を押さえておきましょう。償却超過額は、いわば「将来の償却の前借り」です。会計で早く償却しすぎた分は、いったん税務では損金にならず加算されますが、その資産の会計上の償却が進んで限度額に満たなくなった年に、認容されて減算されていきます。トータルで見れば、税務でも取得価額の全額が、いずれは損金になります。違うのは、損金になる「タイミング」だけ。会計が先に費用にした分を、税務が後から追いかける――それが減価償却超過額の正体です。

4. 少額資産の3つの選択肢 ― 10万・20万・40万円

取得価額が小さい資産は、耐用年数にわたって償却するのではなく、もっと早く費用にできる特例があります。金額で3段階に分かれます。

少額資産の3区分:10万円未満は取得年に全額損金、10万〜20万円未満は一括償却資産として3年均等償却(大法人も可・固定資産税の対象外)、中小企業者等は40万円未満を年300万円まで即時償却(令和8年4月以後取得分。それ以前は30万円未満)。

▲ 少額資産の3つの区分を示した図。取得価額10万円未満は取得した年に全額損金、10万円以上20万円未満は一括償却資産として3年均等償却(大法人も可・償却資産税の対象外)、中小企業者等は40万円未満(令和8年4月1日以後取得分。それ以前は30万円未満)を年300万円まで即時償却できる特例があることを示す。

  • 10万円未満 … 取得した年に全額を損金にできます。
  • 10万円以上20万円未満 … 「一括償却資産」として、3年間で均等に償却します(取得価額 × その年の月数 ÷ 36)。大法人でも使え、しかも固定資産税(償却資産)の対象にならないというメリットがあります。
  • 中小企業者等の少額減価償却資産の特例 … 青色申告の中小企業者等は、1個あたり40万円未満の資産を、年間合計300万円まで即時償却(全額損金)できます。ここで大きな改正点があります。この基準は従来30万円未満でしたが、令和8年(2026年)4月1日以後に取得して事業に使い始める資産から、40万円未満に引き上げられました(資産ごとに判定)。あわせて、適用期限が令和11年3月31日まで3年延長され、対象となる会社の従業員数の要件も「500人以下」から「400人以下」に見直されています。適用には、別表十六(七)と適用額明細書の添付が必要です。なお、貸付用に使う資産は対象外です(主要な事業としての貸付けは除く)。

開業準備中の方は、設備投資の時期を「2026年4月1日の前後」で意識しておくと、40万円未満の新しい基準を生かせます。これらの3つは重複して使えないので、資産ごとに「どれが有利か」を判断します。

判断のヒントを2つ。1つめは、一括償却資産(20万円未満)には、固定資産税(償却資産)がかからないというメリットがあること。一方、少額特例(40万円未満)で即時償却しても、その資産は償却資産税の対象になり、申告も必要です。どちらを使うかは、固定資産税まで含めると判断が変わることもあります。

2つめは、即時償却は「その年の税金を減らす」効果はあっても、トータルで払う税金が減るわけではないこと。将来の償却費を前倒ししているだけなので、利益が出ている年に使うほど、資金繰り上の効果が大きくなります。

5. 記入例:サンプル株式会社(機械装置で償却超過が出る場合)

サンプル株式会社が、機械装置を取得したケースで考えます(説明用の概算)。取得価額200万円、法定耐用年数10年、定率法(償却率0.200)とします。

まず、税務上の償却限度額は、200万円 × 0.200 = 40万円です(初年度・期首取得とした場合)。一方、会社は会計上、実態に合わせて少し短めの耐用年数で見積もり、減価償却費を70万円計上したとします。

すると、会計の70万円が税務の限度額40万円を上回るので、その差額 70万円 − 40万円 = 30万円が償却超過額です。この30万円は損金にできないので、別表四で加算(留保)30万円。そして、別表五(一)の「減価償却超過額」の増③に30万円が積み上がります。実務講座⑤の記入例で「減価償却超過額30万円」が増③に入っていたのは、この別表十六の計算から来ていたわけです。別表十六 → 別表四 → 別表五(一)と、数字が一本の筋でつながっているのが見えます。

逆に、翌期以降、会社が会計上の償却費を税務の限度額より少なく計上した年には、この30万円の超過額が「認容」されて、別表四で減算(留保)され、少しずつ取り崩されていきます。

たとえば翌期、この機械の税務上の償却限度額が32万円なのに、会計上の償却費を15万円しか計上しなかったとします。限度額に17万円の余裕ができるので、前期の超過額30万円のうち17万円が当期に認容され、別表四で減算(留保)。残りの13万円は、さらに翌期へ繰り越されます。こうして、加算した超過額は将来の年で少しずつ損金になり、別表五(一)の減価償却超過額の残高も減っていきます。

6. 仕上げのチェックポイント

  • 損金経理が要件。法人の減価償却は、会計で費用に計上した範囲(損金経理額)までしか損金にできない。計上を忘れると、その年は償却できない(任意償却)。
  • 超過は加算・不足は調整なし。会計が限度額を超えた分は加算(留保)、満たない分は原則調整なし。前期超過額の認容は減算(留保)。
  • 少額資産は3区分を使い分け。10万円未満は全額損金、20万円未満は一括償却(3年均等)、中小は40万円未満を年300万円まで即時償却(2026年4月以後取得分。それ以前は30万円未満)。重複適用は不可。
  • 月割と付随費用に注意。期中取得は月割。取得価額には運送費・据付費なども含める。
  • 固定資産台帳で管理する。取得価額・取得日・耐用年数・償却方法・既償却額を台帳で管理しておくと、別表十六の作成も、翌期への繰り越しもスムーズになる。

会計ソフトを使えば、固定資産台帳から別表十六、そして別表四・別表五(一)への連動まで自動で計算されます。それでも、「税務には償却限度額という上限があり、会計が超えた分は減価償却超過額として加算(留保)される」という骨格を理解しておけば、別表五(一)に積み上がる留保の正体がわかり、設備投資や少額特例の使い方も自分で判断できます。

まとめ:別表十六を書くための要点

  • 別表十六は、税務の償却限度額を計算し、会計の減価償却費(損金経理額)と比べる別表。定額法は十六(一)、定率法は十六(二)。
  • 償却限度額=取得価額×償却率(定額法)/未償却残高×償却率(定率法)。耐用年数表で償却率を引く。期中取得は月割。
  • 会計>限度額の超過額は別表四で加算(留保)→別表五(一)へ。これが減価償却超過額の正体。不足は原則調整なし、前期超過の認容は減算(留保)。
  • 少額資産は10万円未満(全額損金)・20万円未満(一括償却3年)・40万円未満(中小特例・年300万)の3区分。40万円未満は令和8年4月以後取得分から(それ以前は30万円未満)。

別表四・一・五(二)・五(一)・七(一)に、この別表十六を加えると、減価償却まわりの留保の発生源まで押さえられます。あとは、交際費(別表十五)など、自社に関係する明細書を必要に応じて加えていけば、申告書一式が仕上がります。

  • 前回:【法人税の実務講座⑥】別表七(一)(繰越欠損金)の書き方をわかりやすく解説
  • 次回:【法人税の実務講座⑧】別表十五(交際費等)の書き方をわかりやすく解説

あわせて読みたい

  • 【法人税の実務講座①】別表四の書き方・記入例をわかりやすく解説
  • 【法人税の実務講座⑤】別表五(一)の書き方・記入例をわかりやすく解説

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。記入例の金額・償却率は説明のための概算であり、税額・記載は法人の状況や様式により異なります。減価償却・少額資産特例の取扱いや金額基準・適用期限は改正されることがあります。実際の申告にあたっては、最新の様式・記載要領・耐用年数表を国税庁等で確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次