【法人税の実務講座⑩】別表六(一)(所得税額控除)の書き方をわかりやすく解説

会社が預金の利息や株式の配当を受け取るとき、その金額からは、すでに所得税が天引き(源泉徴収)されています。手元に入るのは、天引き後の手取り額。でも、その天引きされた所得税は、法人税の前払いとして、法人税から取り戻すことができます。この手続きをするのが、別表六(一)です。

実務講座⑨で、受け取った配当を益金から外す別表八(一)を見ました。今回の別表六(一)は、同じ配当に関するもう一つの論点。配当には「益金不算入(別表八(一))」と「源泉所得税の税額控除(別表六(一))」という、2つのセットの処理があります。サンプル株式会社の続きで、その全体像を完成させましょう。

目次

1. 別表六(一)とは ― 源泉所得税を法人税から取り戻す

別表六(一)は、正式名称を「所得税額の控除に関する明細書」といいます。法人が受け取る利子・配当などから源泉徴収された所得税(復興特別所得税を含む)を、法人税額から控除するための別表です(法法68)。

ここで、実務講座⑨の別表八(一)との違いを押さえましょう。別表八(一)は「益金不算入」、つまり所得を減らす別表でした。一方、別表六(一)は「税額控除」、つまり税額そのものを減らす(取り戻す)別表です。所得を減らすのと、税額を直接減らすのとでは、後者のほうが節税効果は大きくなります。同じ配当をめぐって、別表八(一)で所得を減らし、別表六(一)で税額を取り戻す――この2つはセットで考えます。

別表六(一)と別表八(一)は、どちらも配当に関係し、どちらも税金を減らす方向に働くため、混同されがちです。違いは、効くタイミングと場所。別表八(一)は所得の計算(別表四の入口)で効き、別表六(一)は税額の計算(別表一の出口)で効きます。配当を受け取ったら、この2つをセットで思い出す――それが、取りこぼしを防ぐコツです。

2. なぜ控除できるか ― 法人税の前払いだから

源泉徴収された所得税を法人税から控除できるのは、それが法人税の前払いだからです。

源泉所得税は法人税の前払い:配当・利子を受け取るときに源泉徴収された所得税は、法人税の前払いとして法人税額から控除でき、控除しきれない分は還付される。

▲ 源泉所得税が法人税の前払いであることを示した図。配当や利子を受け取るときに源泉徴収された所得税は、何もしなければ手取りが減ったままだが、法人税の前払いとして法人税額から控除(税額控除)でき、控除しきれない分は還付されることを表す。

配当や利子は、源泉所得税が引かれたうえに、その配当・利子を含めた所得にさらに法人税がかかります。このままでは、同じもうけに所得税と法人税が二重にかかった状態です。そこで、源泉徴収された所得税を「すでに前払いした法人税」とみなして、法人税額から差し引く(控除する)のです。もし源泉所得税のほうが法人税額より多ければ、控除しきれなかった分は還付されます。

個人の場合は、給与や報酬、配当などから源泉徴収された所得税を、確定申告で精算します。法人の場合に、それにあたるのが、この所得税額控除です。源泉徴収は「とりあえず一定率で前もって取っておく」仕組みなので、最終的な法人税の計算で精算する――そう考えると、源泉所得税を法人税から差し引くのは自然なことだとわかります。

3. 源泉徴収の税率

源泉徴収される所得税の税率は、受け取るものによって決まっています。

  • 利子・上場株式の配当15.315%(所得税15% + 復興特別所得税0.315%)。
  • 非上場(一般)株式の配当20.42%(所得税20% + 復興特別所得税0.42%)。

たとえば、上場株式の配当を25万円受け取ったなら、源泉徴収される所得税は 25万円 × 15.315% = 約38,287円。手取りは差額の約21万円です。なお、令和4年度の改正で、完全子法人株式等・関連法人株式等(3分の1超)に相当する株式の配当は、2023年10月1日以後の支払分から源泉徴収そのものが不要になりました。源泉徴収されていなければ、控除する所得税もない、ということです。

ちなみに、復興特別所得税は、所得税額の2.1%として上乗せされているものです。上場配当の所得税15%に対し、その2.1%にあたる0.315%が加わって、合計15.315%になっています。配当の支払通知書や利子の計算書には、この税率で計算された所得税額が記載されているので、別表六(一)には、その金額をそのまま転記すれば大丈夫です。

4. 所有期間按分 ― 配当だけのルール

ここがいちばんのポイントです。源泉所得税のうち、利子は全額控除できますが、配当は「所有期間に対応する部分」しか控除できません(所有期間按分)。

利子は全額控除・配当は所有期間按分:預貯金や公社債の利子に係る源泉所得税は按分せず全額控除できるが、株式の配当に係る源泉所得税は計算期間のうち元本を所有していた期間に対応する分だけを控除する(計算期間を通じて保有なら全額)。

▲ 利子は全額控除・配当は所有期間按分であることを示した図。預貯金や公社債の利子に係る源泉所得税は按分せず全額を控除できるが、株式の配当に係る源泉所得税は、配当の計算期間のうち元本を所有していた期間に対応する部分だけを控除でき、計算期間を通じて保有していれば全額控除できることを示す。

配当は、その配当の計算期間の途中で株を買った場合、買う前の期間に対応する分まで控除すると、持っていなかった期間の配当まで控除することになってしまいます。そこで、計算期間のうち実際に所有していた期間に対応する分だけを控除します。計算期間を通じてずっと持っていれば、按分割合は100%で、全額控除できます。

按分の計算方法には、個別法(銘柄ごとに実際の所有期間で按分)と銘柄別簡便法(期中に取得した分は期の真ん中で取得したとみなして按分)の2つがあり、事業年度ごとに有利な方を選べます。一方、預貯金や公社債の利子は、こうした按分は不要で、源泉所得税の全額を控除できます。

具体例で見ましょう。ある銘柄の配当の源泉所得税が2万円で、計算期間(1年)の途中から株を持ち始めた場合。個別法なら、実際に持っていた月数で按分します。簡便法なら、期中に増えた株は「期の真ん中で取得した」とみなして、まとめて按分します。両方を計算して、控除額が大きくなる(=有利な)方を選べます。ただし、中小企業で保有銘柄が少なければ、計算が簡単な簡便法だけで済ませることも多いです。計算期間を通じて保有していた銘柄は、どちらの方法でも全額控除になります。

5. 連動 ― 別表六(一)→別表四→別表一

別表六(一)で計算した控除税額は、別表四と別表一の両方に関係します。流れはこうです。

別表六(一)→別表四→別表一の連動:別表六(一)で控除する所得税額を計算し、別表四で加算(社外流出・損金不算入のため所得に戻す)、別表一で控除税額として法人税額から控除(不足は還付)。別表一の控除の効果が大きいため税額控除が有利。

▲ 別表六(一)から別表四・別表一への連動を示した図。別表六(一)で控除する所得税額を計算し、その金額を別表四で加算(社外流出。法人税額から控除する所得税は損金不算入のため)、同じ金額を別表一で控除税額として法人税額から控除する流れを示す。控除しきれない金額は還付される。

まず、別表六(一)で控除する所得税額を計算します。次に、その金額を別表四で加算(社外流出)します。なぜ加算するのか。法人税額から控除する所得税は、損金にはできない(損金不算入)からです。損金にもして税額控除もすれば二重に得をしてしまうので、いったん所得に戻すわけです。そして最後に、同じ金額を別表一で「控除税額」として、法人税額から控除します。控除しきれない金額があれば、還付されます。別表六(一) → 別表四(加算)→ 別表一(控除)と、一本の筋でつながっています。

少しややこしいのは、別表四で「加算」してから別表一で「控除」する、という二段構えです。一見、加算と控除で打ち消し合うように見えますが、効果は違います。別表四の加算は「所得」を増やす調整(損金不算入に戻す)で、別表一の控除は「税額」を直接減らす調整。所得が増える影響よりも、税額が直接減る効果のほうが大きいので、トータルでは控除を受けた方が有利になります。だからこそ、源泉所得税は損金算入ではなく税額控除を選ぶのが基本です。

6. 会計処理 ― 収益は手取りではなく総額で

別表六(一)で控除を受けるには、会計処理にもひと工夫が要ります。配当や利子が入金されたとき、つい手取り額だけで収益計上しがちですが、それでは源泉所得税が記録から消えてしまいます。

正しくは、収益は源泉徴収前の総額で計上し、源泉徴収された所得税は別建て(仮払税金や法人税等など)で処理します。たとえば配当の手取りが約21万円でも、収益は総額25万円で計上し、差額の約3.8万円を源泉所得税として記録します。別表六(一)の「収入金額」も、手取りではなく総額を書きます。この総額計上を忘れると、控除すべき源泉所得税が把握できなくなるので注意しましょう。

仕訳のイメージはこうです。配当25万円が入金されたとき、手取りの約21万円が普通預金に入りますが、仕訳では「普通預金 約21万円/受取配当金 25万円」とし、差額の約3.8万円を「仮払税金(または法人税等)約3.8万円」として借方に立てます。こうしておけば、決算で別表六(一)に転記する源泉所得税を、帳簿からそのまま拾えます。手取り額だけで「普通預金 21万円/受取配当金 21万円」としてしまうと、源泉所得税が記録に残らず、控除を取りこぼすことになります。

7. 記入例:サンプル株式会社

実務講座⑨の続きです。サンプル株式会社が、上場株式(非支配目的株式等)の配当25万円を受け取ったとします。計算期間を通じて株を保有していた前提です(説明用の概算)。

サンプル株式会社の所得税額控除:上場株式の配当25万円に源泉税率15.315%を乗じた38,287円を、計算期間を通じて保有のため全額、別表六(一)で控除税額として計算し、別表四で社外流出として加算、別表一で法人税額から控除する。

▲ サンプル株式会社の所得税額控除の流れを示した図。上場株式の配当25万円に源泉徴収税率15.315%を乗じた源泉所得税38,287円を、計算期間を通じて保有しているため全額、別表六(一)で控除税額として計算し、別表四で社外流出として加算したうえで、別表一で法人税額から控除する流れを示す。

源泉所得税は、25万円 × 15.315% = 38,287円(1円未満切捨)。計算期間を通じて保有しているので、所有期間按分は100%、全額が控除対象です。この38,287円を、別表六(一)に記載し、別表四で加算(社外流出)38,287円別表一で控除税額38,287円として法人税額から控除します。

ここで、実務講座⑨を思い出してください。同じ配当25万円について、別表八(一)では益金不算入額5万円(25万円 × 20%)を計算し、別表四で減算(社外流出)していました。つまり、1つの配当25万円から、別表八(一)で所得を5万円減らし、別表六(一)で税額を38,287円取り戻す――配当をめぐる2つの処理が、ここで完結します。なお、預金利子があれば、こちらは按分不要。たとえば利子1万円なら源泉所得税1,531円(15.315%)を、そのまま全額控除します。

こうして見ると、たった1つの配当25万円でも、別表八(一)・別表六(一)・別表四・別表一と、4つの別表をまたいで処理されることがわかります。配当は金額が小さくても、関係する別表が多い「つまずきやすい」論点。だからこそ、入金時に総額で記帳して源泉所得税を別建てしておくことが、決算での取りこぼしを防ぐ第一歩になります。

8. 仕上げのチェックポイント

  • 源泉所得税は法人税の前払い。利子・配当から天引きされた所得税は、法人税額から控除(取り戻す)できる。控除しきれなければ還付。
  • 配当は所有期間按分・利子は全額控除。配当は計算期間のうち所有していた期間の分だけ(個別法/簡便法)。利子は按分なしで全額。
  • 別表六(一)→別表四(加算・社外流出)→別表一(控除)。控除する所得税は損金不算入なので、別表四で加算するのを忘れない。
  • 収益は総額で計上。手取りではなく源泉前の総額で計上し、源泉所得税を別建て。別表六(一)の添付が適用要件。損金算入より税額控除のほうが通常有利。

会計ソフトを使えば、源泉所得税の集計から別表六(一)、別表四・別表一への連動まで自動で処理されます。それでも、「源泉所得税は法人税の前払い、配当は按分・利子は全額、別表四で加算して別表一で控除」という骨格を理解しておけば、配当や利子の入金処理を正しく行え、別表八(一)(所得を減らす)と別表六(一)(税額を取り戻す)のセットも自分で説明できます。

まとめ:別表六(一)を書くための要点

  • 別表六(一)は、利子・配当から源泉徴収された所得税を法人税額から控除する別表。源泉所得税は法人税の前払い。
  • 税率は利子・上場配当15.315%、非上場配当20.42%。完全子法人・関連法人株式等の配当は2023年10月以降 源泉徴収なし。
  • 配当は所有期間按分(個別法/簡便法)、利子は全額控除。計算期間を通じて保有なら配当も全額。
  • 別表六(一)→別表四(加算・社外流出)→別表一(控除)。控除しきれない分は還付。収益は総額で計上する。
  • 別表八(一)(益金不算入=所得を減らす)と別表六(一)(税額控除=税額を取り戻す)は、配当をめぐるセットの処理

実務講座①〜⑩で、申告書本体(別表一・四・五(一)・五(二))、留保と社外流出の代表例(減価償却・交際費・受取配当)、繰越欠損金、そして源泉所得税の控除まで、中小企業の法人税申告に必要な主要別表が一通りそろいました。次は、ほとんどの中小企業が該当する同族会社の判定(別表二)へ進むと、申告書の全体像がさらに見えてきます。

  • 前回:【法人税の実務講座⑨】別表八(一)(受取配当等の益金不算入)の書き方をわかりやすく解説
  • 次回:【法人税の実務講座⑪】別表二(同族会社の判定)の書き方をわかりやすく解説

あわせて読みたい

  • 【法人税の実務講座⑨】別表八(一)(受取配当等の益金不算入)の書き方をわかりやすく解説
  • 【法人税の実務講座②】別表一の書き方・記入例をわかりやすく解説

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。記入例の金額は説明のための概算であり、取扱いは法人の状況や様式により異なります。源泉徴収税率や控除の取扱いは改正されることがあります。実際の申告にあたっては、最新の様式・記載要領を国税庁等で確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

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