【法人税の実務講座⑤】別表五(一)の書き方・記入例をわかりやすく解説

別表五(一)は、よく「税務上の貸借対照表」と呼ばれます。正式名称は「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」。別表四が会計の損益計算書に対応する「税務版の利益計算」なら、別表五(一)は貸借対照表に対応する「税務版の純資産」です。別表四で出した「留保」が、ここに資産のように積み上がっていきます。

実務講座①②④(別表四・別表一・別表五(二))を読んでいる前提で、別表五(一)の2部構成、列の意味、主な行の書き方、別表四との連動、そして検算までを、サンプル株式会社の記入例つきで解説します。これで、別表四・一・五(二)・五(一)がそろい、申告書の骨格が完成します。

目次

1. 別表五(一)とは ― 税務上の貸借対照表

別表五(一)は、税務上の純資産(利益積立金額と資本金等の額)を計算する明細書です。会計の貸借対照表と税務とで純資産にズレがあるとき、そのズレを管理するのがこの別表です。

構造は、上下の2部に分かれています。

別表五(一) = 税務上の貸借対照表(純資産) Ⅰ 利益積立金額(稼いだ利益の蓄積)+ Ⅱ 資本金等の額(出資された元手) Ⅰ 利益積立金額(稼いだ利益の蓄積) ・利益準備金・積立金 ・税務否認項目(減価償却超過額 など) ・繰越損益金(25) ・納税充当金(26) ・未納法人税等(27・29・30) △ ・差引合計額(31) Ⅱ 資本金等の額(出資された元手) ・資本金・資本準備金(中小は書くだけ) ・差引合計額(36) 会計の貸借対照表との対応 繰越損益金(25) = 会計の 繰越利益剰余金 納税充当金(26) = 会計の 未払法人税等 未納法人税等(27・29・30) = 確定した税金を △ で控除 Ⅰ + Ⅱ = 税務上の純資産 ※ 別表五(一)は別表四の「留保」が積み上がる場所。 別表四・別表五(二)を仕上げてから最後に作る

▲ 別表五(一)の全体像を示した図。上段はⅠ利益積立金額の計算(利益準備金・税務否認項目・繰越損益金(25)・納税充当金(26)・未納法人税等(27・29・30)・差引合計額(31))、下段はⅡ資本金等の額の計算(資本金・資本準備金)で、税務上の貸借対照表(純資産)にあたることを示し、繰越損益金は会計の繰越利益剰余金、納税充当金は会計の未払法人税等と一致することを表す。

Ⅰ 利益積立金額の計算(上段)が中心です。会計の利益剰余金にあたる部分に、税務上のズレ(留保項目)と税金項目を加えて、税務上の利益積立金額を計算します。Ⅱ 資本金等の額の計算(下段)は、資本金・資本準備金などを記載する部分で、中小企業ではほとんど書くことがありません。

少し補足します。「利益積立金額」とは、簡単に言えば、会社がこれまでに稼いだ利益のうち、配当などで社外に出さずに内部に留保してきた金額の、税務上の累計です。会計の利益剰余金に近いものですが、税務と会計でズレる部分(減価償却超過額や未払法人税等など)を調整してある点が違います。このズレの累計を管理しているからこそ、別表五(一)は「税務上の貸借対照表」と呼ばれます。

そして大事なのが、別表五(一)は別表四・別表五(二)と連動していること。別表四の「留保」がここへ流れ込み、別表五(二)の納税充当金・未納税額もここへつながります。だから、別表五(一)は別表四・五(二)を仕上げてから、最後のほうに書き上げます。

2. 列の見方 ― 期首①・減②・増③・期末④

Ⅰ利益積立金額の表は、横方向に4つの列があります。

  • 期首現在利益積立金額① … 期首(=前期末)の残高。前期の別表五(一)の「期末④」が、そのまま当期の①になります(前期からの引継ぎ)。
  • 当期の減② … 当期に減った額。
  • 当期の増③ … 当期に増えた額。
  • 差引翌期首現在利益積立金額④ … 期末の残高。④=①−②+③で計算します。

ポイントは、別表四の「留保」が、この増減に流れ込むこと。別表四で「加算・留保」した項目は、利益積立金額を増やすので「増③」へ。「減算・留保」した項目は、利益積立金額を減らすので「減②」へ。別表四で社外流出にしたものは、利益積立金額に影響しないので、ここには出てきません。別表五(一)は、いわば別表四の留保が積み上がる場所なのです。

なぜ留保だけが流れ込むのでしょうか。留保は「会社の中に残り、いつか解消されるズレ」でした。一方、社外流出は会社の外へ出て二度と戻らないため、純資産(利益積立金額)には影響しません。だから、別表五(一)に積み上がるのは留保項目だけ――この「留保は別表五(一)に連動する」という関係こそ、実務講座①で学んだ留保/社外流出の区分の、いわば答え合わせの場になります。区分を誤れば、後述の検算が合わなくなる、というわけです。

3. 主な行の書き方

別表五(一)の上半分には空欄が多くありますが、中小企業では全部を埋める必要はありません。よく使う行に絞って、書き方を見ていきます(行番号は、令和8年4月1日以後終了事業年度分の様式のものです)。

別表五(一)の主な行は「どこから来るか」 別表四の留保・会計の貸借対照表・別表五(二)から、それぞれの行に転記されてくる 別表五(一)(利益積立金額) 別表四の 留保 税務否認項目 (減価償却超過額 など) 会計BS 繰越利益剰余金 繰越損益金(25) 別表五(二) 41 期末納税充当金 納税充当金(26) 別表五(二) ⑥ 期末未納 未納法人税等 (27・29・30)に △

▲ 別表五(一)の主な行と、会計の貸借対照表・別表四・別表五(二)との対応を示した図。税務否認項目は別表四の留保から、繰越損益金(25)は会計の繰越利益剰余金から、納税充当金(26)は別表五(二)の期末納税充当金(41。=会計の未払法人税等)から、未納法人税等(27・29・30)は別表五(二)の期末現在未納税額(⑥)から、それぞれ転記されることを示す。

  • 税務否認項目(減価償却超過額など) … 別表四で留保とした項目を、ここに転記します。加算・留保なら「増③」、減算・留保なら「減②」。減価償却超過額や賞与引当金の否認などが典型です。
  • 繰越損益金(25) … 会計の「繰越利益剰余金」に対応します。期首①は前期末の繰越利益剰余金、期末④は当期末の繰越利益剰余金と一致させます。当期純利益が出れば、その分が増えます。
  • 納税充当金(26) … 会計の「未払法人税等」に対応します。増③は当期に積んだ額(別表五(二)の繰入「31」)、期末④は当期末の未払法人税等(別表五(二)の「41」)。別表五(二)からそのまま転記してくる行です。
  • 未納法人税、未納地方法人税及び未納防衛特別法人税(27)・未納道府県民税(29)・未納市町村民税(30) … 期末に未納の税額を、△(マイナス)で記載します(防衛特別法人税がある会社は、その未納分も27の行に含めます。28は未払通算税効果額の行で、グループ通算制度を使わない会社は空欄です)。当期確定分(別表五(二)の「⑥期末現在未納税額」)が「増③」に△で入り、当期に納めた分は「減②」に入ります。なお、この未納法人税等は本来は留保項目ではありませんが、利益積立金額の計算上、例外的にここへ記載する決まりになっています。
  • 差引合計額(31) … ①②③④の各列を、縦に合計した行。いちばん大事な行で、検算もこの「31」を使います。

なお、繰越損益金(25)には2通りの書き方があります。一つは、当期の増減額だけを「増③」に書く方法。もう一つは、期首残高を「減②」に、期末残高を「増③」に、両建てで書く方法です。どちらでも期末④は同じ繰越利益剰余金になりますが、両建て方式のほうが期首と期末の残高が一目で分かるため、実務ではよく使われます。会計ソフトがどちらの方式で出力するかも、知っておくと混乱しません。

4. 別表四との連動 ― 留保が積み上がる

ここまでで見えてきたとおり、別表五(一)は別表四と表裏一体です。会計でいえば、損益計算書(別表四)の利益が、貸借対照表(別表五(一))の純資産に積み上がるのと同じ関係です。

別表四で「加算・留保」した減価償却超過額や納税充当金は、別表五(一)の「増③」に積み上がります。別表四で「減算・留保」した項目は「減②」に。そして、別表五(二)で整理した税金(納税充当金・未納税額)も、別表五(一)の納税充当金(26)・未納法人税等(27・29・30)へ流れ込みます。別表四→別表五(一)、別表五(二)→別表五(一)と、留保と税金が一本の筋でつながっているのが、別表五(一)の正体です。

具体例で見ます。実務講座①で扱った減価償却超過額。別表四で「加算・留保」した分は、別表五(一)の減価償却超過額の行の「増③」に積み上がります。そして翌期以降、その償却超過が認容されて別表四で「減算・留保」されると、今度は別表五(一)の「減②」に入って取り崩されていきます。留保項目が、発生した年に増え、解消する年に減る――この往復が、別表五(一)の上に記録されていくのです。だからこそ別表五(一)を見れば、「将来、所得を減らす(または増やす)余地がどれだけ残っているか」が読み取れます。

5. 検算 ― 別表四・別表五(二)と整合しているか

別表五(一)を書き上げたら、必ず検算します。実務講座①でも紹介した、別表五(一)の余白に印刷されている公式です。

期首の合計「31①」 + 別表四の留保の合計「52②」 − 当期の中間分・確定分の法人税等(法人税・地方法人税・防衛特別法人税)・住民税の合計額 = 期末の合計「31④」

左辺を計算して、別表五(一)の「31」の④(期末の利益積立金額の合計)と一致すれば、検算OKです。合わなければ、別表四での留保/社外流出の区分ミスや、転記漏れが疑われます。

この式が成り立つ理由は、実務講座①でくわしく説明しました。かいつまむと、別表四の留保は、その年に増えた利益積立金そのものなので、期首に足せば本来は期末になるはず。ただし、確定した法人税・住民税は別表五(一)で未納分として△で差し引かれているため、その分を式でも引いてそろえる――という仕組みです。あわせて、繰越損益金(25)=会計の繰越利益剰余金、納税充当金(26)=会計の未払法人税等になっているかも確認すると、より確実です。検算が通れば、別表四・別表五(一)・別表五(二)が一本の筋で整合している、という強い裏づけになります。

6. Ⅱ 資本金等の額の計算

下段の「Ⅱ 資本金等の額の計算」は、資本金や資本準備金など、純資産のうち元手にあたる部分を記載します。列の構成は上段と同じ(期首①・減②・増③・期末④)です。

中小企業の場合、ここは資本金と資本準備金の金額を、株主資本等変動計算書のとおりに書くだけで済むのがほとんどです。増資や減資、自己株式の取得などがあった年だけ、その増減を記載します。何も動きがなければ、期首①と期末④に同じ金額が並ぶだけです。

そもそも「資本金等の額」とは、株主が払い込んだ元手(出資)の税務上の金額です。利益積立金額が「稼いだ利益の蓄積」なら、資本金等の額は「出資された元手」。この2つを合わせたものが、税務上の純資産です。会計の純資産(資本金・資本剰余金・利益剰余金)と、おおむね対応しています。なお、この資本金等の額は、法人住民税の均等割の判定など、別の場面でも使われる重要な金額です。

7. 記入例:サンプル株式会社(設立第1期)

実務講座①の検算例で使った、サンプル株式会社の設立第1期(3月決算・資本金300万円)で、別表五(一)を完成させてみます(金額は説明用の概算)。前提は、設立初年度なので期首はすべてゼロ、当期純利益500万円、減価償却の償却超過額30万円(留保)、当期確定分の法人税・地方法人税・住民税125万円・事業税40万円を未払法人税等(納税充当金165万円)に計上、中間納付なし、です。

区分期首①減②増③期末④
減価償却超過額0—300,000300,000
繰越損益金(25)005,000,0005,000,000
納税充当金(26)0—1,650,0001,650,000
未納法人税等(27・29・30)0—△1,250,000△1,250,000
差引合計額(31)005,700,0005,700,000

各行を確認します。当期純利益500万円は繰越損益金(25)の増③へ。償却超過額30万円は留保項目として増③へ。当期積んだ納税充当金165万円は納税充当金(26)の増③(別表五(二)の繰入から転記)。当期確定分の法人税・住民税125万円は未納法人税等(27・29・30)の増③に△(別表五(二)の期末未納から転記)。結果、差引合計額(31)の期末④は570万円になりました。

検算します。期首「31①」0円 + 別表四の留保「52②」695万円(当期利益500万+納税充当金165万+償却超過30万)− 当期確定分の法人税・住民税125万円 = 570万円。別表五(一)の「31④」570万円と一致します。検算OKです。なお、資本金等の額(Ⅱ)は、資本金300万円を期首①・期末④に記載するだけです。

検算 ― 別表四・別表五(二)と整合しているか 期首「31①」+ 別表四の留保「52②」− 当期の法人税・住民税 = 期末「31④」 別表五(一) 期首 31① 0 別表四 留保の合計 52② 695万 当期確定分の 法人税・ 住民税 125万 別表五(一) 期末 31④ 570万 + − = 0 + 695万 − 125万 = 570万 = 別表五(一)「31④」(570万) → 検算OK 留保695万 = 当期利益500万 + 納税充当金165万 + 償却超過30万 Ⅱ 資本金等の額は、資本金300万円を期首①・期末④に記載するだけ (サンプル株式会社・設立第1期。単位:円/万円。税額は概算)

▲ サンプル株式会社(設立第1期)の検算を示した図。期首「31①」0に別表四の留保「52②」695万円(当期利益500万円+納税充当金165万円+償却超過30万円)を足し、当期確定分の法人税・住民税125万円を引くと570万円となり、上の記入例の表の差引合計額(31)の期末④570万円と一致する。

8. 仕上げのチェックポイント

  • 別表五(一)は別表四・別表五(二)とセットで、最後のほうに書く。別表四の留保が「増③・減②」に積み上がる。
  • 納税充当金(26)=会計の未払法人税等、繰越損益金(25)=会計の繰越利益剰余金。一致を確認する。
  • 未納法人税等(27・29・30)は△で記載。当期確定分は別表五(二)の期末未納から増③へ。
  • 検算「31①+別表四留保52②−当期の法人税・住民税=31④」が一致すればOK。合わなければ区分ミスか転記漏れ。

会計ソフトを使えば、別表四・別表五(一)・別表五(二)の連動と検算は自動で行われます。それでも、「別表五(一)は税務上の貸借対照表で、別表四の留保がここに積み上がる」という骨格と、検算の式を理解しておけば、数字が合わないときに原因を追え、決算書の純資産との整合も自分でチェックできます。

まとめ:別表五(一)を書くための要点

  • 別表五(一)は「税務上の貸借対照表」。Ⅰ利益積立金額+Ⅱ資本金等の額の2部構成。別表四の留保が積み上がる場所。
  • 列は期首①・減②・増③・期末④(④=①−②+③)。別表四の加算留保は増③、減算留保は減②へ。
  • 主な行:繰越損益金(25)=繰越利益剰余金、納税充当金(26)=未払法人税等(=別表五(二)41)、未納法人税等(27・29・30)は△で記載。
  • 検算「31①+別表四留保52②−当期の法人税・住民税=31④」で、別表四・別表五(二)との整合を必ず確かめる。
  • Ⅱ資本金等の額は、中小なら資本金・資本準備金を書くだけ。

別表四・別表一・別表五(二)・別表五(一)――ここまでで、法人税申告書の骨格を構成する主要な別表がそろいました。あとは、自社に関係する明細書(交際費の別表十五、減価償却の別表十六、欠損金の別表七(一)など)を必要に応じて加えていけば、申告書一式が完成します。

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※ 本記事は2026年10月時点の情報にもとづく一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談に応じるものではありません。記入例の金額は説明のための概算であり、税額・記載は法人の状況や様式により異なります。本記事の行番号は、令和8年4月1日以後終了事業年度分の様式(国税庁)によります。実際の申告にあたっては、最新の様式・記載要領を国税庁等で確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

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