別表四で所得を出し、別表一で税額を計算したら、いよいよ最後のステップ――申告書を提出し、税金を納めます。いまや法人税の申告は、紙ではなく電子申告(e-Tax・eLTAX)が主流です。この記事では、別表ができあがったあとに、どんな準備をして、どう送信し、どう納付するのかを、実際の手順に沿って解説します。
基礎講座⑬で申告と納付の「全体像」を扱いましたが、本記事はその「手を動かす版」です。実務講座①②で作った申告書(サンプル株式会社・所得585万円・法人税877,500円・地方法人税90,300円)を、実際に送って納めるところまで、具体的に見ていきましょう。
1. e-TaxとeLTAX ― 国税と地方税で、使うシステムが違う
電子申告には、2つのシステムを使い分けます。理由は単純で、法人税は「国税」、法人住民税・事業税は「地方税」と、納める相手が違うからです。

e-TaxとeLTAXの役割分担:国税(法人税・地方法人税・消費税)はe-Taxで税務署へ、地方税(法人住民税・法人事業税・特別法人事業税・法人市町村民税)はeLTAXで都道府県・市町村へ申告・納付する。法人は両方を使う。
▲ e-Tax・eLTAXの役割分担を示した図。国税(法人税・地方法人税・消費税)はe-Taxで税務署へ、地方税(法人住民税・法人事業税・特別法人事業税・法人市町村民税)はeLTAXで都道府県・市町村へ申告・納付することを表す。
e-Tax(国税電子申告・納税システム)は、税務署に出す国税用です。法人税・地方法人税のほか、消費税もここで申告します。実務講座②で計算した、あの法人税・地方法人税は、e-Taxで送信します。
eLTAX(エルタックス/地方税ポータルシステム)は、都道府県・市町村に出す地方税用です。法人住民税・法人事業税・特別法人事業税・法人市町村民税などを、ここで申告します。別表一には出てこなかった地方税は、こちらで申告する、という関係です。
法人は、原則としてこの両方を使います。会計ソフト(freeeなど)を使えば、国税と地方税の申告データを作り、e-TaxとeLTAXの両方へ続けて送信できます。なお、資本金1億円超の大法人は電子申告が義務ですが、中小法人は任意です。とはいえ、紙の郵送や窓口提出より圧倒的に速く、控えの管理も楽なので、これから始めるなら電子申告一択と考えてよいでしょう。
2. 事前準備 ― 利用者識別番号・利用者ID・電子証明書
電子申告には、初回だけ必要な準備があります。一度そろえれば、翌年以降はそのまま使えます。

電子申告の事前準備:e-Taxは利用者識別番号(16桁)と電子証明書、eLTAXは利用者ID(16桁)と電子証明書が必要。税理士に依頼する場合は納税者本人の電子証明書が不要。
▲ 電子申告の事前準備を示した図。e-Taxは利用者識別番号(16桁)と電子証明書、eLTAXは利用者ID(16桁)と電子証明書が必要で、税理士に依頼する場合は納税者本人の電子証明書が不要になることを示す。
e-Taxの準備は2つ。一つめは「利用者識別番号」(半角16桁)です。税務署に「電子申告等開始届出書」を出すと発行されます。届出はオンラインでもでき、その場合は番号がその場で発行されます。二つめは「電子証明書」です。これは紙の申告でいう社印の代わりで、データを本人が作り改ざんされていないことを示すもの。法人は、商業登記に基づく電子証明書(商業登記認証局)などを使います。
eLTAXの準備も2つ。一つめは「利用者ID」(16桁)。eLTAXの「PCdesk(WEB版)」から「利用届出(新規)」を1回行うと発行されます。このとき主な提出先となる自治体を1つ登録し、ほかの自治体や税目を増やすときは「利用届出(変更)」で追加します。一度の届出で、複数の自治体へまとめて送信できるのがeLTAXの便利なところです(ポータルセンターが各自治体へ振り分けてくれます)。二つめは、e-Taxと同じく電子証明書です。
ここで、開業準備中の方に朗報を一つ。税理士に申告書の作成・送信を依頼する場合、納税者本人の電子証明書は不要です(税理士の電子署名で送信できます)。自社で完結させたい場合のみ、法人の電子証明書を用意する、と整理しておきましょう。
3. 申告の流れ ― 別表の完成から送信まで
準備が整ったら、申告書を送信します。会計ソフトを使う場合、流れはおおむね次のとおりです。
まず、別表四・別表一などを完成させます(実務講座①②の内容です)。次に、ソフトにe-Taxの利用者識別番号と、eLTAXの利用者IDを登録します。法人の申告では、この両方が必要です。続いて「送信チェック(スキーマチェック)」を行います。これは、送るデータが、e-Tax・eLTAXの受け取り要件に合っているかの自動点検です。エラーが出たら、該当する別表を直して、再度チェックします。
エラーが消えたら、電子署名をして送信します。電子証明書がマイナンバーカードなら、署名用のパスワード(PINコード)を入力し、カードを読み取って署名します。送信が終わると、受信通知が返ってきます。最後に、この受信通知で「正常に受け付けられたか」を必ず確認してください。送ったつもりで届いていなかった、という事故を防ぐ、最後の砦です。
freeeなどの申告ソフトを使えば、国税(法人税・地方法人税・消費税)と地方税(都道府県民税・事業税・特別法人事業税・市町村民税)を、続けて電子申告できます。提出先の自治体がeLTAXに未登録なら、送信前に「届出状況の確認」から一括で追加申請することもできます。
また、申告書本体だけでなく、財務諸表(決算書)や勘定科目内訳明細書、消費税申告書の付表といった添付書類も、紙に印刷せず、電子データのまま添付して送れます。これまで分厚い紙の束を綴じて郵送していた作業がまるごと不要になるのは、電子申告の大きな利点です。控えもデータで残るため、過去の申告書を探すのも一瞬です。
4. 納付方法(その1)― 国税(法人税・地方法人税)
申告を送ったら、次は納付です。納付は申告とは別の手続きで、送信しただけでは納めたことになりません。国税(法人税・地方法人税)の主な納付方法を、整理します。

国税の納付方法の早見表:ダイレクト納付とインターネットバンキングは上限なし・手数料なし、クレジットカードは1,000万円未満・手数料あり、スマホアプリとコンビニQRは30万円以下、窓口は納付書。法人は30万円超が多くダイレクト納付かネットバンキングが基本。
▲ 国税の主な納付方法を比較した早見表の図。ダイレクト納付(手数料なし・30万円超も可・要事前届出)、インターネットバンキング(手数料なし)、クレジットカード(1,000万円未満・手数料あり・領収証書なし)、スマホアプリ(30万円以下・手数料なし・領収証書なし)、コンビニQR(30万円以下・手数料なし)、窓口(納付書)を、上限・手数料・領収証書の有無で比較する。
- ダイレクト納付:事前に届け出た口座から、即時または期日指定で引き落とす方法。手数料はかからず、30万円を超える高額でも使えます。利用には「ダイレクト納付利用届出書」の提出が必要で、e-Taxから出せば1週間ほどで使えるようになります。
- インターネットバンキング(ペイジー):ネットバンキングから納付。手数料はかかりません。
- クレジットカード納付:1,000万円未満まで。ただし決済手数料(おおむね納付額の約0.99%、1万円ごとに約99円)がかかり、領収証書は発行されません。
- スマホアプリ納付:PayPay・d払いなどのPay払いで納付。手数料は無料ですが、1回30万円以下で、領収証書は出ません。
- コンビニ納付(QRコード):30万円以下。手数料は不要です。
- 窓口(納付書):金融機関や税務署の窓口で、納付書を使って現金納付。
注意したいのが、法人税は金額が大きくなりがちで、30万円を超えると、スマホアプリやコンビニは使えなくなる点です。実務上は、手数料がかからず高額にも対応できるダイレクト納付か、インターネットバンキングが、法人の現金納付の中心になります。
さらに、もう一つ大切な変更点。国税庁は、キャッシュレス納付をした法人などに対して、納付書の事前送付を取りやめています。「申告したのに納付書が届かない」と慌てないよう、納付方法は自社であらかじめ決めておきましょう。納付書がどうしても必要な場合は、税務署に問い合わせます。
なお、税理士に申告を依頼している場合は、令和6年4月から始まった「自動ダイレクト」も便利です。これは、税理士が申告データを代理送信するときに納付の意思表示をしておくと、法定納期限の当日に、届け出た口座から自動で引き落とされる仕組みです。納付のし忘れという、いちばん避けたいミスを防げます。納付を別作業として覚えておく必要がなくなるので、件数が増えても安心です。
5. 納付方法(その2)― 地方税(住民税・事業税)
地方税(法人住民税・法人事業税・特別法人事業税・市町村民税)は、eLTAXの地方税共通納税システムで納めます。これは、全国どの都道府県・市町村に対しても、自宅やオフィスのパソコンから一括で電子納税できる仕組みです(令和元年10月から利用可能)。eLTAXで申告したデータを選べば、その内容に応じた税額をそのまま納付できます。
加えて、2023年4月からは、納付書に印字された「地方税統一QRコード(eL-QR)」や「eL番号」を使い、「地方税お支払サイト」からパソコン・スマートフォンで納付することもできるようになりました。複数の自治体に納める会社ほど、この一括の仕組みの恩恵が大きくなります。
6. 期限と中間申告
申告と納付の期限は、事業年度終了日の翌日から2か月以内です。3月決算の会社なら、5月31日まで。これは申告も納付も同じ期限です。
前期の法人税額が20万円を超えた会社は、事業年度の途中(開始から6か月後)に「中間申告」をして、税額の一部を前払いします。サンプル株式会社のように、前期の法人税が約88万円だった会社は、翌期にこの中間申告の対象になります(前期実績の半分を納める「予定申告」が一般的です)。
なお、会計監査などの事情がある法人は、申請により確定申告の期限を1か月延長できる特例があります。ただし、延長されるのは申告期限であって、納付が2か月を超えると利子税がかかるため、見込みの税額を期限内に納めておくのが通例です。中小企業ではあまり使いませんが、知識として押さえておきましょう。
7. サンプル株式会社の申告・納付
実務講座②までで、サンプル株式会社(3月決算)の国税は、法人税877,500円・地方法人税90,300円の合計967,800円と出ました。これを、実際に申告・納付する流れに当てはめます。
まず、3月31日の決算後、別表四・別表一などを完成させ、5月31日までにe-Taxで国税(法人税・地方法人税)を、eLTAXで地方税(法人住民税・法人事業税など)を電子申告します。次に納付です。国税967,800円は30万円を超えているので、スマホアプリやコンビニは使えません。ダイレクト納付かインターネットバンキングで、5月31日までに納めます。地方税は、eLTAXの共通納税システムから、申告データに連動して納付します。
こうして、3月決算なら「5月末までに、国税はe-Tax+ダイレクト納付、地方税はeLTAX+共通納税」という一連の流れで、申告から納付までが完了します。前期の法人税が20万円を超えていれば、11月ごろに中間申告・納付が入る――この年間の段取りを、最初に押さえておくと、慌てずに済みます。
8. つまずきやすいポイント
- 申告と納付は別。電子申告を送信しても、納付は別途行う必要があります。受信通知の確認と、納付の実行を、セットで習慣にしましょう。
- 国税はe-Tax、地方税はeLTAX。法人は両方を使う。利用者識別番号(e-Tax)と利用者ID(eLTAX)は別物なので、混同しない。
- 納付書は届かない前提で。キャッシュレス納付者には事前送付されません。納付方法を先に決めておく。
- 30万円の壁。スマホアプリ・コンビニは30万円以下まで。法人税は超えることが多いので、ダイレクト納付やインターネットバンキングを基本に。
会計ソフトを使えば、別表の作成から送信、納付の登録まで、ほぼ一気通貫で進みます。それでも、「どのシステムで・いつまでに・どの方法で納めるのか」という骨格を理解しておけば、トラブルやエラーが出ても落ち着いて対処でき、顧問先や金融機関にも自信を持って説明できます。
まとめ:e-Tax・eLTAXでの申告と納付の要点
- 国税はe-Tax、地方税はeLTAX。法人税・地方法人税はe-Tax、法人住民税・事業税などはeLTAXで申告・納付する。
- 事前準備は、e-Tax=利用者識別番号+電子証明書、eLTAX=利用者ID+電子証明書。税理士に依頼すれば本人の電子証明書は不要。
- 申告は、別表完成 → 送信チェック → 電子署名 → 送信 → 受信通知で確認。会計ソフトなら国税・地方税を続けて送れる。
- 国税の納付は、ダイレクト納付・インターネットバンキングが法人の基本(30万円超でも手数料なし)。スマホアプリ・コンビニは30万円以下まで。納付書は事前送付されない前提で。
- 期限は事業年度終了翌日から2か月以内(3月決算は5/31)。前期法人税20万円超なら中間申告あり。
別表四・別表一で税額を出し、e-Tax・eLTAXで申告・納付する――ここまでで、法人税の申告は「作る」から「出して納める」まで一通りつながりました。次は、税金の納付状況を整理して別表四・別表五(一)につなぐ別表五(二)へ進むと、申告書全体の流れがさらにくっきりします。
- 前回:【法人税の実務講座②】別表一の書き方・記入例をわかりやすく解説
- 次回:【法人税の実務講座④】別表五(二)(租税公課の納付状況)の書き方をわかりやすく解説
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。電子申告・納付の手続や利用可能な納付方法、上限・手数料は変更されることがあります。実際の手続にあたっては、国税庁(e-Tax)・地方税共同機構(eLTAX)の最新の案内を確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。