ここまでの第3回〜第6回で、申告調整(加算・減算)、益金・損金、減価償却、役員給与・交際費を学んできました。これらはすべて、「会計の利益を、税金の課税所得に直す」ための知識でした。
第7回の今回は、いよいよその集大成。学んできた申告調整を、実際に書き込む申告書――「別表四」を取り上げます。別表四は、法人税申告書の中で、最も重要といわれる書類です。少し本格的になりますが、ここまで読んできたあなたなら、必ず理解できます。一緒に見ていきましょう。
1. 別表四とは ― 「利益→所得」の変換表
別表四の正式名称は「所得の金額の計算に関する明細書」といいます。名前のとおり、課税所得を計算するための書類です。
これまで何度も出てきた、あの式を思い出してください。
課税所得 = 当期利益 + 加算 - 減算
別表四は、まさにこの計算を、紙の上で行う書類です。いちばん上に会計の「当期利益」を書き、そこに加算項目を足し、減算項目を引いて、いちばん下で「課税所得」を出す。会計の利益を、税金の所得へと変換する一覧表――それが別表四です。
なぜこの書類が最重要なのでしょうか。それは、ここで計算した課税所得に税率をかけて、法人税額が決まるからです。別表四を間違えると、税額そのものを間違えてしまう。だから、申告書の心臓部なのです。
ここで、ふと「会社の利益に、直接税率をかければいいのでは?」という疑問がわくかもしれません。しかし、これまで学んできたとおり、会計の利益と税金の所得は少しズレます。だから、利益にそのまま税率をかけると、正しい税額になりません。かといって、所得をゼロから計算し直すのは大変です。そこで、「利益を出発点にして、ズレだけを調整する」という、効率的で正確な方法をとります。その調整作業を一覧にした書類が、別表四なのです。第2回でお話しした「利益を出発点にする」という考え方が、ここで具体的な書類の形になっている、というわけです。
2. 別表四の構造 ― 上から下への流れ
別表四は、上から下へ、次のような流れで構成されています。
① 当期利益(または当期欠損の額) ← 出発点(損益計算書の最終利益)
②+ 加算項目 ← 損金不算入・益金算入を足す
③- 減算項目 ← 益金不算入・損金算入を引く
④= 所得金額 ← 課税所得(ゴール)
- いちばん上:会計の当期利益。損益計算書の最終行(当期純利益)を、そのまま書き写します。
- 加算欄:第3回で学んだ「加算項目」(損金不算入・益金算入)を並べて足します。たとえば、損金にならない法人税・住民税、減価償却の超過額、交際費の損金不算入額など。
- 減算欄:「減算項目」(益金不算入・損金算入)を並べて引きます。たとえば、受取配当の益金不算入、繰越欠損金の控除など。
- いちばん下:足し引きの結果が、課税所得(所得金額)。
これまで学んだ申告調整は、すべてこの別表四の加算欄・減算欄に書き込まれます。第3回〜第6回の知識が、ここで一つの書類に集約されるわけです。

別表四の構造図。当期利益500万円から始まり、加算(法人税・住民税80万=留保、減価償却の超過額10万=留保)、減算(受取配当の益金不算入5万=社外流出)を経て、所得金額585万円になる流れ。総額・留保・社外流出の3列で区分する。
加算欄・減算欄に、実際に並ぶ項目
もう少し具体的に、中小企業の別表四で、実際によく登場する項目を見てみましょう。
加算欄によく並ぶもの – 損金経理をした法人税・地方法人税(会計で費用にした法人税。損金にならないので足し戻す) – 損金経理をした道府県民税・市町村民税(同じく住民税) – 損金経理をした納税充当金(未払法人税等として計上した分) – 減価償却の償却超過額(第5回。別表十六で計算した超過分) – 交際費等の損金不算入額(第6回。別表十五で計算した分)
減算欄によく並ぶもの – 受取配当等の益金不算入額(第4回。二重課税の排除) – 繰越欠損金の当期控除額(第12回で扱う、過去の赤字の繰り越し)
ここで大切な点があります。これらの金額の多くは、別表四で初めて計算するのではなく、別の別表で計算した結果を転記するということです。たとえば、減価償却の超過額は別表十六から、交際費の損金不算入額は別表十五から、それぞれ持ってきます。だから実務では、別表四は最後のほうに作るのが基本です。先に各項目の別表を仕上げ、その数字を別表四に集めてくる、というイメージです。
3. 3つの列の意味 ― 総額・留保・社外流出
別表四を初めて見ると、戸惑うのが、右側に並ぶ3つの列です。それぞれの項目について、金額を「総額」「留保」「社外流出」の3つに分けて書きます。
- 総額(①):その項目の金額の全体。
- 留保(②):会計と税金のズレのうち、将来また解消されるもの。
- 社外流出(③):会計と税金のズレのうち、もう二度と解消されないもの。
この「留保」と「社外流出」は、第3回・第4回でも触れた、あの区分です。覚えていますか。
- 留保の例:減価償却の超過額。今年は損金にならなくても、将来の年度で認められる(いつか戻る)。
- 社外流出の例:交際費の損金不算入額、役員給与の損金不算入額。永久に損金にならない(戻らない)。
具体的に見てみましょう。たとえば、減価償却の超過額が10万円あったとします。これは加算項目なので、別表四では「総額」の列に10万円と書き、同時に「留保」の列にも10万円と書きます。将来戻るズレだからです。一方、交際費の損金不算入額が20万円あったとすると、「総額」に20万円と書き、今度は「社外流出」の列に20万円と書きます。戻らないズレだからです。このように、同じ加算項目でも、その性質によって、留保の列に入るか、社外流出の列に入るかが変わります。
なぜ、わざわざ分けるのでしょうか。それは、留保の項目が、次回学ぶ「別表五(一)」という別の書類につながっていくからです。留保は「会社の中に残っているズレ」なので、翌期へ繰り越して管理する必要があります。一方、社外流出は「会社の外に出ていったお金」なので、繰り越す必要がありません。この区分が、別表四と別表五(一)をつなぐカギになります(詳しくは第8回で)。
ここを間違えると、別表四と別表五(一)の数字が合わなくなります。別表四を書くうえで、最も注意すべきポイントです。
よくある間違い
別表四でつまずきやすい点を、先に知っておきましょう。
一つめは、出発点の転記ミスです。別表四のいちばん上には、損益計算書の当期純利益を、そのまま正確に書き写します。ここで一円でも違うと、課税所得も税額もずれてしまいます。
二つめは、留保と社外流出の区分ミスです。先ほど触れたとおり、ここを間違えると別表五(一)と合わなくなります。「このズレは将来戻るか(留保)、戻らないか(社外流出)」を、一項目ずつ確認することが大切です。
三つめは、埋めなくてよい欄まで埋めようとすることです。別表四には空欄がたくさんありますが、自分の会社に関係のある項目だけ書けばよく、全部埋める必要はありません。中小企業なら、ほとんどの欄は空欄のままです。「関係する項目だけ書く」と割り切ると、ぐっと楽になります。
4. 中小企業は「簡易様式」でよい
「別表四は難しそう」と身構えるかもしれませんが、安心してください。別表四には、通常様式と簡易様式の2種類があり、一般的な中小企業は、簡易様式で十分です。
簡易様式は、海外取引などの特殊な項目を省いた、短縮版です。国税庁も「特殊な事項のない法人は簡易様式を使ってよい」と案内しています。
しかも、中小企業の場合、実際に書き込む項目は、ほんの数個で済むことがほとんどです。加算項目は「損金にならない法人税・住民税」「交際費の損金不算入額」くらい、減算項目は「繰越欠損金」くらい、というケースが大半です。100種類以上ある別表の中で「最重要」と呼ばれる割に、中身はシンプルなのです。
「最重要なのに、シンプル」というのは、一見矛盾しているようですが、こういうことです。別表四は、税額を左右するという意味で最も重要ですが、書き込む項目自体は限られている。だからこそ、一つひとつの項目の意味と、留保・社外流出の区分さえ理解すれば、中小企業の別表四は、決して手の届かないものではありません。ここまで第3回〜第6回を読んできたあなたは、その意味をすでに理解しています。あとは、それを所定の欄に書き込むだけ、というわけです。
5. ちょっと難しい話 ― 「ニワトリと卵」の処理
ここで、第2回でも触れた、ややこしい問題に触れておきます。実務で別表四を作るときに出てくる話です。読み飛ばしても、全体の理解には支障ありません。
別表四の出発点は「当期利益」ですが、その当期利益は、法人税などを引いた後の金額です。ところが、その法人税は、別表四で計算する課税所得が決まらないと、確定しません。「利益を出すには税額が必要、税額を出すには利益が必要」という、ニワトリと卵のような関係です。
実務では、これを「納税充当金」という仕組みで処理します。簡単にいうと、いったん法人税などを別表四で足し戻して、税金を引く前の状態で課税所得を計算する、という工夫です。会計ソフトを使えば自動で処理されるので、今は「そういう調整の仕組みがある」と知っておけば十分です。手計算の場合は、数字が落ち着くまで2〜3回計算を繰り返すこともあります。
6. ケーススタディ:サンプル株式会社の別表四
これまでの集大成として、サンプル株式会社の別表四を、イメージで組み立ててみましょう。
サンプル株式会社(おさらい) – Web制作業/資本金300万円(中小企業)/3月決算
第3回で計算したとおり、この会社の数字はこうでした。
別表四(イメージ)
① 当期利益 500万円
② 加算
損金にならない法人税・住民税 80万円(留保)
減価償却の超過額 10万円(留保)
③ 減算
受取配当の益金不算入 5万円(社外流出)
④ 所得金額 585万円
当期利益500万円から出発し、加算90万円、減算5万円を経て、課税所得585万円にたどり着きました。第3回でいきなり出てきた「585万円」という数字が、実は別表四の上で、こうして計算されていたわけです。
ここで注目してほしいのが、3つの列です。減価償却の超過額(10万円)と法人税・住民税(80万円)は「留保」――会社の純資産に残るので、次回の別表五(一)につながります(法人税・住民税は、未払分が納税充当金として引き継がれます)。一方、受取配当(5万円)は「社外流出」――戻らないので、別表五(一)には行きません。この振り分けが、第8回への橋渡しになります。
この別表四を眺めると、これまで6回かけて学んできたことが、すべて一枚の書類に集まっていることが分かります。当期利益は第2回(決算書)、加算・減算は第3回(申告調整)、損金にならない法人税や受取配当は第4回(益金・損金)、減価償却の超過額は第5回(減価償却)――そして、もしここに役員給与や交際費の損金不算入があれば、それは第6回の内容です。別表四は、いわばこれまでの学習の「答え合わせの場」。一つひとつの知識が、ここで一つの形に結びつくのです。
なお、具体的な「どの欄に、どう書き込むか」という記入例は、内容が細かくなるため、別の記事で詳しく解説します(この記事末尾の「あわせて読みたい」を参照してください)。この回では、まず「別表四とは何をする書類か」「どんな構造か」を、しっかりつかんでいただければ十分です。
まとめ:第7回のポイント
- 別表四は「所得の金額の計算に関する明細書」。会計の利益を、課税所得に変換する書類。
- 構造は、当期利益 + 加算 - 減算 = 所得金額。これまでの申告調整が、ここに集約される。
- 右側の3つの列=総額・留保・社外流出。留保は将来戻る、社外流出は戻らない。
- 留保は次回の別表五(一)につながる。社外流出は連動しない。ここの区分が最重要。
- 中小企業は簡易様式でよく、書き込む項目は数個で済むことが多い。
別表四の全体像が見えました。これで、申告書の心臓部の構造が理解できたはずです。次回(第8回)は、別表四と対になる「別表五(一)」を扱います。別表四の「留保」が、別表五(一)でどう管理され、翌期へ引き継がれるのか。2つの書類の連動こそ、法人税申告のいちばんの核心です。
- 前回:【法人税の基礎講座⑥】役員給与・交際費の損金不算入をわかりやすく解説
- 次回:【法人税の基礎講座⑧】別表五(一)とは?別表四との連動をわかりやすく
あわせて読みたい
別表四についてさらに詳しく知りたい方は、こちらもどうぞ。
- 【法人税の実務講座①】別表四の書き方・記入例をわかりやすく解説
- 【法人税の理論講座④】留保と社外流出の違いをわかりやすく解説
※本記事は、一般的な情報を分かりやすくまとめたものです。会計・税務の具体的な取り扱いは状況により異なります。正確な情報は国税庁のサイト等でご確認いただくか、専門家へご相談ください。