【法人税の実務講座②】別表一の書き方・記入例をわかりやすく解説

別表一は、法人税申告書の「本体」です。実務講座①で見た別表四が「所得金額」を出す書類だとすれば、別表一は、その所得金額に税率をかけて「法人税額」を確定させる書類――いわば申告書の表紙であり、税額計算の最終地点です。この記事では、別表一(と別表一次葉)を使って、所得金額から、今回納付すべき税額までを出す流れを、記入例つきで解説します。

実務講座①(別表四)を読んでいる前提で進めます。別表四で所得金額が出せていれば、別表一はその数字を受けて税率をかけるだけ――と言いたいところですが、中小法人の軽減税率や、地方法人税、税額控除など、押さえるべき型がいくつかあります。一つずつ見ていきましょう。

目次

1. 別表一とは ― 法人税と地方法人税を計算する「申告書の本体」

別表一は、正式名称を「各事業年度の所得に係る申告書」といいます。ポイントは3つです。

第一に、別表一は法人税と地方法人税の2つ(どちらも国税)をまとめて計算します。1枚の用紙の上半分が法人税、下半分が地方法人税の計算欄です。法人税の申告書を出せば、地方法人税の申告も同時に済む構造になっています。なお、法人住民税と法人事業税(地方税)は、別表一には出てきません。これらは地方自治体に出す別の申告書(第6号様式など)で、別に計算します。「別表一=国税(法人税+地方法人税)」と覚えてください。

第二に、別表一は「別表一次葉」とセットです。別表一だけでは税額計算の枠が足りないため、税率をかける細かい計算は次葉で行い、その結果を別表一へ転記します。2枚で1つの書類、と考えてください。

第三に、別表一はいちばん最後に作ります。別表二・十五・十六・五(二)・五(一)・四・七(一)などを先に仕上げ、別表四で所得金額を確定させてから、最後に別表一で税額を計算する――この順番です。実務講座①で「別表四は最後のほうに作る」と書きましたが、その別表四よりもさらに後、申告書づくりの締めくくりが別表一です。

2. 全体の流れ ― 所得金額から「差引確定法人税額」まで

別表一の計算は、次の流れで進みます。まず大きな地図を頭に入れましょう。

別表一の計算フロー:別表四の所得金額を別表一へ転記し、別表一次葉で税率をかけて法人税額を計算、税額控除・中間納付を引いて差引確定法人税額を出し、さらに法人税額×10.3%で地方法人税額を出す流れ。

▲ 別表一の計算の流れを示した図。別表四の所得金額を別表一へ転記し、別表一次葉で税率をかけて法人税額を計算し、税額控除・中間納付を差し引いて差引確定法人税額を出す。続いて法人税額をもとに地方法人税額(10.3%)を計算し、同様に差引確定地方法人税額を出す流れを表す。

  • ステップ1:別表四の所得金額を、別表一の先頭「所得金額又は欠損金額」へ転記する(千円未満切捨て)。
  • ステップ2:別表一次葉で、所得金額に税率をかけ、法人税額を計算する(中小は800万円で2段階)。結果を別表一の「法人税額」へ戻す。
  • ステップ3:税額控除(賃上げ促進税制などの特別控除、源泉された所得税額の控除)があれば差し引く。
  • ステップ4:中間申告で納めた分を差し引き、「差引確定法人税額」を出す。これが、今回の確定申告で納める法人税です。
  • ステップ5:法人税額をもとに地方法人税(10.3%)を計算し、同じように中間分を引いて「差引確定地方法人税額」を出す。

この5ステップを、順に見ていきます。

3. ステップ1:所得金額を別表一へ(別表四から転記)

別表一の出発点は、いちばん上の「所得金額又は欠損金額」の欄です。ここには、別表四でいちばん最後に出した所得金額(総額①)を、そのまま転記します。実務講座①で苦労して出した、あの所得金額です。

一つだけ注意点があります。所得金額は、千円未満を切り捨てて記入します。たとえば別表四の所得が8,914,128円なら、8,914,000円として別表一に書きます。この「千円未満切捨て」は、税額計算の出発点で必ず行う処理です。

赤字(欠損)の場合は、この欄がマイナス(または0)になり、法人税額も生じません。ただし、赤字でも法人住民税の均等割(資本金1,000万円以下・従業員50人以下なら年7万円程度)はかかるので、申告自体は必要です。

4. ステップ2:法人税額を計算する(中小法人の軽減税率)

所得金額が決まったら、いよいよ税率をかけます。ここが別表一の心臓部です。法人税の税率は、法人の区分と所得の大きさで変わります。

中小法人(資本金1億円以下で、大法人の完全支配下などにない普通法人)の場合、所得のうち年800万円以下の部分は15%、800万円を超える部分は23.2%という、2段階の税率になります。年800万円以下に低い税率がかかるこの軽減措置は、租税特別措置法による時限措置で、現在は令和9年(2027年)3月31日までに開始する事業年度まで延長されています。

中小法人の軽減税率:所得を800万円で区切り、800万円以下は15%、超える部分は23.2%。所得585万円は全額15%で877,500円、所得1,000万円は800万×15%+200万×23.2%で166.4万円。

▲ 中小法人の軽減税率の2段階計算を示した図。所得金額を800万円で区切り、800万円以下の部分には15%、800万円を超える部分には23.2%をかけて、それぞれの法人税額を足し合わせる仕組みを、所得585万円(全額15%)と所得1,000万円(800万円×15%+200万円×23.2%)の2つの例で示す。

この2段階の計算は、別表一次葉で行います。次葉には、「800万円以下」「800万円超」を分けて計算する欄があり、それぞれに税率をかけて法人税額を出し、合計したものを別表一の「法人税額」の欄へ転記します。たとえば所得が891万4千円なら、800万円×15%=120万円、(891万4千円−800万円)×23.2%=約21万2千円、合計約141万2千円が法人税額になります。所得が800万円以下なら、全額に15%をかけるだけ――次葉でも1段階で済みます。

いくつか、税率の例外も押さえておきましょう。令和7年度改正で、所得が年10億円を超える事業年度は、800万円以下の部分の税率も15%から17%に引き上げられました(2025年4月1日以後開始事業年度から)。また、グループ通算制度を適用している法人は、この軽減税率の対象外(19%)です。前3事業年度の所得の平均が15億円を超える法人(適用除外事業者)も、800万円以下の部分は19%になります。とはいえ、これらは所得が極めて大きい法人やグループ法人の話で、一般的な中小企業には関係しません。多くの中小企業は、800万円以下15%・超23.2%で計算すれば足ります。

なお、資本金が1億円を超える法人は、そもそも中小法人ではないため、軽減税率は使えず、全額が23.2%になります。期中の増資で期末資本金が1億円を超えた年は、その期から軽減税率が使えなくなる点にも注意してください。

5. ステップ3:税額控除 ― 法人税額から直接引ける

法人税額が出たら、次は税額控除です。税額控除は、所得から引く「所得控除」ではなく、計算した法人税額から直接差し引けるため、節税効果が大きいのが特徴です。中小企業に関係するものとしては、次の2つが代表的です。

一つめは、租税特別措置法上の特別控除です。賃上げを行った場合の「賃上げ促進税制」や、一定の機械・設備を取得した場合の控除などがあり、別表一の「法人税額の特別控除額」の欄に記入して差し引きます。とくに賃上げ促進税制は、中小企業向けに大きな控除枠が用意されているので、該当しそうなら必ず検討してください。

二つめは、所得税額控除です。預金の利息や配当を受け取るとき、あらかじめ所得税が源泉徴収されています。この源泉された所得税は、法人税の前払いの性質を持つため、別表六(一)で集計して、法人税額から差し引くことができます(別表四では加算・社外流出として扱った、あの所得税額です)。

これらの控除がなければ、この欄は空欄のまま、ステップ2で出した法人税額がそのまま次へ進みます。中小企業の多くは、賃上げ促進税制を使う年以外は、税額控除なしで進むことも珍しくありません。

6. ステップ4:差引確定法人税額(中間納付を差し引く)

税額控除を引いたあとの金額が、その事業年度の法人税額(年税額)です。この金額は、100円未満を切り捨てます。

ここから、中間申告で前もって納めた法人税(中間納付額)を差し引きます。前年度の法人税額が一定以上だった会社は、期の途中で中間申告・納付をしているので、その分を差し引くわけです。差し引いた残りが「差引確定法人税額」――これが、今回の確定申告で実際に納める法人税です。

中間納付が年税額を上回った場合(赤字に転落した年など)は、差引確定法人税額がマイナスになり、その分は還付されます。設立1年目は中間申告がないため、年税額がそのまま差引確定法人税額になります。

7. ステップ5:地方法人税(と、2026年からの防衛特別法人税)

法人税額が固まったら、別表一の下半分で地方法人税を計算します。地方法人税は、名前に「地方」とつきますが、国に納める国税です。

計算はシンプルで、課税標準法人税額(=法人税額。千円未満切捨て)に10.3%をかけるだけです。これも別表一次葉に計算欄があり、結果を別表一へ転記します。あとは法人税と同じく、中間申告分を差し引いて「差引確定地方法人税額」を出します。これが、今回納める地方法人税です。

もう一つ、2026年から始まる新しい国税にも触れておきます。防衛特別法人税です。2026年(令和8年)4月1日以後に開始する事業年度から、基準法人税額に4%を課すものですが、年500万円の基礎控除があります。つまり、法人税額が500万円以下の会社は負担がありません。法人税額500万円は、15%換算で所得約3,300万円に相当するため、大半の中小企業は実質的に影響を受けません。3月決算の会社なら、2026年4月開始の事業年度(2027年3月期)から関係し得る、と覚えておけば十分です。

ここまでで、別表一が完成します。「差引確定法人税額」と「差引確定地方法人税額」――この2つが、今回の申告で納める国税の金額です。

8. 記入例:サンプル株式会社の別表一

では、実務講座①でおなじみのサンプル株式会社(Web制作業・資本金300万円・3月決算・中小法人)で、別表一の記入例を見てみましょう。実務講座①の記入例で、別表四の所得金額は585万円になっていました。これを受けて計算します(税額控除なし、中間納付なし、設立後の通常の事業年度とします)。

サンプル株式会社の別表一:所得585万円×15%=法人税877,500円、税額控除・中間なしで差引確定法人税額877,500円、課税標準877,000円×10.3%=地方法人税90,300円、防衛特別法人税0円、納める国税合計967,800円。

▲ サンプル株式会社の別表一の記入例を示した図。所得金額585万円に15%をかけて法人税額877,500円を出し、税額控除・中間納付がないため差引確定法人税額も877,500円。続いて課税標準法人税額877,000円に10.3%をかけて地方法人税額90,300円を出す流れを、数値の階段で示す。

  • 所得金額:5,850,000円(別表四から転記。千円未満切捨て済み)。
  • 法人税額:585万円は800万円以下なので、全額に15%。5,850,000円 × 15% = 877,500円
  • 税額控除:なし。
  • 差引確定法人税額:877,500円(100円未満の端数なし)。これが納める法人税です。
  • 課税標準法人税額:877,500円の千円未満を切り捨てて、877,000円。
  • 地方法人税額:877,000円 × 10.3% = 90,331円 → 100円未満を切り捨てて 90,300円
  • 差引確定地方法人税額:90,300円。これが納める地方法人税です。
  • 防衛特別法人税:法人税額877,500円は500万円以下なので、ゼロ

結果、サンプル株式会社が今回納める国税は、法人税877,500円+地方法人税90,300円=967,800円です。基礎講座⑨で「585万円×15%でおよそ88万円」と計算したのと、ぴたり一致します。なお、これに加えて、地方税である法人住民税・法人事業税が別途かかります(別の申告書で計算)。会社が実際に負担する税金の全体像は、これら地方税まで含めて把握しましょう。

9. 仕上げのチェックポイント

別表一を仕上げるときに、間違えやすいポイントを整理しておきます。

  • 端数処理を間違えない。所得金額と課税標準法人税額は「千円未満切捨て」、差引確定法人税額・差引確定地方法人税額は「100円未満切捨て」。切り捨てる桁が違うので注意します。
  • 所得金額は別表四から正しく転記する。別表一は税額を計算するだけの書類で、所得は別表四で確定済み。ここを打ち間違えると、税額がまるごとずれます。
  • 法人税額は別表一次葉で計算してから転記する。いきなり別表一に書こうとせず、次葉で800万円の区切りを意識して計算します。
  • 住民税・事業税は別表一に含めない。別表一は国税(法人税+地方法人税)だけ。地方税は第6号様式などで別途計算する、と切り分けます。

会計ソフトを使えば、別表四から別表一・次葉への転記と税率計算は自動で行われます。それでも、「所得 → 法人税額(15%/23.2%)→ 地方法人税(10.3%)→ 差引確定税額」という流れと、端数処理のルールを理解しておけば、出てきた数字が正しいかを自分でチェックでき、税務調査や融資の場面でも、根拠を持って説明できます。

まとめ:別表一を書くための要点

  • 別表一は申告書の本体。別表四の所得金額に税率をかけて、法人税と地方法人税(どちらも国税)を計算する。住民税・事業税は別表一には含めない。
  • 別表一次葉とセット。税率計算は次葉で行い、別表一へ転記する。別表一は申告書の最後に作る。
  • 中小法人の税率は年800万円以下15%・超23.2%。所得を800万円で区切って計算する(次葉で2段階)。
  • 地方法人税=法人税額(課税標準)×10.3%。2026年4月以後開始事業年度からの防衛特別法人税は、年500万円の基礎控除があり、中小は基本ゼロ。
  • 端数処理は、所得・課税標準は千円未満切捨て、確定税額は100円未満切捨て。出てくる答えは「差引確定法人税額」と「差引確定地方法人税額」。

別表四で所得を出し、別表一で税額を出す――ここまでで、法人税申告の幹はつながりました。次は、税金の納付状況を整理する別表五(二)や、実際にe-Tax・eLTAXで申告・納付する手順へ進むと、申告から納付までが一本につながります。

  • 前回:【法人税の実務講座①】別表四の書き方・記入例をわかりやすく解説
  • 次回:【法人税の実務講座③】e-Tax・eLTAXでの法人税の申告と納付のやり方をわかりやすく解説

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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。税額は法人の区分・所在地・各種控除・適用される特例などにより異なります。実際の申告にあたっては、最新の様式・記載要領を国税庁等で確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

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